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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ 世界はゲームに変わり、僕は異世界へ行ける  作者: 二上たいら
第10章 抵抗は燃え上がる

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第694話 人は教えの素晴らしさにはついていかない

 仕事があるから、と僕とヴィクトルさんはヴィーシャさんの病室を退出し、掩蔽壕(バンカー)に戻った。


 明かりの点いたバンカーにはニーナちゃんの家族と、歩哨の米兵、それから軍服を着た米国軍人がいる。

 ニーナちゃんの家族とも話をしなければならないが、今は米国との契約書を確認しなければならない。

 案の定、軍服姿の男性は僕のところへとまっすぐにやってきた。


『ミスターヒグチ、こちらが国防総省(ペンタゴン)から届いた契約書の草案です』


 男性が持っているのは分厚い書類の束とUSBメモリだった。


『こちらをお渡しする前に秘密保持契約書(NDA)署名(サイン)をお願いします』


 別の書類の束が差し出されたけど、これも分厚いんだよなあ。


『後ろ半分は日本語に翻訳したものになります』


 翻訳してくれてるのはありがたいし、軽く見てみた感じちゃんとした日本語にはなってるんだけど、信じていいのかというと、そうでもないだろうなあ。


「ところで翻訳に間違いがあったとしても、有効なのは署名した英文の契約書になりますよね?」


『そうですね。その内容に同意したという意味での署名ですので』


 当然そうなるよね。

 となると、こちらでも確認作業が必要だ。


「ヴィクトルさん、申し訳ないですが翻訳のチェックをお願いしてもよろしいですか? 問題がなければ署名します」


「お安いご用だ、というには量が多いね」


「ここでは腰を落ち着けて作業もできませんしね。……僕らが利用できるワーキングスペースはありませんか?」


『それならオンライン会議を行ったあの部屋を提供できます』


 ガチガチに監視されてそうだけど、僕を重要施設に入れられないのだとすれば、他にいい場所はないだろうな。


 しかし簡単には終わらない量だ。

 緋美子さんたちがお風呂に行ったのをいいことに、横田基地に来たけれど、これ以上は引き延ばせないな。


「その前に僕は緋美子さんたちを回収しにアーリアへ行きます。ヴィーシャさんを救出するまでという約束で手伝ってもらったのを延長してもらっていますから」


「ではその間に軽く目を通しておくよ」


「お願いします」


 僕は[キャラクターデータコンバート]を使用してアーリアへと転移する。

 エインフィル邸の玄関ホールにはホカホカになった緋美子さん……の仲間の男性陣がいた。

 緋美子さんたち女性陣はすっかり準備を終えている。ホカホカしてない。


「すみません。遅くなりました。このお礼は必ず」


「ええ、期待していますね」


 実際、命をかけて戦ってもらったわけで、緋美子さんたちにはそれなりの報酬を考えなければならない。

 アメリカにしたように、魔石式処刑斧(エクセキューショナー)の存在を知れたからいいよね? とはならないだろう。


 緋美子さんのパーティは6人のフルメンバーなので、パーティ参加で転移に巻き込むのは二度手間になる。

 僕が差し出した手に全員で触れてもらう。試合前の円陣を組んでるみたいな図だ。

 そのまま[キャラクターデータコンバート]を使って横田基地のバンカーへと転移する。


「ではこれで。お礼は必ずしますので、米軍の指示に従ってください」


 まあ、自衛隊にバトンタッチされて、アセンディア研究会のところまで送っていく流れだろう。


「ちょっとお待ちください」


 完全に今日はお別れのつもりだった僕を引き留めたのは緋美子さんだ。


「私たちが救った女性にお会いしてみたいのですけれど」


 あー、気持ちはわかる。

 新興国への寄付なんかでも、現地の子どもたちからお礼の手紙が届くようなプログラムがあったはずだ。

 自分たちがした善行の結果を見てみたい、という欲求が人にはある。


「それはちょっと、ご遠慮願えると……。彼女は非常に傷付けられ、今も苦しんでいるんです」


「では私と氷守だけではいかがでしょう? 苦しんでいる人を放ってはおけません。私がなにか力になれるかもしれませんし」


 おっと、急に宗教家らしいのが来たな。


 そうだな、緋美子さんの[夢見]スキルをヴィーシャさんに使ってもらうのはどうだろうか?

 悲劇の回避に特化したスキルだというのなら、今までのことは救えなくとも、今後の悲劇を回避する一助になるかもしれない。


 でも緋美子さんは[夢見]スキルで食ってるプロみたいなもんだし、これは追加要求になっちゃうのかな? でも面会自体は緋美子さんの要求だし。

 いや、[夢見]を使ってくれるかどうかはわからないんだけど。


「[夢見]を使う、ということでいいですか?」


「それも一考の余地がありますね」


 ということは普通に言葉での励ましをするつもりだったのかな?


「宗教勧誘は無しです」


 僕がそう言うと緋美子さんは唇を尖らせた。


「アセンディア研究会は宗教ではないです……」


 でも日本にも学会を名乗る有名な宗教がありますよね。


「勧誘は無し、です」


「わかりました。元よりそのつもりはありません。その女性の助けになりたいだけですよ」


「宗教の勧誘ってみんなそう言うんだよなあ」


 あなたは幸せですか?

 というお約束のフレーズからもわかるとおり、宗教はあなたの助けになりたい。と言って懐に潜り込んでくる。

 これの厄介なところは、末端の勧誘に来る信者ってそのお題目を本気で信じているところだよね。

 本気だからこそ、その思いが伝わり『この人の言うことなら信じてみよう』という人が一定数出る、という仕組みだ。


 人は教えの高潔さに付いていくんじゃない。

 それを伝えに来た人の思いに付いていくのだ。


「ところでアセンディア研究会って、どういう団体なんですか?」


 根本的にそのことを知らないことを思い出したので聞いてみた。


「私たちは『運営』と同じステージに立つことを最終的な目的にしています。この世界を作り出した存在に一歩でも近づくこと、それがアセンディア研究会の目的です」


 思ってたよりヤバいやつがきたな、これ。

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