ナヤ
ナヤは森や風や草や水や全ての生きているもの、鳥やその他の動物、の息吹中で生まれた。
そしてそれらがナヤを祝福した。
みんなが彼女の声に応えた。
村は生きている全てのもの…
その精霊によって生かされていた。
季節の精霊もいた。
春の精霊は雪の中に小さな芽吹きを…
夏の精霊は豊かな水を…
秋の精霊は森の恵みを…
冬の精霊は春の精霊を育んだ…
この村はこうしてたくさんの命のおかげで、たくさんの命をつないできた。
ナヤはそんな村で生まれた。
幼いナヤ・アドは大地に耳を当てその声を聞いた。
大地の精霊は彼女に恵みの音を聞かせた。
命の水がまた一つ増えた。
風と雲の話し声を聞いた。
村は山の精霊に守られた。
彼女の祖母は呪術師だった。
このあたりの村々では一番だった。
その力は彼女の母にも受け継がれていた。
しかし、彼女の母は彼女を産んですぐに召された。彼女は祖母からたくさんのものを受け継いだ。
彼女は誇らしかった。
精霊は見えないが、確かにそこにいる。
それを呼び、なだめ、導くことができるのは、自分だけだと信じていた。
その力が、すべてを守れると、本気で思っていた。
しかし、彼女はどうしても足りないものがあった。
どれだけ呪術が使えても、死者を蘇られせることはできない。
いろんな精霊の声を聞いてもそれは叶わなかった。
少し大きくなると彼女はその足りないものを埋めようとし始めた。
「ナヤ…おいで…お前の気持ちはわかるが、それは精霊の力ではどうにもならないよ…」
祖母はそう言って、彼女に何度も諭した。
彼女は優しい祖母の言うことはわかっていた。
「でも、この世界と別の世界では死者ではないからね。そして、ある時、またこの世界に戻ってくる…だから、悲しむんではないよ…」
彼女の祖母は一帯の部族の呪術師の中でも抜きん出ていた。
他の村の呪術師も祖母に教えを請うほどだった。
祖母も彼女の中のなにかに気づいていた。
そのせいか、祖母は彼女を常にそばに置き全てを見せていた。
そのため、いつしか彼女の力は祖母と並ぶほどになっていた。
そんな頃、彼女はあるものに出会う。
ある日のこと村の戦士達が戦に出ていった。
そして戦利品として持ち帰った物のなかに、彼女が今までに見たことのないものを見つけた。
それは彼女にはなにかわからなかった。
大人達がしている話しを聞いて始めてそれがなんなのかがわかった。
戦士達は侵入者と戦った。
「ワザナカがやられた…また奴らはやってくるだろ…これで3度目だ…村が襲われたのは…」
毛皮などを求めて旧大陸からたくさんの人がやってきた。
最初は友好的だったが、より多くの毛皮を求めて彼等は勝手に野牛を狩りだした。
それに抵抗する部族、逆に便利な文明の道具を手に入れるため、手を結び、他の部族の土地に侵入する部族もいた。
今まで自然の恵みと共に、自然の営みの中で生きてきた人々には辛い時代がやってきていた。
旧大陸からの人々の中に魔術を使うものがいたのだ。
それの残したものだった。
彼女は衝撃を受けた。
同時に衝動も…
自分の知らない術がある…
侵入者の中にそれを使う者が。
もしかしたら…
外の世界に目を向けるには十分な出来事立った。
しかし、それが彼女の人生を変えることにもなる。




