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「望み通りやってやるよ! シャロンは助かるんだろうなテメェ!

マーティさん! 全員撤退だぁ!!」

 誰かと話していたようですが、今のセリフは誰かと何かといけない取引をしたのでしょうか・・・

テンプレ的にここは一発最後に大技を繰り出して勝負を決めるところです。

とりあえず、恨みを晴らすべく、青髪女を殴ってみようと思いましたが、少し様子を見ておくことにします。


「漆黒の空・・・ 風は止み・・・ 海は枯れ・・・ 不毛の大地・・・ 天地崩落・・・神位倒滅・・・ 鳴り響け終末の鐘・・・」

 かっこいい構えで、ヤバそうな厨二フレーズを口にしながら、印を切るダルジィさん。

青髪女は半透明になってシャロンさんの体と重なり合うよう見えるので、若干わかりにくいけど、青髪女の顔はひきつってます。


「な!  なんでおまえが使えるのですか!?」


「神の使徒って奴から教えてもらったんだよ!」

 神の使徒ですか、ちらっと死神女を見てみると、ひきつった顔で違う違うと手を振っています。


「て、てめー! 正気か! 

 世界を破壊する気なのか!」

少しづつ頭に浮かんでくる私の知識によると、ダルジィさんが唱えているのは『終末の鐘』。

資格者を持つ者が唱えるだけでこの世界は消えてなくなるというとんでもないものです。


「マ、マリアちゃん、危険だからわたし帰るけど、一緒に来るよね?」

「お断りします」

 死神女が青い顔をして逃げ出そうとする程の大技。

かなり危険そうだけど、シャロンさんを助ける為に使うみたいだし、私のセブンセンシズが大丈夫とささやいています。


「し、仕方ないわね。 マリアちゃん・・・、わたし・・・あなたを見捨てて帰る! じゃ!『ゴン』・・・」

「帰れないようですね(ニッタリ)」

 死神女は転移で脱出しようとしましたが、何かにぶつかったようで、鼻血をだしながら尻もちをつきました。

どうやら死神女と私の周りには見えない壁があり、転移もできないようです。


「えーーー 主様!! 私、巻き込まれるんですけど、消えたくないんですけどぉ!!!!」


「何となく思い出したのですが、あれって世界を終わりを告げる、いわゆるラピュタでいうバルス的やつですね。」


「知ってるわよ! 知ってるわよぉ!! ああ、あんたもこのままじゃすんなり転生なんてできないわよ!!! 」

 

『カラーン、カラーン』と甲高い鐘の音があちらこちらから聞こえてきます。


「この鐘の音、だんだん増えてきてますね。」


「いやぁぁぁぁ!!!」

 頭を抱えて、発狂してのた打ち回っている死神女を見ていると、いい気味だと思ってしまったのか、なんとなく胸がすぅーーとします。


 そしてなぜか、私がこの世界に生まれる前の転生や神様に対する考えが少しづつ頭に浮かんできます。


 転生をして新しく何者かに生まれ変わったとして、そこで私が幸せになるという保証はありません。

ひょっとしたら、今より酷いことになるかもしれない。


このまま転生とかしないで、ふっと消えてしまっても別にいいんじゃないかな?


この世界の人たちもろとも、サクッと消えてしまったら、みんな、怒り、哀しみ、恐れ、嫉妬という諸々の負の感情から解放されますし・・・。


生は苦痛、死は安らぎ、無は解放。


輪廻転生を繰り返し魂はいずれ目覚める・・・ 覚醒する・・・悟りを得る・・・などという世界は間違っている。


魂は消えてなくなる時に救済を得る。

虚無こそが正しい世界のあり方である。


傲慢にも神を名乗り、魂を転生に導く者どもを一刻も早く消滅させて悪夢のような世界から真の救済を・・・


「エルシア! シャロンを解放しろ! 解放したら止めてやる!」

はっ!

何考えてたんだ私!!

なんですか、真の救済って、新手の悪徳宗教ですか! 恥ずかしい!

死んで幽霊状態になって、厨二病発症とかありえない!


そもそも、私にはすばらしい異世界本に出てきた水の女神様を信仰していますし、この信仰心にはいっさいのブレはありません!

今なのは無かったことにします。


ふぅ・・・

さて、気を取り直して、ダルジィさんが青髪女を戦いを見てみるとあの女は細剣で何度も突きますが、全くダルジィさんにかすりもしないようです。


しかし、かなり負担がかかっているようで、ダルジィさんの髪の毛が段々白くなっていきます。

寿命を削りながら唱えているのでしょうか?

これはいけませんが、一緒に転生という観点から考えると有りでもあります。


「はっ、私は人間の守護者です! テメーの脅しなどに屈したりしないのです!

 この世界を終わらせると沢山の人たちが死んでしまうのです!

 おまえにそんなこと出来るですか?


 おまえ、絶対騙されてやがるぞ!


「脅しじゃねぇ!」


「大体、おまえに何度も謝罪したのです!

 何で受け入れないんだ!

 いつまでもネチネチとしつこい奴です!」


「俺は貴様が嫌いだ!

 シャロンの事も何度も反対したんだ!

 貴様はあのお人好しまで裏切るのか!」


「はっ! こんな気の弱ぇ女、乗っ取らねぇと使いもんにならねぇんです。」

 

「馬鹿野郎・・・ わかった。 俺と共にこの世界から消え去ろう・・・」


「は? いや、本気で使うのですか!? 私の話聞いてなかったのか? ちょ、ちょっと待つのです!!!」


『אלוהים שנפל』


・・・

・・・

・・・


 ダルジィさんがパタリと倒れると、沢山の鐘が階段から落ちるような音が周りに響き渡ります。


ダルジィさんは青髪女と相打ちを狙っていたようですが、『終末の鐘』は世界を終わらせるので、被害はこの世界が崩壊して生き物がすべて死んでしまうぐらいの強力なものです。


シャロンさんを助けるつもりなら使うはずもないものです。

青髪女もただの脅しで使うわけないと思っていたようで、呆然としています。


ダルジィさんは『神の使徒』に騙されていたのではないでしょうか?


しかし、結果的にはダルジィさんは死んで一緒に転生が可能となるので、私個人としては大変好ましい結果になりました。


ぶっちゃけ、彼をだました『神の使徒』さん。


グッジョブです。


 あと、両足を抱えるようにして地面に座って、ぶつぶつと言っている死神女が少しうざいです。

とりあえずこの女はむかつくので、ゲシゲシと蹴りを入ましたが、無反応です。


とてもつまらないです。


『準備は整った。 

 世界が崩壊を始めている今なら女神の力はあの女に届かぬ。

 君はあの女に恨みがあるのだろう? 壁は消した。 あの女に君の怒りをぶつけてきたまえ(報仇雪恥♪ 報仇雪恥♪)』

どこかで聞いた事のあるオジサマとフクゾの声が聞こえます。


「おぉ・・・」

私の右手から青白い炎が湧き出すように現れ、光の線が現れ青髪女の顔面につながっていきます。


理解しました。光の線をなぞるように近づいて、ぶん殴れということですね。


見えない壁が消えてしまっているので、つかつかと青髪女に近づくと、私に気づいてはいるようですが、特に何も反応はなく、ぼーっ死んだ魚のような目で私の右手見ています。


「天魔、それは私を解放する・・・

お前がそれを使うのか?」

青髪女は不思議そうな顔をしています。


「あなたは私のパパとママ・・・

 村のみんなの仇。

 おじさんに聞きました。

 これで恨みを晴らしなさいって言ってました。

 解放っておかしいですね?」


「ふふふ・・・

 それを使えば輪廻転生の輪に入る。

つまり完全に死ぬな」


「なら、希望通りです」


「はは、なに言ってやがるんですか?

 天魔は魂を噛み砕き、すりつぶし、塵芥にして、無に帰す。

・・・

・・・

・・・」


「私、天魔じゃないんで。

 そんな事しないです。」


 右手で青髪女の頬に触ると青髪女は霧のように霧散してしまいました。

本当は可能な限り強力で、まさに渾身の一撃と言えるくらいの鉄拳を食らわせたかったのですが、なぜかそんな気は起こりません。


おかしいです。 私らしくないです。


青髪女が消滅すると、煩かった鐘の音は止みました。

今は気味が悪いくらい静かで、空き城の中は少し薄暗いです。


シャロンさんは青髪女の支配から抜け出せたようで、ダルジィさんの方に向かってふらふらと歩いて向かっています。


わたしも、ダルジィさんがお亡くなりになったら、すぐに一緒に成仏できるようにしないといけないので、追いかけるように彼に近づきます。


「ダルジィ! しっかりして!!」

シャロンさんが仰向けに倒れているダルジィさんの手を握りながら必死に呼びかけています。


「ああぁ・・・ 生きていたのか・・・ いやこれは夢か・・・ もう会えないと思ってた・・・ 良かった・・・」

 ダルジィさんはまだ、息があるようです。

でも、瞳に光はなく、肌に皺はありませんが、老人のように暗く、黄色みを帯びていいます。


 そしてかなり苦しそうです。


「わ、わたしは大丈夫よ! しっかりして、今はあなたの方が危険なのよ!」

シャロンさんはポーチから皇帝液を取り出して、ダルジィさんに飲ませています。

凍っているじゃないかと思いましたが大丈夫みたいです。


でも、寿命が削られているので、残念ながら皇帝液は効かないと思われます。

もうすぐ私のそばに来てくれるでしょう。


「結婚を約束してのに・・・ お前がエルシアに、ゴフッ、ゴフっ・・・ 離れずそばにいるべきだったゴフッ・・・ すまない・・・」

ダルジィさんは、震えながら手をシャロンさんの頬にあてて、涙を流しています。


「だめよ! 私、あなたがいないと生きていけないの! お願い! 死なないでぇ!!」


「すまなかった・・・ 俺を許してくれ・・・ リリア・・・」

シャロンさんの頬にあてていたダルジィさんの手が、ゆっくり力尽きたように頬から離れました。


・・・

・・・

・・・


は? なんでリリアちゃん?


今のシャロンさんじゃなくてリリアちゃんと話していたつもりだったのですか?

シャロンさん完全に固まってます。

いまわの際の婚約者に別の女性と間違えられていたのですから、これは相当ショックです・・・


ぷぷっ


あ、いけない、思わず笑ってしまいました。

人の不幸は蜜の味と言いますが、今回の不幸はさすがに少し苦みがあります。


でも、面白いです。 マジで笑っちゃいます。 ああ、わたしって酷い女です。


しかし、ダルジィさんの魂がでてきませんね、まだ完全に亡くなってはいないようです。


「も・・・」

も?

シャロンさん、泣きながら耳に口を近づけて何か言おうとしていますね。 ここは相手が元気なら貼り倒していい場面です。


わたしなら「私はマリア! 間違えんな! ごらぁ」と絶唱します。

さ、シャロンさん、はっきり「間違えんなと」言ってあげなさい。


・・・

・・・

・・・


「もう、いいの・・・ とっくに赦してるわ・・・ ダルジィ・・・ ごめんなさい」


 苦しく苦悶に満ちていたダルジィさんの顔がとても安らかなものに変わりました。


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