24.テスト
国語だけは得意な、どこにでもいる高校2年の僕。
それ以外は平均的な成績で、特に目立つこともなく、平凡な高校生活を送っていた。けれど、それが嫌なわけじゃない。
ほどほどに楽しく、ほどほどに満ち足りていた——今日までは。
「今日からクラスに、新しい仲間が加わるぞ!」
ホームルームで担任の先生がそう告げると、教室がざわめき始めた。僕も友人と顔を見合わせ、どんな転校生だろうと小声で話す。
ガラガラと扉が開き、現れたのは、腰まで届く黒髪の、クールな雰囲気の女の子だった。
彼女は必要最低限の挨拶だけを口にする。
「……□□、よろしく」
その日から、一ヶ月が経った。
期末テストがやってくる。□□さんにとっては、この学校で初めての試験だ。
僕は相変わらず国語には自信があるが、他の教科は「そこそこ」で構わないと思っていた。
一方、□□さんは毎日、遅くまで図書館で勉強しているのを見かける。真面目なんだな、と思うだけで、特に話しかけることもなかった。
そしてテスト結果の発表日。
掲示板の前に群がる生徒たちの中、僕はそっと自分の名前を探す。
国語——1位。
やった!心の中で静かにガッツポーズを決めた次の瞬間、総合順位の欄に目が止まった。
総合1位は——□□さんだった。
しかも、数学、英語、理科、社会。すべて1位。国語以外、完璧だった。
「すげぇな、□□」
友人が感嘆の声を上げる。僕も同じ気持ちだった。
たった一ヶ月で、ここまでの成績を取るなんて——。
放課後。教室でひとり、国語の教科書を読んでいた僕の前に、□□さんが立った。
「……あの」
彼女から話しかけられたのは、これが初めてだった。思わず顔を上げる。
「国語、すごいね」
「あ、ありがとう。でも□□さんこそ、他の教科全部1位じゃないか。ほんとにすごいよ」
「……でも、国語だけは勝てなかった」
その顔は、いつも通りクールだったけど、ほんの少し悔しそうにも見えた。
「国語って……どうやって勉強してるの?」
「えっと……」
僕は少し考えてから答える。
「特別なことはしてないよ。しいて言うなら、ライトノベルをよく読んでるね。それで語彙とか読解力がついたのかも?」
「ライトノベル……?」
□□さんが小さく首をかしげる。
「あ、知らない? こういうやつ」
鞄から一冊の本を取り出し、彼女に見せる。
「気軽に読める小説って感じ。アニメっぽいイラストの表紙がついてて、内容も分かりやすいんだ」
□□さんはじっとその表紙を見つめる。
「面白いの?」
「うん。すごく。もしよかったら、貸してあげようか?」
「……お願いします」
──それから。
僕たちは昼休みや放課後、図書館の隅っこで並んで本を読むようになった。
最初は無表情だった□□さんも、物語の展開に驚いたり、キャラについて質問したりするうちに、少しずつ表情が柔らかくなっていった。
「この主人公、最初は頼りないと思ったけど……だんだん、かっこよくなってきた」
「でしょ? この作者さんは、キャラの成長を描くのが本当にうまいんだ」
□□さんが、ふっと微笑む。
その笑顔を見た瞬間。
僕の心臓が、少しだけ速く鼓動を打った。
——平凡だった僕の高校生活に、小さな変化が訪れていた。
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