第17話 断罪の舞台と予期せぬ「弁護」 -4
国王が玉座から立ち上がり、厳かに判決を告げた。彼の表情は、先ほどの怒りとは打って変わり、深い感銘と、そしてわずかな畏敬の念が混じっていた。
「アメリア・オルテンシア。貴様の行いは、我々が見誤っておった。
まことに申し訳ない」
国王の言葉に、謁見の間に再びどよめきが走る。
(え、え、え!?国王様が私に謝ってる!?
なん、だと……!?
私の人生、ゲームから完全に逸脱してるどころか、常識すら逸脱してるんですけどぉぉお!)
アメリアは、もはや現実を受け止めきれず、呆然と立ち尽くしていた。
「貴様は、この国の腐敗を一掃し、新たな時代を築くために、あえて悪役を演じたのだな。その冷徹な決断力と、深遠なる知謀。そして、民を思う慈悲深さ……」
国王は、アメリアをじっと見つめ、深く、深く頷いた。
「よって、貴様を断罪するどころか……この国を陰から支える、『影の女王』の地位を与える!
これは、貴様がこの国に与えた偉大なる功績への、正当なる評価である!」
(影の女王!?
何それ!?新しい役職!?
しかも影から国を支えるって、完全に裏ボスじゃん!
私の人生、完全にゲームから逸脱してる!
いや、逸脱どころか、もう別のゲームが始まってるぅぅうう!)
アメリアの頭の中では、警鐘が鳴り響き、同時に、どこか遠い目になっていた。処刑ルートは回避できた。それは喜ばしい。しかし、その代償は、あまりにも大きすぎた。
「さあ、我らの影の女王に、盛大な拍手を!」
国王の言葉と共に、謁見の間は、アメリアへの割れんばかりの歓声と拍手で包み込まれた。
謁見の間が、アメリアへの歓声と拍手で包まれる。貴族たちは、畏敬の念と、どこか媚びるような表情で、一斉にアメリアに頭を下げた。
「「影の女王」万歳!」
彼らの声が、アメリアの耳には、まるで遠い世界からの響きのように聞こえた。
(万歳じゃない!私の悪役としての人生が、これから本格的に始まるってこと!?
しかも、”影の女王”って……もう、この際、何でもいいや……)
アメリアは呆然と立ち尽くし、その顔には諦めと、ほんの少しの安堵、そして深い疲労が入り混じっていた。
メアリーが、アメリアの隣に立ち、満足げに囁いた。
「アメリア様……さすがでございます。
全て、アメリア様の御心のままでございます」
(メアリー……あなただけは、私の真意を分かってくれる……わけないか。
もう諦めたよ、私。あなたの忠誠心、歪みすぎだよ!)
エドワード王子が、アメリアの前に歩み寄り、その手を取り、熱い視線を送る。
「これで君は、完全に私のものだ、アメリア。君の知謀も、冷徹さも、全て私が受け止めよう。愛しているよ、私の女王」
(ああ、私の平穏な(処刑されない)人生は、どこへ行ったの……?
でも、死なないだけ、マシ……かな……?もう、疲れたよ、パトラッシュ……)
アメリアは、もはや現実を受け入れるしかなかった。彼女の「悪役令嬢」としての物語は、望まぬ形で、しかし確実に新たなステージへと突入したのだった。その顔には、どこか遠い目をした、複雑な笑みが浮かんでいた。




