20
「ちょっと、『申の目』って、なんでそんなの持ってるんだよ!」
戦いを終えた南部とイネは、『富士山支部』の寮へ戻って来ていた。
テーブルには大きなお椀が置かれ、カボチャの身が崩れて黄色を帯びたスープに、平内の麺が広がっていた。
どんな状況だろうと地元の名産品を買って帰るというイネの意思は変わらないらしい。
箸で器用に麺を摘まむと美味しそうに口に頬張っていく。
「なんでって……。私が『申』と『回士』の間に生まれた子供だからに決まってるからじゃないの」
「でも、だからって……『申の目』なんて受け継がれるものなのか?」
「知らないわよ。受け継がれちゃってるんだから、しょうがないでしょ? それに、どうせ『目』だけだから、見えてても身体は付いてこないんだけどね」
南部に取っては驚きの事実でも、イネに取っては十数年付き合ってきた日常。人が食事を取るくらい当たり前になっていた。
音を立てずに器用に麺を胃に収めていく。勢いよく器を空にしたイネは、手を合わせ真っ直ぐに南部を見つめた。
「それよりも、あなたが、戦いにおいて迷いがないのは分かったわ。だから、私も迷わない。もし、次、ピンチに陥ることがあれば力を使う。それで――いいかしら?」
イネに取って『申の目』が当たり前であるように、南部に取っては『神成』を倒すために全力を尽くすことが当然であった。
南部は自分の前に器から麺を箸で掴んだ。
「ああ。俺の覚悟はこの麺よりも真っ直ぐ千切れることはないさ!」
瞳に力を込める南部に対して、イネの目からは力が抜けていた。
「あなたねぇ……。まあ、いいわ。麺が伸びちゃうから早く食べちゃいなさい」
「分かった!」
南部もまた、太く縮れた麺を美味しそうに頬張るのだった。




