第5話 神獣討伐と素材の売買 -5
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10. 無意識の連携、神獣討伐
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リリアの言葉に、神獣が泥濘を嫌がっていることにフィーネとイリスが気づいた。ヒロインたちのバラバラな行動が、奇跡的な連携を生み出す。
「リリア!そこが弱点です!
みんな!あの泥濘に神獣を追い込むんです!
素材を傷つけないように、泥濘にハメ込む作戦に変更!」
フィーネは目を輝かせ、拡声の魔道具を使い、森中に指示を響かせた。
「なるほど! 神獣は特定の条件下で魔力を吸収する…
その際に水に触れると構造が不安定になる!
ルナ、あの情報はこのことだったのね! 素晴らしいデータだわ!」
イリスはルナの断片的な情報とリリアの発見を結びつけ、興奮気味に叫んだ。
「はい、承知しました。とりあえず、やってみます!」
エルミナは無表情で泥濘に破壊魔法を放ち、泥をさらに深くした。
「エルミナ、ナイス!」
アキナが叫んだ。
「よし!いくぞー!
泥濘にハメてやるぜ!」
アキナは高所恐怖症だが、リリアの言葉と目の前の泥濘を見て、神獣を泥濘へと追い込むように突進した。
「神聖な泥濘です!美しく輝きますね!
これで神獣も喜ぶはずです!」
セラは暴走した魔装具から聖なる光を放ち、泥濘を光らせる。
「〜♪泥濘にハマった神獣は〜、ポンコツ勇者アキナの突進を受け〜、ツンデレ令嬢リリアの助太刀で〜、かくして伝説は生まれた〜♪」
アリスはリュートをかき鳴らし、即興で歌い出した。
「アリスさん、ナイス歌!」
フィーネが叫んだ。
「へへん、だろ?」
アリスは得意げに胸を張った。
「みんな、息が合ってるじゃないか!」
アキナが興奮気味に声を上げる。
「まさか、こんな形で…」
リリアが呆れたように呟いた。
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11. 討伐完了、そして勝利の歌
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神獣は、泥濘に完全に足を取られ、身動きが取れなくなった。その隙に、アキナとリリアがとどめを刺す。神獣は静かに倒れ伏し、その体は無傷のままだ。
「よしっ!討伐完了!
素材も無傷!完璧です!
計算通り…いや、計算以上です!」
フィーネは、喜びのあまり声を震わせた。
「〜♪泥濘にハマった神獣は〜、ポンコツ勇者アキナの剣を受け〜、ツンデレ令嬢リリアの助太刀で〜、かくして伝説は生まれた〜!これぞ、七人のポンコツヒロインが織りなす奇跡の物語さ〜♪」
アリスはリュートをかき鳴らし、即興で歌い出した。
「ちょっと!適当なこと歌わないでくれるかしら!ツンデレ令嬢って何よ!」
リリアは顔を赤らめてアリスに文句を言う。
「なんだかよく分からないけど、かっこいいな、アリスの歌!」
アキナは満面の笑みでアリスの歌を称賛した。
「俺ももっと強くなって、伝説になるぜ!」
「無事…終わって…よかった…です…」
ルナは安堵した様子で小声で呟いた。
「この泥濘の魔力も、魔装具の材料になりますね!」
セラは目を輝かせながら、泥濘の魔力を解析しようとしている。
「美しい…破壊の痕跡…」
エルミナは無表情で神獣の残骸を見つめている。
「ふむ。この一連の事象は、カオス理論における予測不能な収束の典型例ね。論文にまとめなければ」
イリスは眼鏡をくいっと上げ、満足そうに呟いた。
「みんな、お疲れ様!」
フィーネが笑顔で声をかけた。
「やったー!」
アキナが飛び跳ねる。
「騒ぎすぎよ、アキナ」
リリアが呆れたように見つめる。
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12. ギルドでの収支報告とエルザの微笑み
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冒険者ギルドの受付カウンター。フィーネは、興奮気味に収支報告書をエルザに提出した。その手は、喜びと疲労で震えている。しかし、その喜びは長くは続かなかった。
「エルザさん!見てください!
神獣討伐、大成功です!」
フィーネは報告書を差し出した。
「素材も完璧に回収できましたし、計算したところ……まさかの大黒字です!」
彼女の声は、喜びで上ずっていた。
「ふふふ……ええ、そうでしょうね。まあ、想定内ですわ」
エルザは、書類を受け取り、ちらりと見て、完璧な笑顔を浮かべた。その瞳の奥には、すべてを見通すような冷徹な光が宿っている。
「まさか、こんな結果になるとは……!」
フィーネは信じられないといった表情で、目を丸くした。
「私の計画はあちこち破綻したはずなのに……!」
彼女の脳裏には、アキナの突進、エルミナの破壊魔法、セラの暴走する魔装具、そしてアリスの歌声が次々とフラッシュバックする。
「私の苦労は……!」
フィーネは、もはや叫び声に近い声を上げた。胃がキリキリと痛む。これまでの苦労が走馬灯のように駆け巡る。
「ええ、よく分かりますわ、フィーネ。本当に、大変でしたわね。
あなたの苦労は、この報告書からひしひしと伝わってきますわ」
エルザは、フィーネの言葉に優しく耳を傾けた。
「そうでしょう!?もう、胃がキリキリして…!
何が起こったのか、いまだに信じられません!」
フィーネは、涙目でエルザに訴える。
「ですが、その苦労が、これほどの成果を生んだのですもの。
常識では考えられないやり方で、ね。
だからこそ、あなたたちには、これからも期待していますわ」
エルザはそう言って、口元だけで微笑んだ。その言葉は、フィーネの心に深く突き刺さる。
(まったく、これだから問題児は手放せないわ。
おかげでギルドの評価も上がったし、わたくしの懐も潤ったわ。
さて、次の依頼は……)
エルザは心の中でそう呟いているようだった。その表情は、まるで計算通りに進んだチェスの局面を見つめるかのように冷静だった。
「〜♪七つの光が織りなす奇跡〜、ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は始まったばかりさ〜♪」
ギルドの奥から、アリスの歌声が響いてくる。彼女は、すでに今回の冒険を伝説として美化し、高らかに歌い上げていた。
フィーネは、その歌声を聞きながら、再び机に突っ伏した。
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