第3話 神獣討伐と素材の売買 -3
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5. 神獣の森へ
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神獣の森の入り口に、七人のヒロインたちが集まっていた。
朝日に照らされた木々は、まるで宝石のように輝き、神秘的な雰囲気を醸し出している。鳥のさえずりが響き、土と草の匂いが鼻腔をくすぐる。
しかし、その静寂の奥には、何か巨大な存在が潜んでいる気配が、肌を粟立たせた。
「よし、作戦開始!各自配置についたら、私の合図で動いてくださいね!」
フィーネが拡声の魔道具を使い、森中に響き渡るような大声で指示を出す。
「くれぐれも、勝手な行動は控えてください!
特に、アキナちゃん!」
しかし、その声は、アキナには届いていないようだった。
「おー!神獣退治、楽しみだぜ!
どんな奴が出てくるかな!」
アキナはフィーネの合図を待たずに、森に飛び込むように駆け出した。その背中からは、正義の炎が見えるようだ。
「ちょっ、アキナちゃん!
まだですーっ!」
フィーネの悲鳴が森に響く。
リリアは地図を逆さまに持ち、首をかしげながら、すでに迷子の兆候を見せていた。
「あれ…? この道、合ってるのかしら…。
さっきから同じ木が見えるような…」
「リリア、また迷子ですか!?」
フィーネが呆れたように声を上げた。
「な、なによ!
これは戦略的な迂回よ!」
リリアは顔を赤らめて言い返した。
セラは不思議な魔装具を頭につけて、足元がおぼつかない様子で歩いている。足元がもつれて、転びそうになる。
「この魔装具なら、精霊の声が聞こえるかもしれません…ゴロゴロ」
「あぶなっ!」
フィーネが思わず声を上げる。
「セラ様、大丈夫ですか?」
ルナが心配そうに、そっと手を差し伸べる。
「ありがとう、ルナ様!
この魔装具、ちょっと不安定で…」
セラは笑顔で答えた。フィーネは、それは魔装具のせいじゃないと思う、と喉から出そうな言葉を飲み込んだ。
イリスは肩で息をしながら、森の空気を吸い込む。
「はぁ…はぁ…全く、森の道は歩きにくいわね…。
ルナ、無理はしない方がいいわ。
あなたのデータは貴重なのだから。少し場所を移しましょうか」
イリスはルナに声をかける。
「森の…記憶…大量の…生物…そして…強い…魔力反応…危険…」
(情報過多でフリーズしかける)
ルナは地面の草に触れながら、小声でブツブツと呟いている。
「ルナの感知が反応してるわね。
この森、ただの森じゃないわ」
イリスが眼鏡をくいっと上げる。
「危険…ですか…」
ルナが不安そうにイリスを見上げる。
「へへん、みんな張り切ってるねぇ!
あたしの歌で、もっと盛り上げてやろうか?」
今回の依頼の元凶であるアリスはリュートを肩にかけ、余裕の表情で、みんなの様子を眺めている。
「アリスさん!歌はまだです!
余計な混乱を招かないでください!」
フィーネは、アリスに釘を刺す。
「え〜、つまんないの!」
アリスは不満げに口を尖らせた。しかし、アリスはすでにリュートを構え、指を弦に走らせていた。
「アリス、歌う気満々だな…」
フィーネは頭を抱えた。
「まあ、アリスの歌で、精霊も喜ぶかもしれませんね!」
セラが呑気に付け加える。
「精霊が喜んで、神獣が暴走したらどうするんですか!」
フィーネの悲鳴が、再び森に響き渡った。
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6. 作戦開始…のはずが
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森の奥深く、巨大な神獣が姿を現した。
その威容に、森の木々がざわめく。神獣は、彼女たちの存在に気づき、警戒の咆哮を上げる。その咆哮は、森全体を揺るがすほどだった。
「……っ、なんて、美しいのよ」
「わぁ……!魔力の輝きが、こんなにも純粋に……!」
「データが……こんなにも完璧に……これは、まさに真理ね」
「すげぇ……!これが神獣か!マジかよ!」
「記憶が……あまりにも……美しすぎて……フリーズしそう……」
「へへん、最高の舞台だぜ!こんなに美しい獲物、なかなかいないぜ!あたしの勘が騒ぐぜ!」
「破壊するのが惜しいくらいですね。しかし、任務は任務」
「来たわね!みんな、私の合図を待って……!『神獣捕獲用ネット展開』!」
フィーネの叫びは、神獣の咆哮にかき消された。その瞬間、ヒロインたちの暴走が始まった。
「見つけたぞ!悪しき獣め!
正義の剣を受けてみろ!いざ尋常に勝負!」
アキナが神獣へ向かって駆け出す。その剣の軌跡は流星のようだ。
「ちょ、アキナちゃん!まだですーっ!作戦は捕獲ですよーっ!」
「邪魔ですね。とりあえず……」
エルミナがアキナの突撃に合わせて、無表情で神獣の進路上に破壊魔法を放つ。轟音と共に土塊が舞い上がり、神獣の動きが一時的に止まる。
「エルミナちゃんもーっ!作戦がーっ!捕獲用ネットが使えなくなっちゃう!」
「なんてこと……!」
「フィーネ、落ち着きなさい!」
「落ち着いていられますか!計画が台無しです!」
フィーネは半泣きで叫んだ。
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