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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第1章 グラダの町
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第4話 ファーマ君、お金を稼ぐ

 ━━翌朝


 今日は僕も収入を得る為に、ジョブギルドに向かった。本当は今日も図書館に行きたかったのだけれど、お金も稼がなくては住民税も払えないし生活が出来ない。まあ、これもこの世界を知る為の勉強だし、今日は仕事をしよう。


 ジョブギルドは、石造りの建物で、大きさは普通の家2軒分ぐらい。中は簡素な造りで、広いロビーの入り口から正面に受付らしきカウンター。申し訳程度の観葉植物っぽい鉢植えが幾つか並び、壁には木のボードが張り付けられていて、そこには仕事が書かれた紙が貼られている。


 このギルドは、住民登録さえしていれば、大人だろうと子供だろうと誰でも簡単にギルド登録が出来る。登録後は掲示板を見て自分に出来そうな仕事を選んでカウンターに持って行き、仕事を受ける方式だ。


 登録は書類に名前と住所を記入するだけ。僕はリリ達の家に住んでいるので、住所はリリ達と同じだ。住居のない人はどうするんだろ?


 ジョブギルドにはランクというモノがあり、初めはギルドが指定した簡単な仕事から始め、まじめにやっていると、ランクアップし、依頼主からの依頼を受けられるようになり、能力を認められれば、より上の偉い人からの依頼を受けられるようになり、気に入られれば正規に雇用してもらえる事もあるという事だ。


 登録したばかりの僕が受けられるのは、ギルドの隅っこにある掲示板に貼られている清掃の仕事や、薬草、野草、木の実などの採取の仕事だ。


 清掃は公共の施設(主に公衆トイレ)や町の清掃で、賃金は清掃する施設や範囲にもよるけどだいたい、1施設10デニールぐらい……安くないか?


 採取は物によって値段は違う。一番高いのは傷治療魔法薬の材料になるモヨギという薬草で、1株6デニール。一番安いのはアプリルの実という1口サイズのリンゴに似た木の実5つ1デニール。一昨日、リリ達が魔物に襲われそうになっていたのを考えると安すぎる仕事だな……


 リリ達は、僕よりランクが高いので、依頼主から出された、農場の手伝いの依頼を受けるそうだ。10時~3時まで手伝って、1人33デニール。時給660円は高いのか? 安いのか? 安全に稼げると考えたらモヨギ採りよりは良い仕事だと思う。


 僕はモヨギ採りに行くことにした。リリの話では、マッドドッグのような危険な生き物さえ、出なければリリ達の仕事より実入りが良いらしい。2人は、暫くは安全優先で仕事を選ぶことにしたそうだ。


 採取の仕事は受注式ではなく、納品式で、依頼を受けなくても以来の品を採取して持って行くとギルドが買ってくれ、数に応じて以来達成扱いになるという事だ。


よし、リヤカーを持って行って沢山集めよう。




 ━━僕はリヤカーを引きながら、リリ達と出会った森にやって来た。


 ここで、神眼に慣れる訓練をしながら採取に励もう。


 神眼の【広域視】を使うと、自分を中心に半径300mぐらいの範囲が360度把握できるようになる。これは遠視より視野が広く範囲内の景色が同時に目の前の景色として見える感じだ。範囲が広い分、こっちの方が気持ち悪さが酷いな。


 これも遠視と同じで建物の中や土の中まではみる事は出来ない。どこか空いている所があればそこからの景色は見れるみたいだ。特性は解ったので、早速採取を始めた。


 広域視の範囲内に結構モヨギがあるな。これなら簡単に集まりそうだ。他にもアカカブトという使い方次第で薬草にもなる毒草、カヤダケという赤茶色のキノコ。アプリルの実はこの森の木の半分近くがアプリルの木のようなので、いくらでも採れそうだ。


 慣れない視界に戸惑い、度々木に頭をぶつけながら採取は順調に進んだ。今のところ魔物の姿は見当たらない。たまに見かけるのは小鳥やリスに似た小動物くらいだ。


 まあ、リリ達だけで採取に来ていたくらいだから、危険な生き物が出る事は滅多にないのだろう。


 3時間ほど歩き回っての成果は、モヨギ53株、アカカブト24株、カヤダケ4本、アプリルの実268個、その他掲示板に張り出されていた野草や木の実など見つけリヤカーに入れた。


アプリルの実は採れ過ぎくらい採ったのにまだまだ沢山実っている。安いはずだよね。1つ食べてみたらとても酸っぱいリンゴのような味がした。食感は梨にちかいかな?


 ちょっと採り過ぎたので、今日はこの辺りで採取は終わりにして、神眼の訓練をすることにした。




 少しは慣れてきたけど、やっぱり船酔いみたいな感じになるな……ほんの3時間ほどで6回も吐いちゃったよ。まあ、前世で40℃以上熱がある時に家事をやっていたのと比べたらマシだけどね。


 あの時は病院にも連れて行ってもらえなかったから辛かったな……1度だけ本気で死ぬかと思った事もあったよね。


 まあ、お陰でこの世界にも来られたし、デーア母さんにも出会えたし今となっては良い思い出か。




 それから2時間近く、鼻歌混じりに森の中を歩き回り、だいぶ【広域視】を使いながらの行動に慣れたので、神眼の訓練を止め、町に戻った。


「おう、ファーマ。採取の仕事の帰りか? どうだった?」


 町の入り口で一昨日にも検問をしていた守衛さんがフレンドリーに声をかけてくれた。


「はい、結構いい感じに集められました。僕の事、覚えてくれてたんですね」


「まあな。仕事柄、人の顔と名前は覚えるのが得意になっちまった。住民登録はしているのか?」


「はい、この通り」


 僕が、住民登録の時に貰ったカードを見せると「なら通って良いぞ」と、そのまま門を通してくれた。


 この人の記憶力なら次からカードを確認しなくても通してくれそうだ。




 今日の収穫をギルドで精算してもらうと、全部で532デニール。受付の職員さんに驚かれ、ちょっとした騒ぎになった。


 あまり大げさに騒がれるのは好きじゃないから、次からは少し採取量を抑えよう……




 家に帰ると、もうリリ達は戻っていて、夕食の準備をしていた。


「ただいまー。リリ、これ今日稼いだお金の半分。食費の足しにしてよ」


 僕はお金の入った袋を料理の準備をしているリリに渡した。食費は別で渡した方が良いよね。


「おかえりなさい……ってどうしたの? これ。今日一日でこんなに稼いだの?」


 袋の中身を見て、リリは驚きのあまり口を開けたまま目を丸くしている。


「うん、モヨギが結構多く採れたんだよ」


 神眼のお陰で見つけるのは簡単だったし。


「ファーマって本当に運があるというか……凄いわね」


「凄いね、お姉ちゃん。お金持ちだねー」


 運ではなく神眼先生のお陰です。まあ、それは言えないけど。


 さて、お金に少し余裕も出来たし、今月の家賃と住民税は納めた。明日は街に出向いてみようか。


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― 新着の感想 ―
[一言] 1日の稼ぎの半分の261デニール(26000円ぐらい)が、食費の足しですか? 朝夕の1日2食としたら、1ヶ月分の食費でもおかしくない金額かな。 たぶん、ファーマが世間知らずで常識に掛けると表…
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