アカツキ・Ⅰ
ケイオスをクビにしたアカツキの話。
彼らは今どのような状態になったのか。
本日17時ごろにもう1話投稿。次話も合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
「ねえ! どういうこと!」
僕のそばでヒステリックにわめいているのは、つい最近加わったメンバーの一人、ヴァイオレットだ。
「もうこれで三度目の失敗なんだけど?」
「失敗じゃない。撤退だ」
新生アカツキとして新たに出発した僕たちは、AAランクパーティーを目指し、栄光への道を歩むはずだった。
しかし、戦略的撤退が続いている。
「……たまたまだ。運がなかったんだ」
より高難度の依頼を達成するために僕たちは火力を重視したパーティーを組んだ。
新メンバーの四人は、敵の引き付け役を除けば、残りは魔法士。火力は申し分なかったはず。
新アカツキは拠点を変えた。
Aランクパーティーに相応しい、街の中心部にある邸宅だ。
クエストから帰還し、一息つけると思ったのだが、こうしてなぜか僕が非難を浴びている。
「まあいいわ。とりあえずお風呂に行くから」
「……」
ヴァイオレット、フォレスティア、アクアーナの三人が僕に背を向ける。
彼女たちは美しい。容姿だけなら新アカツキに相応しいものだ。
後ろ姿も……素晴らしい。
なぜクエストがうまくいかないのかは、見当がついている。
連携が取れていない。
そして何より———
「ライト、ルールスはどこへ?」
極めて高い防御力で魔物を足止めする『聖騎士』、ルールスがいない。
ここ二回ほど、依頼をパスする、と言ってどこかへと行っているんだ。
「さーな……」
「なにか聞いていないか?」
「うーん……金づるがどうこうって言ってたが」
「金づる?」
何の話だ。
「ジャスティンよー、それはいいけど、まずいぜ。スポンサーに文句を言われちまう」
「ああ、そうだな」
忌々しいことだ。
このままでは評判が落ちて、降格してしまう。
せっかく掴んだチャンスだと言うのに。
「依頼をこなすしかない」
なに、僕たちは王都でも最強クラスのパーティーだ。
『聖戦士』である僕と『大炎魔法士』であるライト。
ヴァイオレットは『毒性魔法士』だし、フォレスティアは『緑林魔法士』。アクアーナは『水清魔法士』。
問題など、ない。
そして翌日。
僕たちはまたクエストから撤退する羽目になった。
「ジャスティン! 変な指示を出さないで!」
「君が勝手に動くからだろう」
うるさい女だ。
指示に従わず、一方的にわめいている。
王都から離れた山間に現れた『ドレッジスネーク』など雑魚なのに、分断され、退却を余儀なくされた。
最悪だ。今いる拠点は家賃が高い。このままでは払えなくなる。
「あなたねえ……」
「少し、黙っていてくれないか?」
ちょっと脅してやろう。
剣を抜き、見せつける。
「ちょっ……」
「いま対策を考えているんだ。僕は王都でも屈指の戦士。天職は『聖戦士』だよ? 序列は上だ」
ヴァイオレットが黙り込む。
最初からそうすればいいんだ。
「ライト、ルールスはどこだ? あいつがいれば何も問題なかったはずだ」
僕はちらりと、新メンバーの重戦士を見た。
名前は……なんだったか。
とにかくこいつが役に立たないんだ。
ケイオスのようにクビにでもするか?
「まだ戻っていないのか、ルールスは」
「ああ、戻ってねーな」
「ちっ」
なぜうまくいかないんだ。
「これからは僕の命令が絶対だ。パーティーのリーダーは僕。それはわかっているだろう?」
全員がうなずく。
「心配しなくていい。僕たちは強い。王都でも最高火力を誇るパーティーなんだ」
そうだ。
わずか五年で一流への登竜門、Aランクパーティーまで駆け上がった。
何一つ問題はないのだ。
ルールスさえ戻ってくれば、防御力は格段に向上する。
いまは依頼を受けずに、待つしかない。
「……思い出した」
「どうしたんだ、ライト?」
「ルールスのヤツ、どっかの田舎町に行くって言ってたな」
「どこの町だ?」
「確か……なんとかフェルン? あんま覚えてねーな」
王都以外の町に金づるなんてあるのか?
しかも田舎町だなんて、正気を疑う。
「まったく……しかたないな」
僕はマントを羽織り、拠点を出ようとする。
「ジャスティン、どこに行くんだ?」
「僕の彼女に会ってくる。最近姿が見えないから心配なのさ」
「誰だ?」
いまさら何を言う。決まってるじゃないか。
「冒険者省のエリーシェだ」
「……彼女なら辞めたって聞いたけどな」
「なんだって?」
は?
なにを言っているんだこいつは。
僕はなにも聞いていないぞ。
「噂の辻斬りにでも出くわしたんじゃねーの」
「バカな……」
確かにいま王都では、夜に現れる辻斬り強盗が噂になっている。
不安ならばずっと僕と一緒にいればいいものを。
「確かめてくる」
くそっ!?
どいつもこいつも勝手なことばかりする。
おまけ・パーティーランクについて
冒険者(探索者、ハンター、傭兵の総称)は集団を組織し、一個のパーティーとして登録することができる。
人数は無制限。即席のパーティーとは違い、正式なパーティーは会社、企業に近いと言える。
パーティーには活動と実績に応じてランクが与えられ、高いほど冒険者省からの恩恵を受ける。
冒険者にとってはステータスで、個人ランクともども、強さや知名度に大きな影響を与える。個人ランクとは別。
パーティーランクを上げることでもっとも大きな恩恵は、国家指名依頼。報酬も危険度も桁違いで、富や名誉をほしいまま。
これにより王都で一旗揚げようとする若者が後を絶たない。
現在、最上位のLランクパーティーはなく、栄光の座を求めて冒険者たちは日々戦う。
という感じです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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