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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第1章 グラダの町
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第2話 ファーマ君、グラダの町に行く

 拝啓、デーア母さん。お元気ですか? まだ、別れて1時間ほどですが、もう、デーア母さんと過ごした家が恋しくなりました……ここは恐ろしいところです。


 猛獣がいると聞いていたから、ある程度覚悟はしていたのですが、想像していたのと違いました。僕は今、キガントフロッグという象のような大きなカエルさんに追いかけられて、とてもピンチです。猛獣じゃなくてカエルさん。

 

「ぅわあー!! こんなの僕の知ってるカエルじゃないよ。大きすぎでしょー」


 跳ねる度、ズーンとお腹の底の響く地響きがたまらなく嫌です。踏まれたら、ぺしゃんこです。このカエルが地面から迫り出して来た時は、驚きすぎて開いた口が塞がらなかった。いや、本当に……


 直ぐに我に返って神眼の【鑑定】を使ってみて、もっと驚いた。


 ギガントフロッグ

 生命力1128

 筋力981

 神力563

 瞬発力632

 耐久力880

 属性 水


 どういう事だ? 最初に遭遇した生き物のステータスが今の僕の倍以上・・・・・・リミッターが掛かっている今の状態でも一般的な成人男性の約5倍はステータスがあるんだよ? その倍以上の強さの生物がゴロゴロいると仮定するなら、この世界の人達はどうやって生活をしているんだ?


 と、考えている内にギガントフロッグが大きな口を開け、舌を収縮させている。


 ヤバい! 食われる。


 カエルの舌が僕に向かって伸びるのと、ほぼ同時に、僕は腰のサバイバルナイフを抜きながらリミッターを1つ外し、力を開放させた。すると、突然周りの景色がゆっくり流れ始め、さっきまで感じていた重圧から解放されたような感覚を覚える。


「たあーーー!」


 僕は、体を反転させ、舌を躱すと、カエルの足元に踏み込み腹部を数回切り裂く。すると、カエルは後方にひっくり返って動きを止めた。


 ふぅ、まさかいきなりリミッターを1つ外す事になるとは思わなかった……でも凄いな。解放すると身体能力が上がるだけでなく、恐怖心や重圧なんかも軽減されるのか。こんな大きな生き物を簡単に倒せちゃうなんて……町とかでは気軽に開放しない方が良いな。


 あー怖かった。でも、いきなり食材が採れたのはありがたい。


 カエルは久しぶりだ。前に食べたのは中3の夏休みだったかな? こんなに大きくはなかったけど、ウシガエルは淡白で美味しかった。この大きさなら足以外も食べられそうだな。


 サバイバルナイフで、カエルの解体を進め、内臓を取り出していると、拳大のサファイヤのような綺麗な石が出てきた。


「なんだ、これ?」


 鑑定してみると【水結晶(水属性の神力の結晶)】いう事が解った。へー、神力って結晶になるんだ。何に使えるのかは判らないけど、売れるかも知れないからリュックに入れておく事にした。


 うーむ、カエルの解体は終わったけど、持って行こうにも量が多すぎて持ち運びは出来ない。さて、どうするかだな……そうだ、リヤカー作ろう。ナイフじゃ木を切り倒せないけど、デーア母さんに貰った剣でなら切れるはず。


 そう思い、僕は【女神の小剣】を抜く。


 お、折れたりしないよね? 僕が作ったアダマンタイトのナイフであの切れ味だから、この剣はもっと凄いはず。なにせ神眼でも解析出来ないモノだし。


 僕は剣を水平に構えて、真横に軽く振ってみた。


 異常な切れ味だな……軽く振っただけなのに、なんの抵抗もなく大木を両断した。切り口が鉋かけたよりつるつるだ。僕に達人みたいな剣技の腕はないから間違いなく剣の性能なんだよね。切れすぎて怖いから暫くはナイフを中心に使おう。


 切った大木を、幾つかの大きさに切り分け、錬成術でリヤカーを作成、蓋付き4輪のリヤカーが完成した。……剣をこんな使い方して良いのだろうか? デーア母さんごめんなさい。今回だけだから許してね。


 足2本、腕2本を布で包み、リヤカーに入れて、皮、内臓、頭は食べられないので、置いていくことにした。


 ━━リミッターを戻し、リヤカーを引きながら進む事半日、だいぶ町まで近づいた。


 カエルを倒してからは、他の生物に遭遇することもなく、順調に進むことが出来て、本当に良かった。あんなのに何度も襲われたらたまったもんじゃないからね……ただ、遠くの空を大きな鳥? が飛んでいたのは見かけた。この世界にはどうやら始祖鳥やプテラノドンみたいな恐竜がいるらしい……見つかりませんように。


 そのまま駆け足気味に走りながら進み、日が暮れ始めたころ、2kmほど先に町が見えてきた。


 凄いな、ずっと走りっぱなしなのに疲れるどころか息切れ1つしない。前世でこの身体能力があったらスポーツの世界記録更新しまくりだろうな。


 と、改めて自分の身体能力の高さに驚いていると━━


「「きゃー!」」


 ━━右方面の森の方から女の子らしき人の叫び声が聞こえてきた。

 

 僕は声のする方を【遠視】で確認すると、森に数十m入った辺りで、僕と同じくらいの年齢の女の子を中高生くらいの年齢の女の子が抱きしめるように庇い、2匹の狼のような獣に襲われているのが見えた。


 そのまま、獣の鑑定をしようとしたけど、【遠視】と同時では上手く発動できず獣のステータスが判らない。


 どうする? さっきのカエルとは違って、今度は牙を持った本当の猛獣だ……けど、見捨てるなんて選択は出来ない。


 僕はリヤカーを置いて、森の中へ全力で走った。


 数秒で現場にたどり着き、狼が視界に入って直ぐに神眼で鑑定した。


 マッドドッグ

 生命力83

 筋力94

 神力42

 瞬発力108

 耐久力16

 属性 土


 あれ? めちゃくちゃステータスが低い……もう1匹も似たような数値だ。


 少し拍子抜けしたけど、僕は油断することなく、背後から1匹のマッドドッグをサバイバルナイフで仕留める。続いてもう1匹のマッドドッグが突然やられた仲間を見て硬直している間にナイフで喉を突いて仕留める。


「ふう、大丈夫だった?」


 僕が女の子達に声をかけたけど呆然としたまま返事がない。


「あれ? 言葉通じてる? おーい」

 

 おかしいな? 今、使っているのは、この国の公用語のはずなんだけど。


「……はっ、ごめんなさい。ちょっと吃驚し過ぎて……あなた小さいのに強いのね」


「いや、運よく不意打ちが成功しただけだよ。それより怪我はない?」


「ええ、ありがとう。大丈夫よ」


「あなたはだぁれ?」


「僕はファーマ。田舎から出てきて旅をしているんだ」


「田舎ってどこ?」


「えっとね。向こうの森の方だよ」


「うそっ! 向こうの森って魔性の森? 魔性の森近辺は強力な魔物がいて、普通の人は近付く事も出来ないのよ。あっちの方に人が住んでいるなんて聞いたことがないわ」


 なるほど、あの辺りはそんなに恐ろしい所だったのか。そうか、そういう事ならあのカエルの強さも理解できる。でも、デーア母さんは、あの森は聖域だって言っていたんだけど、なんで魔性の森とか言われているんだろう?


「そんなに森の近くじゃないから……じゃあ、もう行くね。犬は持って行っても良い?」


「ちょっと待って、足が竦んで動けないの。もう少しだけここにいて」


 たはは、腰抜かしちゃったんだね……仕方ない。


「ちょっとごめんね」


「きゃっ」


 僕は腰を抜かしている中高生くらいの女の子をお姫様抱っこの要領で抱える。


「君は歩ける?」


「うん、大丈夫だよ。ファーマは力持ちだねー」


「そ、そうだね。鍛えているからね」


 少し驚かせてしまったようだ。鍛えているで、納得してくれたかな?



 2人を連れて森を抜け、リヤカーの側で待ってもらい、倒した犬を回収してから町の方に向かった。また、食料ゲットだ。


 町に向かいながら2人と話をして少し情報を得た。向かっている町の名前はグラダの町、人口は凡そ3万人。2人は、あの町に住む姉妹で、姉がリリ16才、妹がミミ6才。さっきの森には仕事を紹介してくれるジョブギルドという斡旋所の仕事で、薬草を採りに来ていたという事だ。


 斡旋所があるのか、良い情報を聞いた。仕事を探すのに困ることはなさそうだ。





 町に着くと、入り口の門で、守衛さんに止められる。


「おう、リリにミミ、今日の成果はどうだ?」


「ぜーんぜんダメ。マッドドッグに邪魔されて殆ど成果なしだったわ。生きていただけ良かったけどね」


「ファーマに助けてもらったの」


「なにっ! マッドドッグが出たのか? お前らだけで、よく無事だったな」


「うん、ファーマがやっつけたの。とーっても強いんだよ」


 ミミがとても嬉しそうに守衛さんに話をしている。相手が弱かっただけなんだけどね。


「ところで、そのファーマっていうのは誰なんだ?」


「この子。ファーマだよ」


 ミミが僕の服の裾をひっぱって紹介すると、守衛さんは、僕をみながら怪しむような表情をみせている。


「こいつがファーマ?」


「うん」


「いやいや、なんの冗談だ。こんな子供にマッドドッグが倒せるわけねぇだろ?」


 まあ、信じないよね。僕、見た目は7才の子供だし・・・・・・


「うそじゃないよー」


「解った、解った、信じるから。坊主、ありがとな2人を助けてくれて」


 おおっ、大人な対応だ。たぶん信じてないのだろうけど。


「あ、いえ、当然の事をしただけですから……もう、町に入っても大丈夫ですか?」


「お前、町の人間じゃないよな? 悪いけど、ちょっとした荷物検査と犯罪歴を調べさせてもらうぞ。それが済んだら入町税を払ってもらえば入れるぞ」


「ええっ!? 僕、お金持ってないです」


「マジか? 何か売れるものがあれば、俺達が町で売ってきてやるが、何かあるか?」


 売れる物? そう言われても、カエルの肉と、さっきの犬……そうだ。あの水結晶って石があったな。


「さっきのマッドドッグを売れば良いじゃない。魔法石も取ってないし、そこそこの値段で売れるはずよ」


 僕が、リュックから水結晶を取り出そうとリュックを下ろしていると、リリがリヤカーを指さして声をかけてきた。


「本当に倒してたんだな。凄ぇな、お前……」


 守衛さんはリヤカーの中を覗いて驚いている。


「いえ、上手く不意討が成功しただけですから。ところで、魔法石ってなんですか?」


「なんだ。魔法石を知らねぇのか? ちょっとこいつ捌くぞ」


 守衛さんはリヤカーからマッドドッグ1匹を取り出し、持っていたナイフで腹を切り裂き、小指の先ほどの茶色い石を取り出し見せてくれた。鑑定すると【地結晶(地の神力の結晶)】という事が解った。


「ほら、これが魔法石だ。これは土の魔法石だから、あまり高くは売れないが、金になるから内臓と一緒に捨てちまわねぇように気をつけな」


「はい、教えてくれてありがとうございます」


「礼は良い。それより、こいつ1匹で入町税には足りるから売っても良いよな?」


「はい、お願いします」


 マッドドッグを売りに行ってくれている間に、荷物検査と犯罪調査を済ませる。荷物検査は手作業で終わったのだけど犯罪調査というのが、水晶みたいな僕の頭くらいの大きさの丸い石を触って、幾つかの質問に答えるだけだった。嘘発見器のような物らしく嘘をつくと赤く光るらしい。問題はなかったので検問はパス出来た。


 守衛さんが戻ってきて、入町税を払った残り、銀貨1枚を貰う。この国の貨幣は銅貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨の5種で、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で小金貨1枚、小金貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で白金貨1枚になるらしい。通貨の単位はデニールというらしい。


 パン1つが銅貨1枚(1デニール)らしいから銅貨1枚が100円くらいになるのか? すると白金貨は1枚100万円くらいか……凄いな、もし手に入れられたとしても持ち歩くのは嫌だ。



 門を潜り抜けると、世界史の教科書で見たような、中世ヨーロッパ風な統一感ある建物が並び、どこか落ち着いた街並みが広がっていた。


 町に入った僕達。入って直ぐ、リリに勧められて、残りのマッドドッグを売り、銀貨4枚を手に入れ、今日は助けたお礼という事で、リリ達の家に泊めてもらう事になった。


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