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お気楽領主の楽しい領地防衛 〜生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に〜  作者: 赤池宗


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帰る前に

 人魚たちは何となくで僕たちの状況を察してくれ、静かに見守ってくれていた。そんな人魚たちに、ようやくディー達が気が付く。


「むむ!? この者たちは、ラダヴェスタ殿たちではありませんな!?」


「あ、本当だ!?」


「な、何者だ……!」


 今更感たっぷりにディーやアーブ、ロウが警戒して周囲を見回す。その様子を見て、人魚たちは慌てて距離を取った。


「おお、人魚か!?」


「本当にいるんですかい。吃驚でさぁ……」


 オルト達も同様に驚きの声を上げる。まぁ、こちらは警戒はあまりしていないようだが。


「皆、落ち着いてー」


 しくしく泣くカムシンの背中を撫でつつ、皆に声を掛ける。すると、ディーが僕の乗る船に気が付いた。


「……む? もしや、この者たちはヴァン様の?」


「そうそう」


「新たな部下でしたか」


「違うよ!」


 ディーはボケた。あまりにナチュラルにボケるものだから突っ込みがすごく普通になってしまった。いや、もしや本気で言っているのか。


 ディーの言葉を否定してから、船を岩がゴツゴツしている海岸に接岸してもらう。そして、皆を海岸に集めてから、改めてリルダ達の紹介をすることにした。


「えー、皆さん。彼らがこの海に住む人魚族のリルダさん達です! 海に落ちた僕たちを安全な砂浜まで運んでくれました! まさに、命の恩人!」


 海から顔だけ出すリルダ達に手のひらを向けて指し示し、そんな説明をする。それにディーやアーブは大袈裟に仰け反って驚愕し、声を上げた。


「な、なんと!」


 驚きの声を上げるディーやアーブを横目に、ロウは冷静に人魚たちを観察する。


「……まさか、伝説上の存在と言われる人魚を見ることが出来るとは」


 ロウがそう呟くと、オルト達が顔を見合わせる。


「なぁ。アプカルル達はオリハルコンを見つけられるし、人魚もすごい鉱石を持ってるんじゃないか?」


「お、それは興味ありやすね」


「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ」


 オルトとクサラの雑談に、プルリエルが半眼で文句を言った。その厳しめの言葉に「へい」とだけ返事をして黙る二人。


 そんな間の抜けた光景を見たお陰だろうか。人魚たちは少し警戒心を解いて近づいてきてくれた。


「……グランタ族の族長であるラルグス・ダチアだ」


 と、三十代ほどに見える男の人魚が名乗った。あ、アプカルルと違って苗字と名前が種族名と関係ないのか。成程。


 一人で納得しつつ、リルダの方を見る。結局、ファーストネームがリルダなのかウアンナなのか分からなかったが、とりあえずリルダは族長の娘ではなかったようだ。多分。


 そう思っていたら、ラルグスはリルダに手のひらを向けて紹介を続けた。


「彼女はウアンナ国の王女、リルダ・ウアンナ。この海で最も高貴な存在の一人だ」


「へ?」


 ラルグスの説明に、思わず間の抜けた声が出てしまう。今、なんと言った?


「え? お姫様なんですか?」


「……本当の人魚姫?」


 ティルとアルテが目を丸くしてリルダを見る。それに、パナメラも腕を組んで唸った。


「神話に出るような話じゃないか。我らを助けてくれたのは人魚姫だったとはな……この場合、唯一の男である少年の今後が気になるところだが」


 そう呟いて、パナメラが意味ありげな視線を向けてくる。それを完全にスルーして、ディー達に顔を向けた。


「……と、とりあえず、命を助けてもらった恩を返さないといけないから、海に棲む大型魔獣の撃退に協力しないといけないんだ。だから、すぐには帰れないかも」


 状況を簡単に説明する。それにディーは自分の胸を拳で叩いて大きく頷いた。


「おお! お任せくだされ! どんな魔獣であろうと必ず討伐してみせましょうぞ!」


 ディーが力強い返答をすると、アーブ達も剣を掲げて声を上げる。そして、ようやく落ち着いたカムシンが低い声で同意した。


「お任せください。ヴァン様の命を助けてくださった人魚の方々が困っておられるというなら、全力で魔獣を殺します」


「お、おお……カムシンがヤンデレっぽくなっちゃった……」


 いつになく殺気が溢れているカムシンに少し引きつつ、海岸の様子を確認した。海側は岩が多くて船の出入りが難しそうだが、桟橋を設置すればどうにかなるだろう。陸側はすぐ近くにまで木々が生えている為、もう少し開けた空間が欲しい。


「……よし。それじゃあ、ディー達の体力が回復したら、そこの木を伐採して開けた空間を作ろうか。ウッドブロックも作れるしね」


 そう告げると、ディーは大剣を肩に担ぐように持ち、口の端を上げた。


「それなら今から伐採しましょう! もう十分休んだので問題ありませんぞ! なぁ、お前たち!?」


 ディーが笑顔で信じられないことを言い出すと、ついさっき船から降りてきたばかりのアーブ達が顔を引き攣らせた。だが、カムシンはディーの真似をするように剣を肩に担ぎ、力強く頷く。


「はい!」


 殺意の波動に目覚めたカムシンはディーと同等の体力を得ているらしい。そんな二人が森に向かっていく後ろ姿を見て、アーブ達はげっそりした顔で後に続くのだった。


 ゾンビの行進みたいである。

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