人魚たち
今年もゴールデンウィークは連続投稿!ヾ(≧▽≦)ノ
※できる年は頑張ってますが、できない年は申し訳ありません( ;∀;)
連休ですが、良かったら是非読んでください!
アルテに呼ばれて振り返ると、海岸からすぐの海面に、無数の生首が……。
「ひゃあ、怖い!」
思わず悲鳴を上げてしまった。この海には船幽霊が出るのか。
「ふざけてる場合か、少年」
と、パナメラに窘められてしまった。背中をぺちりと叩かれて、仕方なく真面目モードになる。
海には明るい金髪の男女が大勢集まっていた。三十人はいるだろうか。よく見たら、一番手前にはリルダの姿もある。
「あ、リルダですね」
そう言って指差すと、三人も目を細めて顔を確認した。
「……もしかして、この島は神聖な場所で立ち入ったら……」
「いや、リルダが砂浜まで運んでくれたんだから大丈夫じゃない?」
「あ、そうですね」
ティルとそんな会話をして、今度はアルテが不安そうに口を開いた。
「では、なんの用事でしょう……」
化け物鯨を退治したとはいえ、どちらかというと助けられたのは僕達の方だ。ならば、恩返しというわけでもないだろう。
しかし、敵対する理由もない。まさか、人間が来たらしいぞと見学にきたわけではない筈だ。
お互い見合った状態で固まること一、二秒。こちらの方が我慢ができなくなってきた。
「えっと、何か用事ですかー?」
こちらから用件を聞いてみる。もし、化け物鯨の肉を譲ってほしいとかであれば、全て贈呈したいくらいである。
しかし、わざわざそんなことを聞きにきたわけではないだろう。
じっとリルダ達の様子を眺めながら返答を待つ。すると、中心にいた三人の男女が顔を見合わせて何か議論し、その後、揃ってこちらに顔を向けた。
「……人間よ」
「はい。あ、良かったらヴァン君と呼んでください」
男の人魚から呼ばれたが、名称の括りが広過ぎたので個人名で呼んで欲しいとお願いしてみる。それに、男は顎を引いて口を開いた。
「分かった。ヴァンクンよ」
「はーい! なんでしょう?」
若干ニュアンスに違和感はあったが、しっかり返事をしてみた。男は深く頷き返し、再び口を開く。
「ウィールを倒した者達がいると聞いた。そして、浜には確かに、燃え死んだウィールの姿があった。あれは、ヴァンクンらがやったのか」
「ウィールって、あの化け物鯨かな? 可愛い名前だけど」
男の発言に首を傾げてそう呟く。まぁ、燃え死んでいるものは他にいないか。そう思い直し、パナメラを指し示しながら答えた。
「どちらかというと、こちらのパナメラさんが犯人ですよー」
「犯人って、おい」
言い間違えたところ、パナメラから珍しい形式のツッコミが入った。意外にも引き出しが多くて驚く。
「いや、冗談ですやん」
「なんだ、その返事は」
腕を組み、ジト目で見つめられる。これ以上ふざけるのは危険だ。
すぐに視線を逸らし、リルダ達に目を向けた。先程の男の人魚と目が合う。
「なるほど。そこのパナメラサンという者がウィールを倒したか。確かに、強者の匂いがする」
男は深く頷いて納得した。強者の匂いがどんな匂いかは気になるが、今はスルーすべきか。
そんなことを悩んでいると、男は神妙な顔つきで口を開いた。
「……ならば、頼みがある。パナメラサンよ。この海に暴王が現れたのだ。どうにか、撃退に手を貸してもらいたい」
と、男は言った。
「暴王?」
「な、なんでしょう?」
「海に現れたというのなら、この前の大型魔獣ではないか? まだ何体もいると言っていたしな」
男の言葉にティルとアルテ、パナメラの順番でそれぞれ言葉を発する。しかし、化け物鯨のことはウィールと呼んでいたので、あれのことでは無いだろう。
個体の名称が無く、海に現れたというなら、恐らく海に現れた他の新しい大型の魔獣ということだと思われた。
「どうします? 海の中の大型の魔獣の撃退って難しそうですけど」
そう尋ねると、パナメラは眉根を寄せて唸った。
「……私は、出来ることならリルダへの恩義に応えたい。しかし、時間が掛かるかもしれん。少年。君が決めるが良い」
「え? 僕ですか?」
パナメラの発言に驚いて聞き返す。本心は借りを返したいというものだろうが、ディー達のことを気に掛けてくれているみたいである。
数秒ほど考えさせてもらい、自分が後悔しない選択をさせてもらうことにした。
「では、島の反対側に行きます」
そう告げると、パナメラは眉間に皺を作って頷いた。
「……そうだな。まずは、自分の部下達を第一にせねばな」
残念そうに答えるパナメラ。それにティルやアルテも複雑な顔になる。しかし、もちろんそれで終わりではない。
「人魚達に手伝ってもらえば、早く島の反対側に行けるでしょ? そしたら、ディー達と合流出来るかもしれません。その状態で、魔獣を撃退するのが一番確実じゃないかと……」
そう告げると、パナメラは目を瞬かせてから口の端を上げた。
「それは、そうだな。少年。大正解だぞ」
パナメラは歯を見せて笑い、そう口にしたのだった。




