【別視点】 部下の奔走
【トリブート】
船が戻り、トリブートで待っていた者たちは事態を知って驚愕した。
「な、なんと……!」
報告を一番に聞いたロッソが目を見開いて驚きの声を上げ、ディー達の様子を見て眉根を寄せる。何かを言おうとしたが、憔悴しきった様子のディー達に掛ける言葉もないといった表情である。
そこへ、ハベルやオルト達も駆けつけてきた。他の騎士から話を聞いて、ヴァン不在の船を見上げて動揺する。
「な、なんだと!? ヴァン様が海に……!」
「ま、魔獣対策はしてたんじゃなかったのか!?」
ハベルとオルトがそう口にすると、クサラと船の調査をしたロウが意気消沈した顔つきで答える。
「……分からない。実際、大型の魔獣が現れるまでは一切魔獣の姿はなかったんだ。それに、魔獣は船にぶつかってからはどこかに行ってしまった……もしかしたら、対策に抜けている部分があったのかもしれない……」
ロウのその言葉に、クサラとプルリエルが反応する。
「う、海の中は探したんですかい?」
「……アルテ様の人形なら水中の魔獣相手でもなんとかなったんじゃ……」
不安そうな二人の言葉にロウは何も答えることが出来なかった。実際に現場にいた者しか分からないだろうが、巨大な船の船首が空に向くほど大きく傾けられたのだ。船の中心の方にいたディー達には何も出来なかったし、海に投げ出されたヴァン達が何かをしたのかも分からなかった。
一方、目の前で四人が落ちる光景を目にしたカムシンは、まるで長い期間大病を患っていたかのようにやつれてしまっていた。これにはパナメラの騎士団の騎士達ですら、沈痛な表情で何も言えなくなってしまっている。
それでも、海から戻ったディーはカムシンに多くのことを聞き、心を鬼にして現状把握に努めた。それがカムシンの心を深く抉る行為だということは理解していた為、それ以上カムシンに声を掛けることはしなかったのだ。
ディー達はしばらくその海域に留まって捜索を続けたが、どれだけ探してもヴァン達を発見することは出来なかった。トリブートに戻るという決断をした時、その指示を出したディーを皆が複雑な表情で見た。しかし、ディーの鬼気迫る表情を見て、反対する者はいなかった。
「ぱ、パナメラ様は……!? パナメラ様も海に!?」
パナメラの騎士団も激しく動揺し、非難するような声が上がった。しかし、ディーが頭を下げて船で起きたことを話すと、それ以上何かを言うことは出来なくなった。誰もが、海上での極限状況など経験していないのだ。
「ロッソ卿。我らはヴァン様の無事を信じております。海岸には海から多くの物が漂着するはず……申し訳ありませんが、捜索隊を組織していただきたい」
ディーは有無を言わさぬ様子でロッソにそう頼む。上級貴族相手に失礼な態度であったかもしれない。しかし、ロッソは真剣な顔でその提案を受け入れた。
「分かっておる。また、近海だけとなるが船も出して捜索しよう。ディー殿たちはどうするつもりだ?」
ロッソがそう尋ねると、ディーは拳を強く握って口を開く。
「我々は航海の準備を整え、もう一度海に出ます」
その言葉に、ロッソはディーの部下たちへ視線を向ける。誰もが疲労困憊だろうと思ったのだが、アーブやロウ、そしてカムシンの表情を見て、短く息を吐いた。
「……捜索には条件がある。我が部下も乗船するのだ。悪いが、一か所に留まらずに動き続け、魔力が尽きる前にトリブートへ戻ってきてもらいたい。その代わり、風の魔術を使える者を二人預けよう」
ロッソがそう言うと、カムシンが眉を八の字にして口を開く。それに気が付いたのか、アーブが手を出してカムシンの発言を阻止した。
そして、ディーが深く頭を下げて答える。
「ありがたい……この御恩は、必ずお返しいたしますぞ」
「……うむ。それでは、準備を手伝おう。貴公らは一度宿で休まれよ。心は休まらんかもしれんが、少しでも体を休めねば捜索も出来ん」
ロッソが強くそう告げると、ディーは顔を上げて口を開いた。
「感謝いたします。お言葉に甘えて一度休みましょう。出来るなら、日の出前には船を出したいと思っております」
「……ならば、十時間後だな。準備は任せておくが良い」
「はっ! それでは、失礼いたします」
ロッソの言葉を噛み締めるようにして聞き、ディーは皆を連れて町の方へ移動していく。ロウに背中を支えられるように移動するカムシンの姿は痛々しく、ロッソも沈痛な面持ちで見送った。
「……まさか、このような事態になるとは」
試作船の初航海。最初はヴァンもパナメラも乗船する予定は無かった。だが、ドワーフの鍛冶師とアプカルルの存在もあり、どこか楽観的な空気が流れてしまったのも事実だ。それに、ヴァンは航海中に何かあったら大変だと自ら船に乗船していた。どちらにせよ、止めることは難しかっただろう。
そこまで考えて、ロッソはふと重要なことを思い出す。
「……そうだ、アプカルル。伝説の種族と言われる彼ならば、海の中でも問題なく捜索できるのではないか」
ロッソがそう口にすると、海の方から低い声が聞こえてきた。
「私は海の知識がない。一人で捜索することは難しいだろう」
その声に視線を向けると、海の浅い場所にラダヴェスタの姿があった。その言葉に、ロッソは眉間に皺を寄せて唸る。ラダヴェスタの言いたいことも分かるが、少しでも可能性を高めることが出来るなら、という感情だった。
だが、次にラダヴェスタが発した言葉を聞き、ロッソはまた別の感情を抱くこととなる。
「……事前に、海の仲間に声はかけておいたが、どうなっただろうか……」
ラダヴェスタはそう口にすると、沖を振り返って目を細めたのだった。
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