第4.2ミッション ミッションこんぷりーと! 中編
みんなであいつらの悪事を暴こう!って雰囲気になったのはいいが、それよりこの場で少し重要な事が残っている。
男性5人がかおる5天王なのはわかったとして、女性陣の名前を確認出来ていない。
本当に下心なく、せっかくのオフ会だしギルドメンバーの名前ぐらい知りたいと思うのは普通だと思う。それに名前がわからず”おい”とか”おまえ”などで呼びたくないし、怖くて呼べない。
そもそも、5天王は彼女達の事を知っているのか?
この部屋に入ってきて、談話もなくシーンとした感じでなんか初対面っぽいんだよな。
かおる君にこっそりその辺りを聞きたいが、長机を挟んで対面の丸椅子に座っている為、小声では聞きづらい。
ましてや隣に移動して耳元で話をしたら5天王は火山のように顔を真っ赤して爆発するだろう。
となると隣の女の子に聞くのが自然な流れだ。
「あ、あのちょっと聞いていいかな?」
「何?」
冷たい。
ものすごく極寒にも感じる感情を乗せてゴスロリ少女は返事をしてくれる。
無視されるのとどちらがいいって聞かれれば難しいけど、まだ返事されて事でよかったかもしれない。
しかし、そこから続けて声が出にくくなった。
「ロディ。そんな奴と話ししなくてもいいよ。私が変わりに答えてあげる。何が聞きたいの?」
おおーーー!!天使が隣に居られました。
ストレートのロング髪の少女が少し頬を上げて笑みを作りながら、声をかけてくれた。
「おい。ロディは俺に声をかけてきたんだ。勝手に割り込んでくるな」
「あなたがそんなブラックな態度でロディに接するからですぅ」
二人が言い争いを僕を挟んで始めた事でワタワタとどうしていいのかわからず、とりあえず止めようとするが、止めれる雰囲気でもなく小さく縮こまるしかできない。
「もう!やめなさい二人とも。わざわざロディをそこに座らせてあげたんだからおとなしくロディでなごんでいなさい。もううらやましい・・・」
最後は小声でかおる君が言った言葉に5天王が反応して僕を見る。
僕は何もしてないですからね。
本当になんなんですかこのわけのわからない構図は。
かおる君から少し注意を受けて二人はしぶしぶ元に戻る。
そしてなぜだかパーソナルスペースが縮んだ気がしたのだが、どうやら気のせいではなく左右からさっきより多い情報量が感じられる。
つまりだいぶん身体が近い。
やめてー!僕が勘違いしたらどうするの?!
恋をして好きになった人といちゃいちゃしたいが、慎重に恋をして行きたいのだ。
どれぐらい慎重かって相手が僕の事が好きだと確定した時に告白するぐらいに。
今度好意だけ見せられて、僕が告白してフラれたらそれこそ人間不信で部屋から出てこなくなるから。
しかし、女性特有のいい香りと二人からなんだかわからないけど好意を感じられる(勘違いだったらはずかしーー)。僕の彼女達に対する気持ちが物凄いスピードで普通→好き→めっちゃスキー!!に代わっている。
だってすごい二人とも美人なんだよ。
しかし二人好きになっちゃいましたけどいいんだよね?ちゃんと最後にはどちらか選ぶ事になるけど、僕みたいなのが勝手に決めていいのかな?などと考えていると、かおる君からみんなの自己紹介をしていく提案があった。
よかった。
僕が考えていた内容が伝わったのかと思ったけど、どうも3チームほど作って、あいつらの動向を追うのでメンバーの親睦を図って置いておいたほうがいいという事になったようだった。
5天王と女性8人とかおる君、そして僕。
さすがにチーマー相手に女性だけで、証拠集めなんてできるわけもないし危険だと、5天王が3、2人分かれてサポートする事になった。
かおる君が仕切って、まずは5天王が自己紹介をしていく。
どうも自己紹介の印象からやっぱり今日がギルドメンバーとは初対面っぽい。
ただサブギルドマスターのマディアさんとは面識があるようで、主に女性陣が座る方向に顔を向けて挨拶をしている。
ゲーム内で知っている中だし仲間意識があるのか、お兄さん達が以外と柔らかい印象で挨拶をしている。僕から見ても好青年なイメージだ。
5天王の自己紹介が終わり、7人の女性の自己紹介が始まる。
その前にリアルでの名前紹介に女性は抵抗があるだろうからってかおる君が、ゲームキャラ名で紹介してねと女性陣に伝える。
女の子達はそれにほっとしたような緊張感が抜けていくのがわかる。
女エルフで弓使い(ハンター)をやっているメノンさんは、リアルではメガネっ子でプレイではよく奇声を発しているが、今は全くそんな気配はない。どちらかと言えば大人しい文学少女系だ。
格闘大好きなグラップラー(拳闘士)をやっているリラさんは、ゲームそのままのちょっと活発なショートカットの女の子だ。どうもメノンさんと同じ学校で親友らしい。一緒にゲームを初めてかおる君=ハゲマゲドンに声を掛けられてギルドに入ったらしい。
それまではずっと二人でプレイしていたので、オンラインゲームの意味が少しないかもって思い始めて引退する直前だったみたいだ。
ヒーラー(僧侶)のマドカさん。
社会人らしく、よくゲーム内でハゲマゲドンと服の話とか、スィーツショップについて熱く語っている。
そして課金ガチャのやりすぎでよく今月の食費が・・と言っている。
重騎士のデォールさん。名前は男みたいだし重鎧を着てるので男性キャラと間違われるが、れっきとしたドワーフの女性キャラだ。身長を150センチぐらいに設定しているが、リアルの本人は180を超える長身の女性だった。
立って自己紹介をしたときに思わずおぉ~と声が出てしまった。
本人はすごく気にしている様子だったが、たつみ君がモデルみたいでいいんじゃねーというと顔を赤らめて、小声でありがとうと言ってすぐに席に座った。
たつみ君は女性に興味がなさすぎで印象が冷たい感じがするんだけど、昔から女性にモテる。ふとした時に優しさみたいなのを見せるので、そのちょっとした心の隙間を埋められて女性はやられてしまうらしい。
そして銃剣士ラウアさん。たつみ君のキャラ”紫電”と同じ職業でよく1対1でどっちが本当のギルド最強の銃剣士かを競い合っている中で、自己紹介された時、おおーお前か!とたつみ君が声を上げて喜んでいた。
それを羨ましそうにデォールさんが見ていたのを、僕はふぅ~ん、そういう事なのねと思いながら見守っていた。
ラウアさんのリアルはアゲアゲのマジギャルだった。
僕が話しかけるのには、かなりハードルの高いキャラだった。
けどたつみ君はそんな事気にした様子もなく、武器がどうのとか話をしている。
ラウアさんも、そうっすね的な会話でついて言っているので本人である事は間違いない。
そしてかおる君の隣に座る女の子マディアさんが立ち上がり挨拶をする。
できる女!って雰囲気があるが、口数少なく挨拶する。サブギルドマスターと言う位置で”紫電”は実はサブギルドマスターではないのだ。ギルド内では攻撃隊長となっている。
二人の間には何かあるような雰囲気だがそれはすぐに解決される。
「何?その顔。兄さん文句でもございますか?」
「お前はもう少し柔らかく自己紹介は出来ないのか?」
「これが精一杯ですが何か?」
「・・・そ、そうか」
どうもリアルで兄妹らしい。
という事は、昔の記憶をあさると彼女のリアル情報が出てくるのか?
しかし全く記憶にない。
その辺りはもしかしたら込み入った事情があるかもしれないけど、この場で掘り返す必要はない。
さて残ったのは僕の左右にいる”ゴスロリ少女”と”ストレートロングの少女”だった。
あれ?今日のオフ会で人数を数えるとギルドメンバー15人全員来ている事になる。
あまりにインパクトのある話が続いたせいで、意識がギルドメンバーまでいかなかった事もあるけど、という事は新加入の二人も来ている。
って事は・・・。
ゴスロリ少女が立ち上がり自分のキャラ名を口にする。
「ザンパだ。ロディに26回も殺されて、もう心も体もボロボロにされてしまった」
「ちょっとーーー!」
なんだろ。言ってる事は間違っていないが、彼女=ザンパの衣裳も相まってどうも卑猥なセリフに聞こえる。
僕に人生をめちゃめちゃにされて身も心も傷ついているような印象だ。
当然周りから細い目を目けられる。特に女性陣から。
やめてそんな被害妄想。
「ロディには責任を取ってもらうのでよろしく」
「責任って」
「そんな責任ありませんから」
ゴスロリ少女を批難しつつロングの髪の少女も立ち上がり、自己紹介を始める。
「私は先日ギルドに加入させてもらいましたアリッサと言います。ロディに助けてもらって本当にうれしかったです。そ、そのこれから彼と一緒にしあわ・・・楽しくできたらと思います」
(いま何か言いかけてやめたけど・・)
キラキラした目で、何かを訴えてくるアリッサを見てるとゲームの事なのかリアルの事なのかよくわからない。
とりあえずそれは置いておくとして、これで二人が険悪な雰囲気を持つ理由が分かった。
二人は元同じギルドメンバーで、ザンパは悪役ロープレをしているキャラだったのに対して、それに捕まった悲劇のヒロインキャラのアリッサ。
ゲーム内のロープレとはいえ、リアルで険悪になる理由にはなる。
まあ今後仲良くなっていってもらえればいいかなと思いつつ、それよりもザンパに気になる事を尋ねた。
「男の娘です?」
グーでおでこを殴られました。
痛いです。
「俺をどう見て、男と思った。どう見ても女だろうが」
「・・・」
「今胸を見たな。今度はおでこではなく、その小さい鼻がいいらしいな」
「やめて・・・。暴力反対」
「貴様にさんざん精神的な暴力を受けたんだがな」
「申し訳ない・・・」
「私のロディとじゃれ合うのはやめてもらえますぅ?」
そんなやり取りに一同が笑い、2人はアヒル口になりながら席に座る。
なんか自己紹介が終わった雰囲気になったが、かおる君はそんなに甘くなかった。
「さてロディの番だよ♪」
ですよね。
ロディのキャラって慇懃無礼なキャラで基本通していて、ギルドマスターのハゲマゲドンには敬意を持っているというキャラ設定でいっているので、どう自分を紹介していいのかわからない。
とりあえず立ち上がり、ぼそぼそと名前を言う。
「ロディ。聞こえないぞ」
「がんばれ」
「いつもの感じで”俺様”キャラでいいよ」
などと声が上がる。
くぅーーーーーこうなったらやけだ。
「ふふ、俺が黒騎士ロディだ!我が敬愛するのはギルドマスターただ一人。貴様らにわが名を知る機会を与えてやっただけありがたいと思え」
あぁ~気持ちいい。
ロープレ最高!と思っていると色んな所から店の備え付けクッションが飛んでくる。
やめて~~。
みんな笑顔で爆笑が起こり、僕もこの場にいられて本当によかったと思う。
「ではチーム編成を行うよ。このコップから棒を引き抜いて書かれている番号が同じ人がチームだからね」
かおる君の自己紹介はなかった。
僕がそこを突っ込もうものなら5天王から、目から光線を出されるかもしれない。
だけどあえて言おう。
「マスター自己紹介がまだです!」
シーンとなった部屋の空気が重くなった気がした。
やらかした感が半端ない。
ふ。コミュ障の事故率をなめるなよ!
「わかりました。自己紹介します。ロディ、えーと”うちの旦那”からご紹介がありましたギルドマスターのハゲマゲドンですぅ」
かおる君の”旦那”と言う発言をしたところから5天王が立ち上がり僕を担ぎ上げて自分たちの席に座らせる。
すごい情報量に汗しか出てきませんが。
そんなこんなで21時。
「帰りたい」
今日のお昼にも同じ言葉を言っていた気がする。
ただその理由は異なるけど。
僕は夜なのにサングラスをして、夏なのに首から口にかけてレッグウォーマーを巻いて、とあるカフェの2階でココアを飲んでいる。
左右からビリビリとした視線を受けそのプレッシャーが半端なく胃がキリキリ痛む。
さっきから擬音ばかりになっているが、現状表現をするならそんな音が当てはまる。
左右には゛ニャンカフェ゛で顔合わせした女の子が座っている。
名前は教えてもらったんだけど、どう呼んでいいのか分からず、コミュニケーションも取れないまま、僕を挟んでずっとにらみ合っている。
「ロディ。帰りたいってこの幸せな状況でよくそんな事が言えるな」
ゴスロリのザンパが不満げに言う。
両手に花で、誰が見ても羨ましいと思える状況だと思うが。
「それならちょっとでいいから、話をしませんか?」
まだ対人に慣れていない僕の震えた声で提案してみるが、沈黙をもって答えられる。
ため息しか出てこない。
生涯の楽しみは女性とお付き合うすると思っている僕ですら、話もできずにただそばにいて不満げににらみ合う女性の真ん中にいればそれも仕方ない事だろう。
30秒ぐらいだろうか。僕にとって5分ぐらい感じられる長い時間の沈黙後、アリッサが提案してくる。
「仕方ないですね。”私”とコミュニケーションを取りたそうにしているロディにゲームを提案しましょう」
「ゲー・・・」
僕の声にかぶせるようにザンパの不満が交じる返事をした。
「はぁ?”私”と?何言ってるの?ここには3人いるんだが」
「ごめんなさい。小さくて見えんかったもので。特に胸が」
「ほう。貴様喧嘩売ってるな?」
あぁ。これこんな感じ。
さっきから僕とどちらかが話をしようとするとバトルが始まる。
なので会話を始めれば喧嘩そして沈黙、また会話を始めれば沈黙を繰り返していたというのが本当の所なんだけど。
さて少し話をニャンカフェにいた時に戻して、チーム編成をした時の話である。
厳選なる抽選(棒くじ引き)の結果、なぜか僕とこの2人のチームとなった。
確かにみんな一斉に棒を引き抜いたんだけど、ほかのチームは6人と6人メンバーのチームだ。
普通に考えれば綺麗に5人編成の3チームが出来上がるはずなんだけどな。
でまずは”あいつの親父”の不倫証拠を掴むかおる君率いるチームと、2つ目はうちの学校長の不正証拠を掴むたつみ君のチーム。
最後にあいつらの不正証拠を掴む僕のチームだ。
僕は2人の少女を従えて、あいつらの不正証拠を掴むチームとしてかおる君から指令を言い渡された。
「普通5人で・・・」
「何かなロディ?」
笑顔でかおる君に圧力をかけられればこれ以上何もいう事ができない。
しかし、それとは別に実際どうやってあいつらの足取りを掴めばいいのかわからない。
「それは大丈夫♪」
問題ないとかおる君が僕のスマホを出すように指示をし、そこに見たこともないアプリをインストールした。
起動して画面を確認すると”追いたい奴の名前を入力”と書かれており、かおる君があいつの名前を入力し決定を押すと、あいつが”今何をしているか”が書かれたログが流れ続けている。
僕はこの異常なアプリに目を見開く。
「かおる君。な、何これ?」
「ある探偵から送られてくる正確な情報だよ」
「ある探偵?」
「そう今回の状況証拠を捕まえるために協力してくれてるの」
「そうなんだ・・・」
探偵と聞いて、小さな少年探偵を思い描いたが、それよりも流れくるログの速さに驚く。
240;今トイレに行った 14;30
241;個室に入って腰を付ける 14;30
242;ひねり出された 14;31
243;手も洗わず席に戻り談笑 14;31
などどうでもいい情報が流れ続けるが、かなり近い位置で確認していることがわかる。
いくら、探偵だからと言ってここまでわかるものなのか?
かおる君の表情から何かを伺おうとするが、にこりと笑みを返されてそれ以上の事はわかりそうにない。
しかしこれを使えば、国のお偉いさんの行動を把握して今頃は大変な事になっているだろう。
僕の疑問が顔に出ていたのか、かおる君は首を振り説明を付け加える。
「今回の件であくどい事をしている人間の行動しかログは送られてこないよ」
「どういう事ですか?」
「それはね・・」
かおる君の説明では、悪行をやっているあいつらの動向を探る名目で、探偵さんに依頼メールを送ったらしい。
その時に関係していそうな人間の名前も一緒に。
後日、依頼を受けるとメールが返信されてきて、そこに”本当に関係”している人物の名前がピックアップされており、今回のアプリが添付として貼り付けられ、アプリの使い方のレクチャーがあったらしい。
でリストアップされている人物の名前を入力する事でこのアプリは動くらしい。
「試しにたっくんの名前を入力してみたけど”ちゃんと”動かなかったよ」
「なんでそんな事するんですか?!もし動いていたらどうしてたんですか!!」
「ん~好奇心だよ。それに動いていたらちゃんと”おかず”にしてたから安心して」
「それマジでだめなやーつですから!!」
「かおるぅ~~ただみちより俺の行動を検索しろよ」
顎に右手の人差し指を当てて首を傾げながら可愛く答えてくれるかおる君が嬉しそうに笑う。
どうも僕がちゃんと受け答えするのがうれしくて仕方ないらしい。
それだけ心配してくれていたという事で今回の件は、うやむやに終わらせたけどこの人の行動には気を付けないとかなりやばいような気がする。
で現在。
不機嫌なザンパとアリッサに挟まれてアプリを覗きつつ”あいつら”の動向を探っている。
覗いてい画面は例のアプリ内でログとは別のタグを選択して新しい画面を見ている。
地図が表示されており、赤点と緑点が表示されている。
赤点があいつらで、緑点は僕たち。
その距離にして一駅分と言うところか。
ログを確認しつつ、あいつらは僕たちのいる場所のほうへと向かっているらしい。
今日はどうやら違うターゲットを見つけて、悪質動画の撮影を行うみたいだった。
あいつらの会話の内容までバンバンログが流れてくる。
それを見ているだけで気分が本当に悪くなってくる。
下衆な会話しかしていない。
今から悪質動画を取る内容を決めて、ターゲットから口止め料をいくら請求しようかなど。
「腐ってやがる」
ザンパの独り言に同意しつつ、赤点が移動し始めたのでこちらも移動を開始する。
初めからあいつらの目的地は知っていたが、その場所で少女2人と待ち伏せするにはかなり神経を使う場所だったので、このカフェで待っていたのだが、いざあいつらを追って来てみるとやっぱり最悪な場所だった。
ラブホテル街。
ターゲットを知り合いのギャルっぽい女性に誘わせて、さぁ今からって所で部屋に乗り込んで俺の彼女に何手を出してるんだよって展開に持っていくらしい。
べたな内容だった。
これを俺すごくねーとか言って自慢げに語っているらしい。
痛い痛すぎる。
しかし、何かひっかかる。
なんだろ?ぱっと考えた所でシナリオがお粗末すぎるのである。
僕が騙された時はも少し巧妙に話が進んでいて、一瞬仕掛け人のあの人に心をときめいた時もあった。
それすらなく、ただ肉体的だけに男のサガを利用しただけの内容に不信感が沸いた。
ログ画面で少し気になったので調べてみる。
「やっぱりないな~」
そう仕掛け人だったあの人が会話しているログが出てこないのだ。
探偵さんが相手は女性だと気を使ってログを流していないのかと思ったので”追いたい奴の名前を入力”に彼女の名前を入力してみた。
しっかりと表示される。
どうも彼女は”あいつの親父”と外食中らしい。
かおる君が”あいつの親父”を追っているし、議員を追っている事から、たぶん世間は凄い事になるのかなと思いつつ、すぐにあいつを検索するように切り替えてみると、今から乗り込もうと部屋前で待機中らしい。
彼らがいるホテルに乗り込んでいき、3階の廊下に出るエレベータ前で、廊下をのぞき込む。
あいつらが、笑いを押し殺して待機しているのが見える。
あらかじめ用意していたシャッター音が鳴らない黒いスマホを自撮り棒に差して、そぉっと廊下に出す。
カシャ。カシャ。(音はなってないよ。雰囲気)
何枚か撮って音を立てないようにそっとこちらに引き寄せる。
心臓がバクバクいっている。
3人で黒いスマホの画像を確認する。
綺麗にうっとうしい顔が撮れている。
バン!と扉を叩きつけるような音が廊下に響き、数人で部屋に入っていく様子をそっと確認する。
奴らの仲間が廊下にいない事を確認して、部屋の扉の横張り付き、自撮り棒で今度は部屋を録画撮影する。
録画されている内容は見れないが、結構激しくやっているのかノリノリな声が聞こえる。
アプリのログを見てみると間違いなく同じセリフが廊下まで聞こえている。
それから30分。
ターゲットを殴るだけ殴って最後に俺たちも鬼じゃないんだよと言う。
あぁ今すぐ飛び出していきたい。
無性に湧き上がる感情に身を委ねたいが、かおる君から絶対にそれはしてはダメと言われている。
『罪は法が裁いてくれる』
かおる君が僕にニャンカフェを出る時に言ってくれた言葉を思い出し必死で感情を抑えているとアリッサに、腕の袖を引っ張られて撤退の合図が来る。
必死で腰を上げて、彼らのいる隣の部屋へと逃げ込む。
前持ってここの部屋は抑えておいたので、廊下を移動する時にザンパが部屋の鍵を開けておいてくれたのだ。
ザンパが僕と同行していたらたぶん理性がなくなって乗り込んでいたかもしれない。
そのため、アリッサが僕と同行するという話になったんだけど。
まぁその辺もちょっと揉めたけどね。
そのまま部屋奥まで移動し、大きなベットに寝転がる。緊張していたモノが一気に開放された気分で、そのまま寝てしまいたかった。
「最後はちょっとやばかった。・・・・アリッサに服の袖を引っ張られなかったら見つかってたかも」
あいつらの笑い声と共に部屋を出て行こうとしていた所で、本当にタイミング的にやばかった。
今回撮影した内容は、あくまでも証拠の”一部”としてしかるべき所に提出する事になっている。
実はこいつらはこれだけではなく、もう次のターゲットを決めており明日またこのラブホテル街で同じ内容でカツアゲをするようなのだ。
何度か同じような事をやっているようだが、動画を撮られているので被害者が告発できずに泣き寝入りしているのが現状のようだった。
手に入れた巨額のカツアゲ金を元手に派手に遊んでいるらしく、ドラッグにまで手を出しているようだった。
ベットに横になっていると、ザンパの喉を鳴らす音が聞こえる。
「ふ、ロディお前は選択を誤った。狼が目の前にいるのにベットに横になるウサギは”食べてください”と言っているようなもんだぞ」
「それって男が女の子に言うセリフだよね」
「覚悟しろ」
ザンパの目がマジだった。
今から僕、狼に食べられちゃうんだ。・・・優しくしてください。
「ゴラァ!!遊んでいる場合じゃないでしょ!!あいつらもう移動開始してるよ!!」
腰に手を当てて、怒っているアリッサに舌打ちしてザンパは部屋を出て行く。
助かったのか。それとも残念なのかショボーンとなった僕もアリッサと一緒に部屋を出て行く。もちろん僕がご休憩料金払いましたけどね。
僕たちがラブホテルを出て、あいつの後を追ってタクシーに乗り込み、運転手に場所を言うと、少し怪訝な顔をされた。
どうもこの時間ドラッグを売っている売人がうろうろしていると噂のある地域らしい。
僕たちは近所に住む友達の家に遊びにいくだけといったけど全く聞いている風ではなかった。
まぁゴスロリ少女と美人な女の子二人をぶさおが引き連れてそんな怪しい地域に行くとなると”引き合わせ”してるように見えるか。
タクシーから降りてあいつらから少し離れたマンションに隠れてドラッグを売っている東洋人系の売人と、あいつが金額交渉をしている所を撮影している。
白い粉が入った袋をもらい現金を手渡ししているシーンも暗闇ながらばっちり撮れた。
一度転がり始めた人生は周りの仲間がいる事もあって、引き際を見つける事が出来ないらしい。
今受け取った白い粉を使って、あいつが今狙っている女の子に対して強引にエッチな事をして自分たちの世界に引き込もうとしているログが流れる。
本当にこいつはバカだ。
やっていい事と悪い事が世の中にはある。
自ら勝手に地獄に落ちていくのはかまわないが、他人を巻き込むな!!
もうあいつに関わって不幸な目を見るのは嫌だ。
絶対に阻止してやる。




