侵入者
昼だった。
訓練は続いている。
龍は剣を振り、
幸人は距離を取り続ける。
力嶽は、何も言わず見ていた。
かんたは、まだ寝ている。
そのときだった。
足音。
ドラゴンじゃない。
軽い。
数がある。
「……人だな」
幸人が言う。
次の瞬間、矢が飛んできた。
一直線。
龍が剣で弾く。
「散開!」
力嶽の声。
岩陰から、人影がいくつも現れる。
武装している。
剣、弓、短剣。
盗賊だった。
「なんでこんなとこに――」
かんたの寝ている場所に、視線が集まる。
「狙いはあっちか」
龍が言う。
「動かすな」
力嶽が即答した。
次の矢が飛ぶ。
幸人が撃ち落とす。
龍が前に出る。
一人、斬る。
血が飛ぶ。
だが、数は減らない。
盗賊は距離を詰めない。
囲む。
狙いは明確だった。
「かんたを取る気だ」
幸人が低く言う。
「……なんでだよ」
「知らん。だが来てる」
龍は位置を変える。
かんたの前に立つ。
次の瞬間、三方向から同時に来た。
速い。
人間の動きだ。
龍が一人を斬る。
幸人がもう一人を射抜く。
残りが突っ込む。
間に合わない。
その瞬間、
横から一撃。
力嶽だった。
一人を叩き潰す。
「守れ」
それだけ言う。
戦いは短かった。
連携は崩れない。
数は徐々に減る。
最後の一人が、逃げようとした。
幸人の矢が足を貫く。
倒れる。
動けない。
「……捕まえたな」
龍が言う。
縛る。
武器を奪う。
尋問する前に、
男は笑った。
「遅えよ」
その一言。
次の瞬間、
何かを噛み砕いた。
「――っ!」
力嶽が踏み込む。
だが、遅い。
男の身体が痙攣し、
そのまま動かなくなる。
「毒か」
幸人が言う。
他の倒した盗賊も、
同じように動かなくなっていた。
「……逃げたな」
龍が言う。
正確には、
“情報を残さず消えた”。
かんたは、まだ寝ている。
何も知らないまま。
力嶽は、しばらく無言だった。
「……来るぞ」
誰に向けた言葉かは、分かっていた。
これは、偶然じゃない。
盗賊が来た理由。
かんたを狙った理由。
そして、何も残さず消えたこと。
全部、繋がっている。
拠点の空気が、変わった。
戦いは、
もうドラゴンだけじゃない。




