第二十一話:託された軌道と、天穿つ一撃
「個の力」を信じる最強の敵に対し、ぶつけるのは合宿で磨き上げた「全員の総力」。
タクトの限界を超えた障壁展開と、アイラが放つ音速の超加速打撃が、ついに絶対防御の壁を捉えます!
託された想いを乗せた魔導指揮杖は、敵のプライドごとブチ抜くことができるのか――!?
陰謀の闇を吹き飛ばす、生徒会の魂の一撃をお見逃しなく!
鷲宮生徒会長が手をかざすと、黒紫色の高密度魔力弾が無数に生成され、全方位から降り注ぐ豪雨のような掃射が始まる。
地面が削れ、爆風と粉塵が視界を遮る中、生徒会は後退を余儀なくされる。
「所詮はその場しのぎの連携。我が絶対の魔力の前では、塵芥に等しい」
観測ドローンが次々と撃墜される中、ノアが自身の魔力を限界まで注ぎ込んで敵の魔力循環を解析し続ける。
ノアの魔力はもう限界で、鼻血をぬぐいながら、通信機へ叫ぶ。
「会長、防御壁の魔力再充填に0.8秒の呼吸があります! ……そこしか道はありません!」
ノアが示した極小の隙をこじ開けるため、セナが影分身を伴って超近接の陽動へ突撃。
敵の迎撃雷撃を紙一重でかわしながら、至近距離で煙幕と魔力攪乱弾を爆発させる。
さらにセリアが全魔力を込めた最終アンプルを地面へ投擲。広範囲に魔力伝導を狂わせる霧を発生させ、会長の索敵を一瞬奪う。
「今だ、リサ先輩っ!!」
霧の中から放たれた会長のカウンター極大魔力砲に対し、リサが前へ踏み出す。
「我が魔力のすべてをもって、道を拓きます! 『永久凍土の白城』!!」
巨大な氷の城壁が直撃を受け止め、激しい破砕音とともに砕け散るが、放たれた熱線を完全に逸らす。
氷片が舞い散る中、完全にノーマークとなった直線ルートの先へ、私とタクトが飛び出す。
氷壁が砕け散った刹那、鷲宮生徒会長がすぐさま体制を立て直し、多重の漆黒防護障壁を再展開。
「小細工で稼いだ数秒など無意味。我が防壁を貫く手段など存在せん」
地上からの直線突撃では到底間に合わない距離と障壁の厚み。
私の背後で、タクトが両手を天へと突き上げる。
魔力枯渇の激痛で腕が震え、全身の毛細血管が悲鳴を上げる中、タクトの瞳に強い光が宿る。
「誰が無意味だって言った……! 俺たちの泥臭い努力を、お前なんかに否定させてたまるかぁぁッ!!」
空間を裂くように、斜め上方へ向けて角度を変えた三枚の偏向障壁が連続で空中に固定される。
タクトの展開と同時に、私が一歩目を地面へ踏み込み、空中の第一障壁へ飛び乗る。
バシュゥンッ!
障壁の偏向反発力を受けて初速が跳ね上がり、すぐさま第二障壁へと足をかける。
ドォン!
二段目の反発で空気が悲鳴を上げ、音速の壁を突破。
「いっけぇぇぇぇ! アイラ会長ぉぉぉッ!!」
三段目の障壁を踏み抜いた瞬間、衝撃波で特務結界の天井付近まで一気に到達。
完全に鷲宮生徒会長の防壁の死角を取った。
________これで、決める!!!!!!!!
私は魔導指揮杖を両手で天高く掲げ、仲間全員から託された魔力を先端に極限まで圧縮し始める。
天井付近から重力と加速エネルギーを乗せて急降下する。
掲げた魔導指揮杖の切っ先に、仲間5人の想いと全魔力が金色の閃光となって超圧縮され、巨大な光の破城槌を形成する。
「なっ……上空だと!? 馬鹿な、そんな跳躍力があるはずが……!」
慌てて頭上へ全障壁を集中させようとするが、ノアの解析データとセリアの中和薬の残効により展開がコンマ数秒遅れる。
「これで……終わりよぉぉぉぉッ!!!」
叫びとともに、音速を越えた急降下から指揮杖を渾身の力で振り下ろす。
鷲宮生徒会長の展開した多重障壁に直撃した瞬間、激しい魔力の衝突音が結界内に響き渡る。
ピキィィィン……ガシャァァァンッ!!
絶対防御を誇った黒紫の防壁が、ガラスのように一枚ずつ派手に粉砕されていく。
障壁をすべてブチ抜いた黄金の打撃が、鷲宮生徒会長の鳩尾へクリーンヒットする。
「ぐ、はぁっ……!? こ、こんな……雑兵ども、に……!」
信じられないという表情のまま、会長の身体が闘技場の石畳へ叩きつけられ、クレーターの中心で白目を剥いて完全に沈黙・戦闘不能となる。
巻き上がった粉塵がゆっくりと晴れていく。
沈黙に包まれていた特務結界内に、試合終了と桐花学園生徒会の完全勝利を告げるブザーがけたたましく鳴り響く。
ボロボロになりながらも立ち尽くす私は、ゆっくりと指揮杖を下ろす。
誰もが言葉を失う結界内。倒れ伏した鷲宮生徒会長を見下ろし、ノアが端末を操作する。
特務結界の中央大スクリーンに、鷲宮高等学院が裏で進めていた「都市魔力インフラ掌握計画」の通信ログ、魔力改ざんデータ、評議員への贈賄リストが一斉に大写しになる。
「試合中の魔力波の逆探知、および機密サーバーのクラッキング完了。……これですべての証拠が揃いました」
逃れようのない動かぬ証拠を突きつけられ、観覧席の魔導評議会上層部たちが一斉にざわめき立つ。
立ち上がった首席立会人が、鷲宮高等学院側の全面失格と、計画に関与した幹部全員の身柄拘束を厳格に宣告する。
鷲宮が築き上げてきた選民思想の権威と野望が、完全に崩れ去った瞬間だった。
緊張の糸が切れたタクトがその場にへたり込み、セナとセリアが歓声を上げながら私のもとへ駆け寄ってくる。
リサがいつもの冷静さを保ちつつも、目元をわずかに緩めてアイラへ歩み寄る。
「……見事でした、会長」
「みんなのおかげだよ! ほらタクト、立てる? 勝ったんだよ、私たち!」
泥と汗と煤にまみれた6人が、痛む身体を寄せ合って満面の笑みでハイタッチを交わす。
重々しい特務結界の扉がゆっくりと開き、外の明るい日差しが闘技場へと差し込む。
6人が肩を組み合い、誇らしげに光の中へと歩み出していく。
完 全 勝 利 S !
コテンッパンにしてやりましたよ、王道ですが、悪役を倒す瞬間ほど気持ちいいものはないですね。
しかも今回はアイラ1人の力ではなく仲間全員の想いの乗った一撃、これほど強かで美しいものはありません。
……と、私のやりたい放題やった次第です。
次回で第二章完結!




