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ラブコメs日和  作者: 水無月盈虧


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25.おしくらまんじゅう

『20.日傘』の続きです

 十二月に入り、朝の気温がぐっと下がった。暑がりの僕にとっては、ようやく過ごしやすい季節だ。

 教室では、早くも男子たちが僕の周りに集まり始めていた。


「おー、○○、今日も暖かいな」


「カイロ代わりにちょっと触らせてくれよ」


 正直、面倒ではある。けれど、夏という地獄から解放された僕は、少し上機嫌だったため、あまり気にすることはなかった。


 ふと教室の対角線を見ると、彼女も似たような状況だった。女子たちに囲まれ、手を握られたり、肩に寄りかかられたりしている。のんびりとした笑顔で応じつつも、どこか困ったような表情が見えた。


 昼休み。体育館でイベントがあるらしく、クラス全員で移動することになった。


「寒いね〜」


 隣を歩く彼女が、白い息を吐きながらつぶやく。夏の日傘以来、こうして二人で歩くのが、いつの間にか自然になっていた。


「僕は平気だけど、□□さんは寒そうだね」


 制服がスカートだから、暑がりの彼女でもさすがに寒いのだろう。


「○○くんはいつも暖かそうで羨ましいよ〜」


 体育館に着くと、学年レクリエーションの準備が整っていた。冬らしく、「おしくらまんじゅう」をするらしい。


「えー、寒いのに体を動かすなんて」


「でも暖まるからいいじゃん」


 クラスメイトたちの声が飛び交う中、僕たちも輪の中に加わった。


「じゃあ、始めるよ〜! おしくらまんじゅう、押されて泣くな〜!」


 掛け声とともに、みんなが中央に向かって押し合いを始める。自然と彼女と僕は隣同士になり、周囲からの圧力で体が密着した。


「わわわ〜」


 彼女が小さく声を上げる。僕も押される勢いで、彼女に体重をかけてしまった。


「ごめん、□□さん」


「大丈夫だよ〜、むしろ暖かい〜」


 夏の日傘のときと同じように、彼女の匂いが届く。でも、冷たい冬の空気の中では、より鮮明に感じられた。石鹸の香りに、ほんのり甘い匂いが混じっている。


 押し合いの中で、僕たちは自然と支え合う形になった。彼女の手が僕の腕に触れ、肩にそっと頭が寄りかかる。


「あったか〜い」


 彼女が小さくつぶやいた。その声は、きっと僕だけに向けられたものだった。


「□□さんも暖かいよ」


 思わず漏れた本音。だけど運が良いのか悪いのか、彼女には聞こえていないようだった。


 おしくらまんじゅうが終わり、みんなが輪から離れていっても、僕たちはしばらくそのままでいた。


「ねぇ、○○くん」


「うん?」


「今度、一緒にお散歩でもしない? 寒いから、手でもつなごうか〜」


 いつもののんびりとした口調だったが、その言葉に僕の心臓は跳ね上がる。


「それは、その……」


「だめかな〜?」


 少し不安そうな顔を見て、僕は慌てて首を振った。


「だめじゃないよ。むしろ、僕の方からお願いしたかった」


「えへへ〜、じゃあ今度の日曜日はどう?」


 彼女の笑顔が、体育館の冷たい空気をふんわりと溶かしていくようだった。


 おしくらまんじゅうで始まった冬の午後は、僕たちにとって特別な時間となった。


 暑い夏から始まった小さな出来事が、寒い冬にこんな展開を迎えるなんて、人生は本当にわからない。


 きっと僕たちは、お互いにとって一番のカイロになれる——そんな予感がしていた。


いつもお読みいただきありがとうございます!!

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