最終話 迷い道からの、目的地
がたんごとーんがたんごとーん
がたがたごとごとーん
――― まもなく下明日市、下明日市です。毛奴川温泉方面へは乗り換えを・・・・・・ ―――
ついさっきまで、東京のビルや高速道路、大きなタワーや川にかかる鉄橋が見えていたのに、あっという間にあたしの地元に着いた。
田んぼや畑、杉並木にちょっとした街並み。
東京の中心からずっと続いて、この明日市市の大通りとなっている「日光東照街道」。
駅のホームにはSLが煙を上げて停まっている。
あたしの故郷、栃木県明日市市だ。
「空気が違う。・・・・・・やっぱり、こっちは東京より寒い分、空気が透き通ってる」
あたしの周りを、地元の空気が包み込む。
おかえりと言っているのか、小さな羽虫があたしの頭上でパタパタ飛んでいる。
あたしの実家は、下明日市駅から歩いて約十分。日光東照街道の方へは出ずに、神社のある裏通りの方を歩くと早い。
荷物を持って歩いていくと、みつやま屋のシャッターに「長らくのご厚情ありがとうございました」という貼り紙があり、それが風でぺらぺらと揺れている。
よく見ると、その近くにあった手芸店や居酒屋、駄菓子屋なども、みなシャッターで閉ざされている。やっていけなくなっちゃったんだろう。
手芸店は小学生の頃、家庭科で使う裁縫用の針や糸をよく買いに行った店。
駄菓子屋は小さい頃に小銭を握りしめて「くださーい」と言って買いに行った思い出の店。
すごく、懐かしい。
それらの店も、今はもう無い。時の流れは正直であり、忖度はしてくれないんだよね。
東京でずっと暮らしてたから、地元の細かな変化を知らなかった。帰ったのは年に一回あるかないかだったし。ってか、いつの間にか商業施設の上に観覧車までできてる。いつできたのよ。
あたしが兄貴の結婚式で実家に帰った時は、気付かなかったし話題にも出なかったんだけどな。
「・・・・・・おみやげ、果たしてこれで良かったのかどうか・・・・・・」
別に初めてお邪魔する家にいくわけじゃなく、実家に帰るだけなんだから、おみやげは何でもいいと思ってた。でも、今になって、「東京もんじゃ佃煮せんべいスナック」なんてものを選んだ自分に、バカだねと言いたい。
銀座街にでも行って、フルーツゼリーか和菓子でも買ってくれば良かったかな。
今、あたしの横に建っている道の駅で、果物でも買ってった方が喜ぶんじゃないかな。
そんなことを思って歩いてるうちに、実家の前まで来ちゃったよ。
相変わらず、家の前の松の木がでかい。毛虫が落ちてくるから嫌なんだけど、ま、仕方ないか。
さて、玄関を開けるか。
・・・・・・ガラガラララー
「・・・・・・ただいまー。・・・・・・水紀だよ。帰ってきたよーっ」
あたしはもう、迷わない。だって目的地は、ちゃんと見えているのだから。・・・・・・じゃ!
迷い道と目的地 ~藤咲水紀の日常~
完




