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03話 魂の継承

評価いただいた方、ありがとうございます!!

少しづつ上達出来ればと思います!!


レンド家の領地であるレンド村へと帰ると、既に葬儀は執り行われた後であった。


聞いた話では、およそ500名程度の領民全員が参列し、父親ブレム・レンドの突然の死を嘆いたという。

その時の様子を、村の入り口の門番が泣きながら俺に話してくれた。


(親父。あんたも良い人生だったみたいだな。)


村へ入ると、俺に気付いた領民達が駆け寄って来たが、彼等との挨拶もそこそこに、領地の真ん中にあるレンド家の大きな屋敷へと向かい、そこに立つ門番へと告げる。


「レンド家が三男、アペイロンが戻った。

家族のもとへ案内しろ。」


そう言うと、門番は頭を下げた後、屋敷の裏庭へと俺を連れて行く。

着いた先では、裏庭の中央に置かれた棺の前へ、母親達を含めた全ての家族が一同に会していた。

そして、その中。

一際背の高い長男カッタドがこちらに気付き、声を上げる。


「よく来た。お前の帰りを待ってたぞ!!」


「遅くなって申し訳ございません兄上。」


「いや、こちらこそ先に葬儀を済ませたことを詫びよう。

お前の方こそ大変だったと聞いた。もう身体は良いのか?

まさか立て続けにこの様な事が起こるとは。」


「身体はまだ痛みますが、もう大丈夫です。」


俺がそう答えると、長兄のカッタドは片手で長い顎髭を触りながら、優しい笑顔で微笑んだ。


「まぁ無事ならばなによりである。これで、久しぶりに家族全員が揃ったな。」


レンド家には、3人の母親と5人の子供がいた。

正妻の子供が長男のカッタドと次男のケルン、そして俺の3人。

側室の子供が、長女のミーデン。

次男のケルンと同い年。


そして、最後が次女のスラー。

新しい側室との間にまだ産まれたばかりだ。

既に、正妻である俺たちの母親は10年前に亡くなっており、この場には7人が居た。


長男のカッタドは、全員の顔をゆっくりと見回した後、口を開く。


「レンド家の全ての者が揃った。

それではこれより魂の継承を行う。」


兄カッタドが発した言葉により、俺はこの世界のルールを思い出した。


聞いた話や読んだ本によると、この世界では、人や人ならざる者が死んだ時、肉体から魂が解放されるのだという。

そういった魂が、人や人ならざる者、時には物や土地へと継承されていくというのだ。


(勿論例外もあるらしいが。)


解き放たれた魂は、死んだ本人の意思により、自身の経験や能力、スキルや魔法、自身が引き継いできたものを、引き継がせたい者へ継承することが出来るのだという。


だから、ある貴族の当主が老いや病により、その生命の終わりが近づくと、

血縁の者や側近の者たちによる醜い争いが始まることは、良くある話なのだ。

なぜなら、魂を引き継いだ者は、その能力や全てを受け取る事ができ、それこそが跡取りである証明になるのだから。


今回のレンド家の様に、突然当主が亡くなった場合でも、遺言書の偽造など様々な争いは起こるようだが。


(その点は、どの世界でも余り変わらないな。)


ふと、前の世界の相続問題を思い出した。

最近では、争続なんて言い方もあるらしいが。


しかしながら、レンド家においてその心配は無い。

長男のカッタドがレンド家を継ぐ事は、父親のブレムが家族や周辺に以前から明確に宣言をしていたからだ。

だから、カッタド以外の子供達は、それぞれがそれぞれの人生を全う出来る様に、幼い頃から準備をさせられていたのだ。


(まぁ、産まれたばかりの次女は流石に成人くらいまでは、カッタドが面倒を見るだろう。)


そんな事を考えている内に、村一番の魔法使いの男が裏庭へと現れた。


俺たちに対して深々とお辞儀をした後、棺の前に静かに立つ。


「よろしく頼む。」


兄のカッタドが一言告げると、それを合図に魔法使いの男は、大きく杖を振った。


「有限から無限の旅路へ。」


魔法使いの男は、祈りの言葉を静かに呟き、棺やその周りに添えられた大量の花と共に眠る父親ブレム・レンドへと火の魔法を放つ。

それは、瞬く間に高く登りつめる炎となり、その全てを焼き尽くしていた。


(前の世界なら、大量の薪にガソリンでもかけておかないと、ここまでの火にはならないな。)


目の前の火を眺めていると、視界に虹色が走る。

瞬間。

トクンッと心臓が跳ねた様な気がした。


通った方向に目線を向けると、家族一同の目の前を、虹色の透明な玉がゆっくりと漂っている。


その姿は、どこか愛しそうであり、名残惜しそうであり、悲しそうであり。

この目の前の虹色の玉が、魂で無ければ何であるのかと思わせる程に美しい姿だった。


俺は思わず。


「綺麗だ。」


と、呟いた。


しかし、他の家族にはどうやら見えていないようで、全員が真ん中の炎を見つめながら、小さく頷くのみ。


漂っていた虹色の玉が、やがて長男カッタドの前に止まると、ゆっくりとカッタドの中へと入って行くのが見えたのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(さて、どうなることやら。)

カッタドは心の中で呟いた。


父親の遺体に火がかけられている間、長男カッタドは不安に駆られていた。

理由は2つある。

1つは、父親ブレムが本当に自分へと魂を継承するのか?と言う点

これに関しては、他の家族の者であれば問題は無いが、家族以外の者に、父親の思いが強い者がいた場合、レンド家に長年伝わってきた魔法の能力や、武力、才能、スキルなどありとあらゆるものが、レンド家から出て行くことになるのだ。


(父上の事であるので、問題はあるまい。)

そう思いつつも、不安は拭いきれない。


そして、もう1つ。

こちらの方が圧倒的に大きな不安の要因であるのだが、魂の継承がなされた瞬間に、ありとあらゆる情報が一気に引き継がれるため、受け止めきれずに、廃人のようになったり、死んでしまう者も居るそうなのだ。


(こればっかりは、やはりわからんなぁ。)


そんな不安を抱えながら、火を見つめていると、端の方の三男アペイロンが、自分の方へ目線を向けている事に気がついた。


(なんだ?俺、、、いや、俺ではなく俺の前か?)


アペイロンの視線の先は自分ではなく、その少し前。

その視線の先を辿ろうとした瞬間、強烈な衝撃が全身に走り、カッタドはその場に倒れこむのであった。



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