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ラブコメs日和  作者: 水無月盈虧


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24/60

24.テスト

 国語だけは得意な、どこにでもいる高校2年の僕。


 それ以外は平均的な成績で、特に目立つこともなく、平凡な高校生活を送っていた。けれど、それが嫌なわけじゃない。


 ほどほどに楽しく、ほどほどに満ち足りていた——今日までは。


「今日からクラスに、新しい仲間が加わるぞ!」


 ホームルームで担任の先生がそう告げると、教室がざわめき始めた。僕も友人と顔を見合わせ、どんな転校生だろうと小声で話す。


 ガラガラと扉が開き、現れたのは、腰まで届く黒髪の、クールな雰囲気の女の子だった。


 彼女は必要最低限の挨拶だけを口にする。


「……□□、よろしく」


 その日から、一ヶ月が経った。


 期末テストがやってくる。□□さんにとっては、この学校で初めての試験だ。


 僕は相変わらず国語には自信があるが、他の教科は「そこそこ」で構わないと思っていた。


 一方、□□さんは毎日、遅くまで図書館で勉強しているのを見かける。真面目なんだな、と思うだけで、特に話しかけることもなかった。


 そしてテスト結果の発表日。


 掲示板の前に群がる生徒たちの中、僕はそっと自分の名前を探す。


 国語——1位。


 やった!心の中で静かにガッツポーズを決めた次の瞬間、総合順位の欄に目が止まった。


 総合1位は——□□さんだった。


 しかも、数学、英語、理科、社会。すべて1位。国語以外、完璧だった。


「すげぇな、□□」


 友人が感嘆の声を上げる。僕も同じ気持ちだった。


 たった一ヶ月で、ここまでの成績を取るなんて——。


 放課後。教室でひとり、国語の教科書を読んでいた僕の前に、□□さんが立った。


「……あの」


 彼女から話しかけられたのは、これが初めてだった。思わず顔を上げる。


「国語、すごいね」


「あ、ありがとう。でも□□さんこそ、他の教科全部1位じゃないか。ほんとにすごいよ」


「……でも、国語だけは勝てなかった」


 その顔は、いつも通りクールだったけど、ほんの少し悔しそうにも見えた。


「国語って……どうやって勉強してるの?」


「えっと……」


 僕は少し考えてから答える。


「特別なことはしてないよ。しいて言うなら、ライトノベルをよく読んでるね。それで語彙とか読解力がついたのかも?」


「ライトノベル……?」


 □□さんが小さく首をかしげる。


「あ、知らない? こういうやつ」


 鞄から一冊の本を取り出し、彼女に見せる。


「気軽に読める小説って感じ。アニメっぽいイラストの表紙がついてて、内容も分かりやすいんだ」


 □□さんはじっとその表紙を見つめる。


「面白いの?」


「うん。すごく。もしよかったら、貸してあげようか?」


「……お願いします」


 ──それから。


 僕たちは昼休みや放課後、図書館の隅っこで並んで本を読むようになった。


 最初は無表情だった□□さんも、物語の展開に驚いたり、キャラについて質問したりするうちに、少しずつ表情が柔らかくなっていった。


「この主人公、最初は頼りないと思ったけど……だんだん、かっこよくなってきた」


「でしょ? この作者さんは、キャラの成長を描くのが本当にうまいんだ」


 □□さんが、ふっと微笑む。


 その笑顔を見た瞬間。


 僕の心臓が、少しだけ速く鼓動を打った。


 ——平凡だった僕の高校生活に、小さな変化が訪れていた。



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