化け物鯨の脅威
予想は悪い意味で正解だったのか。化け物鯨はエラ呼吸ではなく肺呼吸のようだ。なにせ、もう二、三分以上地上に留まって暴れている。ログハウスはかなり頑丈に作ったが、それでも化け物鯨の尾びれや胴体で何度も激しい衝撃を受け、徐々に形を変えてしまっていた。綺麗な箱の状態なら頑丈だが、斜めに崩れてきてしまった状態では、その強度は維持できない。
ログハウスが軋み、じわじわと崩れていく中、アルテとティルは涙目で抱き合っていた。
「……少年。皆を守っておいてくれ。私が一人で出て、あいつを森側に誘導する」
「え? それは危険ですよ。あのデカさですし、裏口を作っても運が悪ければ踏み潰されます。魔術を使う時間もないですし……」
そう言って、ログハウスが傾いて出来た隙間から化け物鯨を見上げる。動きは予測し難く、範囲が異常に広い。飛び上がらずに尾びれを振るという動きをすることもあったが、大きな木々が爪楊枝のようにへし折れていた。はっきり言って、中型のドラゴンの体当たりくらいの威力あると思われる。つまり、ディーとアーブ、ロウが三人がかりでも吹き飛ばされた一撃だ。
どうにか打開できないかとパナメラが魔術で攻撃しようとしたが、安全を最優先してログハウスに窓などを作っていなかったので、どうにもタイミングを計りかねていた。魔術を使うなら、少しでもログハウスから出て実行しなくてはならない。
そんな経緯から、ログハウスからの脱出もどうやって行うべきかと考えている状況だ。
しかし、パナメラはだんだんと近くなっている天井を見上げて、首を左右に振る。
「僅かな時間でここまで崩されてしまっている。もういつ壊れてもおかしくない状況だ。皆で出る方が危険だろうからな。私が一人で出て、あいつの目に剣を投げつけてやるさ」
肩を竦めてパナメラはそう告げると、剣を片手に振ってみせた。パナメラがやると言ったなら、必ず化け物鯨の注意を引いてみせるだろう。しかし、それでパナメラが生き残るかは五分五分といったところだと思っている。
「それは危ないですね。それなら、僕が何とかします。僕ならギリギリでウッドブロックの壁を作って耐えられるかもしれないし」
珍しくパナメラの意見を否定して強く進言した。それにパナメラは一瞬目を丸くしていたが、すぐに噴き出すように笑って僕の頭を撫でた。
「立派な騎士じゃないか。だが、私の見立てではそれも危険だ。先ほどは何とか助かったが、当たり方によっては全員潰れてしまっていたかもしれないだろう? まぁ、安心しろ、少年。同盟を結んだパナメラ・カレラ・カイエン伯爵がどれだけ頼りになるかみせてやろうじゃないか」
パナメラは不敵な笑みでそう言うと、ログハウスの玄関へと向かっていった。その自信に溢れた背中を見るとどうにかなりそうだと思えるが、実際には厳しい筈だ。なにせ、目の前には大型船……いや、何なら学校の校舎くらいの化け物鯨が大地を揺らしながら暴れているのだ。それも、ログハウスを標的にしている。本当に運勝負である。
どうにか出来ないかと必死に頭を巡らせるが考えがまとまらない。アルテの人形も相手が大き過ぎて効果が薄いだろう。せめて、ミスリルで作ることが出来たなら……いや、そうするとアルテの魔力が足りない。
装甲馬車を作る時間など、勿論無い。これは、本当にまずいことになった。悩んでいる間にも、パナメラは外へ出ようとしている。
そう思った時、アルテとティルがこちらに向かってきた。
「あ、あの……」
「どうしたの?」
声を掛けられて、少し余裕がない状態で返事をしてしまう。その空気を察してしまったのか、アルテが少し緊張した面持ちになった。それを横目に見て、ティルが代わりに口を開く。
「ヴァン様。地下室って作れませんか? 地下なら、もしかしたら潰されずに済むかも……」
ティルにそう言われて、思わず「あ!」と大きな声を上げてしまう。
「シェルター! なるほど、それがあった!」
何故、こんな簡単なことが思い浮かばなかったのか。いや、普通はその場でシェルターなんて作れないのだが、今の僕にはそれが出来るのだ。
「パナメラさん! 戻って! 生き残れます!」
「お、おお……! なんだ? 何をするつもりだ?」
声を掛けるとパナメラが素直に従ってくれた。良かった。外に飛び出す寸前だった。
「皆、僕の周りに!」
「は、はい!」
声を掛けると、三人がすぐ傍に集まる。それを確認して床にしゃがみ込み、床と柱に使っていたウッドブロックを一気に変形させていく。地中の土や石を左右の壁を補強する為に使い、空いた隙間にウッドブロックで床や壁を作って簡易的な地下室を作っていった。
「じ、時間が無い……!」
深さは一メートル半程度。だが、それでも地下は地下だ。天井からは崩壊に結び付きそうな激しい音が鳴り響き、反射的に地下室の中に入って天井を作った。
視界が全て暗闇に染まった直後、天井越しに何か重く、大きなものが落下する音が連続して響き続けたのだった。
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