組合長日和!ー人と獣と雷鳴とー
二話投稿しますって毎回言って実行できたのは一回だけ。
だが、明日こそはドフゥ…(((((((=====(`皿`)ガンジーパンチ
ヤバイ。画面越しに広がる惨状に目を疑う。先頭に立つ男は、ピクフィーを次々に蹴散らしていく。それも匹単位ではない。巣単位だ。
「ふん!」
大柄な体躯から放たれる一撃は、重く速い。こんなもの見せられれば嫌でもわかる。圧倒的に過去最大級の脅威だ。何だあれは。どっから湧いて出た。
ピクフィー相手にも油断なく構えるその佇まいにメイトが唸る。メイトでも勝つ見込みがないのかと聞くと、五分五分だと返された。
「二階層にも何が潜んでいるかわからない。警戒しておけよ!」
「はい!」
むむむ。未だ警戒心マックスか…。一階層で死ねば良かったのに…。
そんな甘い幻想を抱きつつ、その様子を観察する。
リーダーと思われる大男は大剣使いだ。その大柄な体格に負けない大きさの大剣を軽々と扱い、敵をなぎ倒していた。
その後ろには魔術師。俺はまだ魔法の原理を理解していないのだが、簡単にまとめると精霊という自然的法則に左右されない生物…というか物質を使って何かしらの現象を起こすのが魔法であり、精霊を使うのに必要なのが魔力という不可思議なものなわけだ。と、まあこんな説明しかできないほど理解していないのだ。
一番後ろに小さな女盗賊。これは盗む人というよりは隠密的な役割を果たす役割で、鍵のかかった扉などを開けたり気配を探ったりできるらしい。ダンジョン攻略には一人は欲しい人材だが、いつも引っ張りだこにされるので基本的にひとつのパーティーに留まるらしい。
そんなことを見ている間に2階層を突破されかけている。鍵を探しているようだが、盗賊がグレイモリュズを怪しんでいる。時間の問題だろう。
「では、そろそろ行くか。」
「おう、行ってらっしゃい。」
無事鍵を見つけたダンジョン旅行御一行様は、ついに三階へと足を伸ばしやがった。ちくしょう。
三階層は墓地だった。いや正確には墓地風か。今までここで死んだ冒険者の死体を墓に埋めてるのだ。メイトには死霊召喚と死霊指揮を使って大量の死霊をここに配置させている。ちなみに俺は絶対ここ行きたくない。疑似太陽が輝いていた一、二階層と違い、光源がない。冒険者たちはここをどう乗りき…
「『アーニア』」
うへーい。雷系魔法ですかーい。聞いてないぜー。ひゃっはー。そんなの反則ですやん。暗くて怖い上に、死霊が出てくるのが醍醐味なのに…。ん?でもこの人たちは死霊に慣れてそうだな。
一切、息を乱さずパーティーで死霊を倒していく姿を見てると、つい応援したくなる!って人もいそうだ。俺はとっとと死んでほしいのだが。そして彼らはついに…メイトのもとまで辿り着く。
そう、3階層の主はメイトである。
「よくぞここまで来た。褒めてやろう。しかし貴様らはここで死ぬ。この元剣王たる私ベルトにな!光栄に思うがいい!」
「ベルト…?剣…王?」
画面の先のメイトの言葉を聞き、思わず呟く。剣王ってなんだよ。剣の王様?達人ってこと?なんでそんな小洒落た言い方するんだ?思わずかっこいいと思ってしまったじゃないか!しかし戦いの結末が気になって、なんだか居ても立っても居られないな。
「おらぁぁああ!!」
合図は叫びと同時に放たれたリーダーの重い一撃だ。だがメイトはそれを受け流し、反撃を試みる。…が、後衛の魔術師が妨害してメイトの反撃は失敗に終わる。剣の軌道をそらされパーティーリーダーの頭をすれすれで通り過ぎる剣閃に怯えた様子もなく、リーダーは再び攻撃する。その後盗賊が絡め手を使ってメイトを縛ろうとするも避けられる。
まさに一進一退の攻防。強者と強者の戦いである。金属音が薄暗い闇に吸い込まれ、薄暗い闇から生まれるのは小さな橙色の花弁のみ。飛び込んでくる炎や電撃は、その圧に恐れをなしたかのように近づくことはない。二人は舞い踊るように剣戟を振るう。
時折襲ってくる死霊たちは、仲間がうまく処理していた。なるほど彼らが強いわけだ。彼らは驕らず、自分の役割を正しく認識していた。
それは突然現れた。とても些細な出来事である。そう。魔術師の内蔵総合魔力量がなくなり始めたのである。呪文の途中で魔力がつきかけているに気づき、魔術師はバッグに手を伸ばす。そして魔力瓶を取り出し、口に瓶の先を当てた。しかし…。
「ふん!」
その隙を見逃さずメイトは自らの剣を魔力瓶に投げつける。パリンっと子気味いい音がして地面にガラスと剣が落ちる音。だが、メイトの狙いはそこではない。魔術師の手に深い刺し傷ができたのだ。流石と言ったところか、彼女は何も言わず表情を少し歪めるだけで、ガラスを抜くことに成功した。
しかし、傷口に墓地の瘴気が容赦なく入り込もうとする。メイトの狙いとはこれである。状況を察した魔術師が、目に涙を浮かべ叫ぶ。
「嫌だ!死にたくない!助けて!組合長!助けて…。」
その直後見ていられなくなった盗賊が駆け寄って魔力瓶を飲ませ中和を試みるも…魔術師の目はすでに狂気に染まっていた。
近くに落ちていたメイトの剣で盗賊が刺し貫かれる。血を吐いて地に伏す盗賊の体に瘴気が襲いかかる。
瘴気にやられたものは、死霊となり生者を喰らう。狂気に染まった目は、はっきりとリーダーを見据えていた。
直後二人の頭が胴から離れる。剣の先にいたのは組合長。助かる見込みよりも生じる弊害を重視し、殺したのだろう。いい判断だ。そして。ついにメイトがもう一本隠し持っていた。剣を抜き出す。メイトはやる気充分と言っていいだろう。しかし…
「メイト。命令だ。帰還しろ。」
「了解。」
組合長の剣撃と同時、メイトの体は3階層から消え去った。
○○○
ついにメイトを倒したと思っているリーダーは体力を半分以上使っていた。しかしその手にあるのは達成感。そこでしばしのそのまま消えていったメイトを後にし、休憩の後、一人で四階層へと踏み込もうとしていた。
その時ある一室ではこんな会話がされていた。
「殺さなくてよかったのか?奴を。」
「なぁに。新しく呼び出したモンスターを試すにはいい機会だ。そもそもダンジョンモンスターと違ってお前は替えが効かないんだ。五分五分の戦いからはさっさと撤退するのがいい。」
「もう少しやりたかったがな。」
「この戦闘狂め…。」
もちろんこの会話の声の主は俺達である。
…さて新しく呼び出した二体にあいつはどう対応するかね?
○○○
休憩を終え、四階層へと続く階段を降りてしばらく行くとそこは大きな草原に木々が生えた、場所だった。…あいにく雨だが。
ここはいまのところこのダンジョンの最下層。常雨の階層である。いつも雷雨が降り注ぎ、地面はビショビショで足を取られる。ここには二体のモンスターしかいない。一体はウンデルド。雨の精霊だ。勝手に住み着いていた。魔物といっていいかは微妙である。そして二体目は二匹。
直後、リーダーの付近に雷が落ちる。驚いたリーダーだが、そこの中から現れた、漆黒に見を包んだ狼を見たときは、おそらく彼の人生の最高潮の驚きと、絶望感に包まれていたであろう。
直後、血だらけのリーダーを咥え、遠吠えをしたその魔物の正体は…
狼の四天王。雷鳴あるところに現れる、最強の一柱。
ヴェルフだった。
いやっほおおおおい。
ダンびよ。7話更新です。
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こんにちは。作者のた、んこです。
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頑張ったので是非感想とかいただけたらなって思…。