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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第1章 グラダの町
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第7話 ファーマ君、魔法道具を買う

 ━━連休初日


 今日は1人で街に来た。リリとミミはまじめな働きぶりを買われ、農場から麦の植え付けシーズン中、期間契約を受け、暫くは忙しいそうだ。



 今日の1番の目的は、魔法道具屋。


 この町に商業区は3つある。1か所目は僕が雇ってもらっている服屋【デオドラン】がある一般庶民が買い物をする東の商業区、2か所目は冒険者や正騎士ギルドの中隊長クラス以下の騎士が利用する西の商業区、3か所目が、貴族や正騎士ギルドの大隊長クラス以上の騎士が利用する中央商業区。


 東の商業区はあまり収入の高くない人が主に利用する為、値段の高い魔法道具を売っている店はない。中央商業区は、大抵の物は探せば見つかるけど貴族階級の人が多く、一般庶民が行くと良い顔はされないから、みんな殆ど足を踏み入れる事はないそうだ。昨日、ワックスさんに「嫌な思いしたくなければ、ここにはいかない方がいい」と言われた。


 買い物に行く前に商業ギルドに寄って、ギルドカードの更新を行う。商業ギルドは銀行と似たような業務も行っていて、このカードは国内の商業ギルドならどこでも使える、銀行通帳やキャッシュカードと同じ役割も果たしているらしい。カードの更新は通帳記入の様なもので、更新しておくと預けているお金の残高や入出金の記録等を見る事が出来、希望すれば紙に転写して貰えるのだ。ギルド員にならなくても口座は作れるらしく、普通のキャッシュカードもあるらしい。


 で、更新して驚かされた。ワックスさんに事前に聞かされてはいたけど、残高が恐ろしい事になっている。まだ商品登録から1か月ほどなのに10万デニールを超えてるって……1%ってこんなに凄いんだな。いつ何があるか解らないから無駄使いはしないように気を付けよう。


 銀行……もとい商業ギルドを後にし、向かっているのは、西の商業区。


 西の商業区は、物は色々揃ってはいるけど、冒険者という仕事をしている人は、気性の激しい人達が多く、荒事が多いのだとか。そうそう子供に絡んでくる事はないだろうと、こっちに行くことを勧められた。


 徒歩だと結構時間がかかるな……自転車でもあれば早いのに。




 ━━西の商業区に着き、街並みを見ながら歩いた感じでは、ちょっと治安の悪そうな商店街? いや、飲食店街って、感じかな? 大通り沿いの看板は殆どが食事処か、お酒を出す店。路地に1歩入ると、如何わしい雰囲気の看板のお店が沢山あり、朝から薄着のお姉さんが客引きをしているのが、ちらほら見られる。


 ここに来て、1つ気が付いた事があった。最近、デオドランで売り出した新商品。ブレザーニーソセットを着ている人を発見したのだ。


 【酒】の看板が出ているお店で、給仕をしているから、たぶん従業員さんだろう。ドアの外からお店の中を見ていると、お酒や食事を運び終わって奥に戻っていく、従業員のお姉さんのスカートの中を覗き込もうとしているのか? 怖い顔したムキムキのおじさん達がテーブルに張り付くように低い体勢を取っている。


 うーむ、奇妙な光景だ。ここのお姉さん達も、うちの新作下着を愛用してくれているようだ。クマさんか、ウサギさんか、トラさんの……お買い上げありがとうございます。


 よく見れば、短パンニーソの人も、ちらほらいるようだ。なるほど、向こうの街で見かけないと思っていたら、こんなところで需要があったんだな。


 さて、少し寄り道してしまったけど、ワックスさんに教えてもらったお店はもう直ぐだ。


 書いてもらった地図の場所に行くと、煉瓦造りの大きなお店に到着した。店はデオドランとは比較にならない大きさだ。デオドランが個人商店なら、こっちはスーパーマーケットぐらいの差はある。看板には、【武具、魔法道具、旅のお供、ダンキー・ホテイ】と書いてある。


 惜しい、少し違ったら激〇の殿堂だったのに……


 店に入って最初にあったのは、アウトドアグッズのような物を売っている、たぶん旅のお供コーナー。テントや松明っぽい道具、大きなリュックにウエストポーチのような道具入れ、携帯食料なんていうのも売っていた。


 そこを通り過ぎて、次にあったのは兜、盾、鎧などの防具類コーナー、なぜか服も一緒に売っている。更に、そこを通り過ぎて階段を上がると、剣や槍、斧なんかの武器コーナー、その奥は鉄格子で仕切られている。


 鉄格子? なんでお店の中に鉄格子が?


 ここまで見た限り魔法道具は置いてなかった。と、いう事は、あの鉄格子の向こうかな?


「すいません。魔法道具を見に来たんですけど、売り場はどこですか?」


 近くにいた従業員らしきおじさんを捕まえて尋ねてみた。


「魔法道具を探しているって? 金はあるのか? 結構高いぞ」


「足りるかどうかは判らないですけど、一応は持ってきました。足りれば買おうかと思っています」


 僕がそう言うと、おじさんは奥にいた1人の筋肉ムキムキの男性を呼び「魔法道具が見たいらしい。案内してやってくれ」と、ムキムキの人と交代した。


「あの、なんで交代したんですか?」


「ああ、魔法道具は高級品だからな。なにかあった時、どんな奴が相手でも対処できる人間を案内に付けるんだ。間違っても盗もうなんて考えるなよ。俺も子供を力ずくで抑えつけるなんて、やりたくないからな」


「なるほど、親切にありがとうございます。僕も怖い思いはしたくないので悪い事はしません」


「おう、良い心がけだ」


 ムキムキのおじさんの名前はギドラさん。3つ首の怪獣みたいな名前だ。


 ギドラさんに連れられて、鉄格子の向こう側へ行くと、まず置いてあったのは武具。また武具? と思っていたらどうやら特殊な性能の付いた魔法武具のようだ。魔法薬なんかも置いてある。


 その売り場を抜け、3階に上がると、やっと目的の魔法道具が置いてあるところにやってきた。


 とりあえず、色々見てみようと歩いていると……コンロがある。名前はコンロではないけど見た目は鍋が2つ置けるコンロ。値段は1000デニール……このコンロが10万円は高すぎないか?


 洗濯機もあった。大きさは色々あり、8㎏ぐらい洗えそうな2層式洗濯機が、5000デニール。それと、これはカメラか? ギドラさんが映像を保存して紙に転写する魔法道具だと言っていたのでカメラで間違いない。


 カメラ3500デニール、そして冷蔵庫(高さ1m、幅と奥行き50㎝ぐらい)4000デニール


 どれも型は古いけど前の世界にあった家電と殆ど同じ形をしている……これは、ひょっとして僕と同じように記憶を持ったまま転生した人が開発した物なのかな?


 神様が僕以外にも記憶を持ったまま転生した人もいるって言っていたし、他にも、この世界に転生した人が当然いるだろう。衣類や食文化があまり発展していないのはそういうのに興味がある人が転生していないのか、もしくは知識が無かったのか……ひょっとしたら他の国ならそっち系も発展しているのかも知れないな。また楽しみが増えたよ。

 

 説明を聞きながら1時間ほど見て回り、目的の商品売り場にやって来た。収納魔法道具だ。これは前にいた世界には存在しない魔法文明ならではの便利アイテム。生き物以外なら大抵の物を収納する事が出来る(死んでいるモノは物として認識される)。


 1番安いのがペンダント型。1つ3000デニール。見た目は5㎝四方の箱型の台に、1㎝程のひし形の無属性魔法石が1個はめ込まれ、それをチェーンで首からぶら下げるようにできている。収納できる量は馬車1台分くらいらしい。ギドラさんの話では値段が安くて購入しやすいけど、人込みで突然、チェーンをちぎられて盗まれたり、盗まれないように服の中やポケットに入れておいても、掏られる可能性が高いという。


 次に安いのがブレスレット型。1つ5000デニール。模様をあしらった金属板にひし形の1㎝程の無属性魔法石2個はめ込まれ、革のベルトで絞めて留めるようにできている。収納できる容量はシングルの宿1部屋分くらい。リリの話だと、宿のシングルの部屋は、リリ達と一緒に寝ている寝室と同じくらいだから、だいたい6畳間くらいか。これは、服の下に隠しておけばあまり目立たないし、掏られる心配はないけど、見つかると僕みたいな子供や、弱そうな人は路地裏に連れていかれて脅し盗られる可能性があるという事だ。この町大丈夫か?


 最後に1番高いのがボックス型。1つ1万デニール。1m四方の箱に5cm程のひし形の無属性魔法石がはめ込まれ、箱は綺麗に装飾されている。収納できる容量は宿のシングル3部屋分くらいらしい。持ち歩くには不便だけど容量はかなり大きい。荷運びをする人や商人以外には必要ないだろうということだ。因みに収納魔法道具の中に収納魔法道具を入れる事は出来ないらしい。それが出来たら殆ど無限にモノが運べるのに。


 僕が買うなら1択、ブレスレット型だね。目立ちにくいし、掏られる心配もない。万が一、強盗(カツアゲ)にあっても、僕なら力ずくで盗られる事はないだろうし。


「ギドラさん、これを買いたいんですけど」


「マジか? 金、大丈夫か?」


「はい、なんとか足りました」


 商品はガラスケースに保管されているので、自分で取り出すことは出来ない。ギドラさんが、身なりの良い店員さんを呼んでくれ、店員さんがケースの鍵を開ける。


「こちらで宜しいですか?」


「はい、お願いします」


 3人で、奥の部屋へ移動し、契約書を交わす。あとで揉めないように書面に残すようだ。僕も領収書を貰うつもりだったから丁度良かったよ。


 お金を確認し、同時に引き渡し、収納魔法道具の使い方を教わる。


 まず初めに、所有者登録をする。針を1本渡され、指の先を突いて血を出し、ブレスレットの裏にある承認紋に血を浸み込ませると生体登録が出来るらしく、これによって、他の人には使えないようになる。解除法もあるので完全に安心とは言えないらしいけど、盗まれてすぐに中身が抜かれる心配はないそうだ。


 物を収納する時は、このブレスレットから入れたい物の1m以内に近づき、それを意識して【ストラ】と唱える。入れた物を出したい時はブレスレットに手を当て【リ・ストラ】と唱えると、脳裏に収納魔法道具の中に入れている物が浮かび上がり、あとは出したい物を頭の中で選んで【デル・ストラ】と唱えると魔法道具の上にポンと現れるので手に取るだけ。ただし、出した時に受け損ねると、出したものが地面に落ちて壊れる恐れがあるから気をつけろという事だ。【リ・ストラ】で確認しなくても中に入っている物を自分で把握していれば【デル・ストラ】で任意の物を出せるらしい。


 この魔法道具は、身に着けていると、魔法石に魔力を溜める事が出来、外しても内蔵魔力が満タンあれば1週間は中身が出てくることは無いという事だ。しかし、魔法道具の魔力が切れてしまうと魔法石が砕け新しい魔法石を付けなければ使えなくなるらしい。使えなくなった時は、中身が全部放り出されるからあまり外して放置しておくのはお勧めできないという事だ。


 なるほど、充電式なのか。1日身に着けておけば充電は満タンになるようだし、切らさないように気を付けよう。


 とりあえず、モノは試しで、お金の入った袋(財布)を収納してみた。


〝ストラ〟おおっ、消えた。〝リ・ストラ〟おおっ、ちゃんと入っている物が分かる。〝デル・ストラ〟おおっ、ちゃんと出てきた。


 どうやら、袋に入れたまま収納すると出すときも袋のまま出てくるようだ。袋に入れていても中身が何かも解るようになっているし、かなり便利だな。買ってよかった。


 貴重品を収納魔法道具(ブレスレット)にしまい。契約室を出る。鉄格子の入り口まではギドラさんが送ってくれ、僕は店を出た。


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