第16話 断罪の舞台と予期せぬ「弁護」 -3
アーサーの弁護が終わると、玉座からエドワード王子が立ち上がり、アメリアの元へと歩み寄った。彼の顔には、熱烈な愛と、そして尋常ではない独占欲が浮かんでいる。
(エドワード王子!?あなたまで出てくるの!?
まさか、また私を独占しようとするんじゃないでしょうね!?
ていうか、こんな場で私に近づかないでぇ!貴族たちの目が痛い!)
アメリアは内心で悲鳴を上げた。エドワード王子はアメリアの前に立つと、その手を優しく、しかし確固たる力で握りしめた。
「アメリアの行いは、全て私のためだ!
彼女は、私にふさわしい国を築くため、ここまでしてくれたのだ!」
エドワード王子の言葉は、謁見の間に集まった貴族たちに衝撃を与えた。そしてアメリアは、もはや言葉を失っていた。
(えええ!?王子まで!?
私の善行が、全部あなたへの「愛の証」だって!?そんなわけないでしょ!
私はただ、処刑されないために必死だっただけなの!
私の行動が、こんなに都合よく解釈されるなんて、もう嫌ぁぁああ!)
アメリアの顔は、驚きと絶望で歪んでいた。エドワード王子は、アメリアの表情を、まるで「私のためを思って頑張ってくれた証」だと解釈しているようだった。
「この独占欲も、嫉妬も、全ては彼女が私を愛している証拠!
私は、その全てを受け入れる!アメリア!君こそが、私の唯一無二の存在だ!」
国王は、二人の間に流れる(と彼には見える)深い絆に感銘を受けているようだった。
「なんと、そこまで深い絆であったとは……」
エドワード王子は、貴族たちを睥睨するように見回すと、アメリアの手をさらに強く握りしめた。
「彼女は、私だけの王妃!誰にも渡さない!
アメリア!永遠に私の隣にいてくれ!」
(誰にも渡さないって言われても!私、あなたと結婚するなんて、ゲームではなかったことだし!
処刑ルート回避のために頑張ったのに、まさか結婚ルートに強制連行されるなんて聞いてない!私の人生、どこで間違ったのぉぉお!)
アメリアの頭の中は、もはや処理しきれない情報でパンク寸前だった。目の前で繰り広げられる「愛の告白」は、彼女にとって、新たな絶望の始まりでしかなかった。
エドワード王子の告白に、謁見の間は騒然としていた。
しかし、その騒めきを断ち切るかのように、宰相アレクシス・クロフォードが静かに前に進み出た。彼の口元にはいつもの不敵な笑みが浮かんでいる。
アメリアは、アレクシスの登場に最後の希望と、最大の絶望を感じていた。彼はアメリアの真意を見抜く唯一の存在かもしれない、と。しかし、彼のこれまでの言動を鑑みるに、それもまた、新たな誤解を生むに違いない。
「陛下。彼女の行いは、一見悪逆非道に見えます」
アレクシスは、貴族たちを見回しながら、ゆっくりと話し始めた。
「しかし、その全ては、この国の腐敗を一掃し、殿下を真の王とするための壮大な計画でした。
私ですら読み切れぬ、深遠なる知謀。
彼女こそが、この国の未来を担うべき人物です!」
(宰相!いやいや、計画なんてないから!
全部、善行が裏目に出ただけだから!お願いだから、これ以上、話を大きくしないで!)
アレクシスの言葉は、これまでの全ての証言とアメリアの行動を総合的に分析し、彼女が「国を救うための完璧な策士」だと結論付けた。
国王は、アレクシスの言葉に深く感銘を受けている。
「そこまでであったか……!」
(いやいやいやいや!計画なんてないから!
深遠なる知謀とか、完璧な策士とか、私、そんなんじゃないからぁぁあああ!
全部、善意が裏目に出ただけだから!
なんで誰も信じてくれないの!?
私の人生、コメディだけど、これは笑えないやつぅぅうう!)
アメリアは、もはや叫ぶことしかできなかった。彼女の魂の叫びは、しかし、謁見の間には届かない。宰相の「最終分析」は、アメリアの悪役としての評判を、完全に国家レベルの英雄へと昇華させてしまったのだ。
絶句して立ち尽くすアメリア。
次々と繰り出される誤解の弁護に、彼女の顔面は蒼白になり、体は激しく震えていた。目の前で起こっていることが、全く理解できない。
(パニック!パニック!パニック!パニック!パニック!
もう限界!何で誰も私の言葉を聞いてくれないの!?
どうして!どうしてなのよぉぉおおお!)
アメリアは、もはや意識が遠のきそうだった。
(私、処刑されるって覚悟決めてたのに、むしろ褒められてる!?
英雄視されてる!?
これは夢だわ!悪夢!
早く誰か起こしてぇぇええ!)
彼女の頭の中は、意味不明な言葉と感情の嵐で、完全に思考停止状態だった。
(助けて!誰も私の真意を理解してない!
これはもう、救いようがないわ!
まさか、処刑ルートを回避したら、最強悪役令嬢ルートに突入するなんて聞いてない!!
こんなハッピーエンド、望んでないぃぃい!)
アメリアは、心の底から叫んだ。だが、その叫びは、謁見の間を埋め尽くす貴族たちのざわめきと、彼女を称賛するような視線の中に、かき消されていくばかりだった。
(ああ、私の平穏な生活はどこへ……!
私の処刑される運命はどこへ行ったのよぉぉおおおおお!)
絶望と、もはや呆れ果てたような感情が、アメリアの心を支配していた。
ぜひご感想をお寄せください。
また評価とブックマークもしていただけると嬉しいです!!




