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俺、冒険者!~無双スキルは平面魔法~(WEB版)  作者: みそたくあん
第14章∶非日常的日常編

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【コミカライズ公開記念SS】村長は斯く語りき

 コミカライズ連載開始記念SSです。

 主人公が四歳くらいの頃のお話です。


――――


「そんちょー、おはなしきかせてー」

「また来たのかビート」

「えへへへ」


 朝の仕事を終え、庭先の切り株に腰掛けてひと息入れていると、村で一番幼いビートがコロコロと転がるように駆けてきた。

 ビートはグレンの子だが、オレにもよく懐いてくれている。大抵の子供はオレを見ると怯えるんだがな。変わった子だ。

 ……生まれるはずだったオレの子も、生きていればこのくらいか。この子には健やかに育ってほしいものだ。


「今日は何の話が聞きたいんだ?」

「ん~とねぇ、ぼーけん! ぼーけんのおはなし!」

「ふっ、お前はいつもそれだな」

「えへへへ」


 ビートもオレの娘のジャスミンも、オレに話をせがむ時は決まって冒険者時代の話ばかりだ。ふたりとも冒険者に憧れているらしい。

 親としては嬉しくもある反面、将来のことを考えると些か不安でもある。危険な仕事だからな。


「あっ、それアタシも聞きたい! ズルいわよビート! アンタばっかり!」

「ジャスミンねえちゃん」


 等と考えていたからか、娘のジャスミンが家から叫びながら駆けてきた。

 我が娘ながら、この落ち着きの無さは心配になる。成長したら治まるのだろうか?


「それで、どんなことを聞きたいんだ?」

「さいしょ! なんでぼーけんしゃになろうとおもったの?」

「あっ! アタシもそれ!」


 ふむ、最初か。

 であれば、学園時代からだな。



 オレは王国北部、リュート海沿岸の貧乏子爵家の三男に生まれた。

 領地には塩の谷という、天然の塩が採れる資源の産地があったが、逆に言えばソレしか無かった。塩分の高い海では魚があまり獲れず、陸地では作物が育たなかった。

 塩を売って食料や日用品を買う。冬越しのための薪すら買う。

 全てを塩に依存している領地だった。


 産業がソレしかないから、裕福になろうとすれば採取量を増やすしかないわけだが、大量に塩が出回れば在庫がダブついて単価が下がり、結果的に儲けがなくなる。

 だから出荷制限をして価格調整をするわけだが、そうすると利益が薄くなる。おかげでいつまで経っても我が家は貧乏なままだった。


 それでも、王都の学園には通わせてもらえた。小なりと言えども、領地貴族である子爵家としての見栄だったのだろう。

 あるいは、学園で伝手を得て、自力で独立しろという意図があったのかもしれない。

 オレは長男ではなく、その予備である次男ですらなく、三男だからな。いずれ独立しなければならない未来は見えていた。

 それを見越した、親の最後の愛情だったのだと思う。有り難いことだ。

 まぁ、この辺りは語る必要はないだろう。学園生活の話からで問題ない。


 学生生活は平穏なものだった。

 同年代に王弟殿下と侯爵家次男がいる『当たり年』だったからな。派閥争いとは無縁だった。

 もっとも、どの派閥からも必要とされなかっただけかもしれない。


 成績は良かったと思う。

 座学も武術も常に学年上位だった。恵まれた頭と体に産んでくれた親に感謝だ。


 社交も悪くなかったと思う。

 学園の派閥は王弟派と侯爵家次男派に分かれていたが、オレはどちらにも属さず、それでいて敵対することもなく、上手く泳いでいたと思う。

 まぁ、王弟殿下とも侯爵家次男とも学年が違ったというのが一番大きかったかもな。


 そう、大きな問題はなかったのだ。些細な揉め事はいくつかあったが、深刻な問題になることはなかった。

 だから将来への不安もなかった。

 成績と人脈を維持していれば、いずれ騎士団に入って団長……は無理でも、大隊長で準男爵くらいの地位と爵位は得られたかもしれない。生まれのことを考えれば大出世だ。


 しかし、ふと思ってしまったのだ。

 そこが終着点だと。


 大戦争でもなければ、そこで手柄を立てなければ、それ以上はない。

 そして戦争というものは、すべからく不幸を撒き散らす。必ず大勢を不幸にする。

 誰かの不幸の上に積み上げた地位や名誉に何の意味がある?


 そう考えた時、オレの中から騎士という選択肢が消えた。

 思えば、それは若さ故の短絡だったのだろう。必ずしも騎士が誰かを不幸にするわけではないのだからな。


 しかしオレは騎士にはならず、冒険者への道を選んだ。

 そのことを後悔したことはない。


 冒険者は、決して尊敬される職業ではない。むしろ破落戸、ならず者と蔑まれることのほうが多いだろう。

 誰もが称賛するなどということはなく、その先には険しく厳しい道が待っているに違いない。実際、苦労は多かった。

 だがオレは冒険者を選んだ。


「つまり、どういうこと?」

「そうだな……言うなれば『正解を選ぶだけの人生に疑問を持った』ということなんだが……まぁ、分からんだろうな」


 そこまで話してふたりの様子を見る。

 ジャスミンは分かったようなそうでないような、疑問符を幾つも浮かべたような顔をしているが、ビートは眼をキラキラさせてオレを見ている。

 もしかして理解できたのか? だとしたら相当賢い子だな。できれば、その賢さでジャスミンを支えてくれると有り難い。


「そんちょーかっこいい! ぼくもおおきくなったらぼーけんしゃになる!」

「あっ、また! ズルいわよビート! アタシも冒険者になるんだから!」

「ははは。そうかそうか。将来が楽しみだな」


 あの時選んだ選択肢は、正解ではなかったかもしれない。

 しかし間違いではなかったと、今は確信している。


――――


ということで、本日よりコミカライズ連載開始です!

見てね!


https://fwcomicsalter.jp/comics/oreboukensya/


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書籍版全四巻発売中!

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よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
村長が貴族だって知るのは冒険者登録の時じゃなかったっけ?
コミック単話買っといたぞ ええやん
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