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The-Dragons  作者: イグアナ


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35/54

大顎-3

 水の中は、暗かった。


 光が届かない。


 上下も、距離も分からない。


 だが――


 いる。


 目の前に。


 大顎のドラゴン。


 翼のような構造で水を切り、

 音もなく動く。


 速い。


 龍は姿勢を整える。


 息は、もたない。


 長くは戦えない。


 なら――


「短く決める」


 大顎が動く。


 一直線。


 龍へ。


 避ける。


 すれ違う。


 だが、水の抵抗で遅い。


 完全には避けきれない。


 肩をかすめる。


 衝撃。


 だが、止まらない。


 振り向く。


 大顎が再び旋回する。


 その瞬間――


 上から、何かが落ちてきた。


 矢だ。


 幸人。


 水を突き破り、

 まっすぐ沈んでくる。


 龍はそれを見た。


「……見てるな」


 位置を合わせる。


 大顎の軌道に、自分を置く。


 来る。


 速い。


 だが、読める。


 龍は、動かない。


 引きつける。


 限界まで。


 そして――


 直前で、わずかに身体をずらす。


 大顎の口が開く。


 その中へ――


 矢が入る。


 貫く。


 内側。


 確かな手応え。


 水が揺れる。


 大顎が暴れる。


 だが、まだ止まらない。


 その瞬間。


 水面が、再び割れる。


 上。


 かんたが、跳んでいた。


「いけぇぇ!!」


 落ちてくる。


 まっすぐ。


 龍の横へ。


 水に突っ込む。


 衝撃。


 泡が広がる。


 かんたは、そのまま拳を振る。


 狙いは、同じ場所。


 口の中。


 すでに傷がある。


 そこへ。


 叩き込む。


 鈍い感触。


 だが、通る。


 大顎が、大きく身体を揺らす。


 動きが乱れる。


 その一瞬。


 龍は踏み込む。


 水の中で、全力。


 剣を振り下ろす。


 顎の付け根。


 硬い。


 だが――


 入る。


 わずかに。


 確実に。


 水が、揺れる。


 大顎のドラゴンが、後退する。


 距離を取る。


 逃げる。


 深く。


 暗い方へ。


 消える。


 水面が、静かになる。


 龍は上を見る。


 光が、ある。


 浮かぶ。


 息が限界に近い。


 上へ。


 手を伸ばす。


 掴む。


 引き上げられる。


「はっ……!」


 空気。


 肺が焼ける。


 だが、生きている。


 かんたも、這い上がる。


「……死ぬかと思った」


 幸人は何も言わない。


 ただ、水面を見ている。


「……倒してねえな」


 龍が言う。


「逃げた」


 幸人が答える。


 水は、また静かだ。


 だが、いないわけじゃない。


 確実にいる。


 下に。


「……次で決める」


 龍が言う。


 誰も否定しなかった。

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