水の咆哮 第5章-6
今回で、「水の咆哮」は完結です。
グラウンドから逃走した皆葉たちは、車に乗っていた。
律華が駆けつける際に、新緑高校の入り口に乗り捨てた車。幸い、自動操縦が可能になっており、皆葉は診療所を行き先に設定して車を出した。
「ふう」
車に乗って、一息つく皆葉。シートに身体を預けると、連戦による疲労が顕著に現れたのか、軽く目眩を覚える。
「大丈夫ですか、兄さん」
「……ああ、疲れただけだ。それで、豪紅蓮からはあの後連絡はあったか?」
「いえ。私たちが逃走を開始して間もなくの頃に、自宅マンションに移動したとメールがあっただけで、それ以降は」
「そうか。まあ、あの男なら、悪いようにはしないと思うけど」
「ええ、そうですね。それと、兄さん。先生のことですが」
「……戦況は?」
神奈が口重く切り出した、竜律華の件。徒歩での逃走中、突如として神奈の端末にドローンの映像らしきデータが送られるようになっており、律華と光冥の闘いが映し出されるようになっていた。
「――どうやら、終わったようです。先生は、敗北しました」
「敗北!? じゃあ、先生は……」
「いえ、大丈夫なようです。白衣を来た人物が突如現れて、あの男は退散しました。それから、白衣を来た人物は先生を治療(?)して、どこかへと運んでいるようです」
「そうか……白衣を来た人物?」
「ええ。背格好からして、おそらく男性かと思いますが、遠目なので顔は見えないですね」
「まさか……」
皆葉には、一人の心当たりがあった。その姿が頭に過ぎったが、
「皆葉君、前!」
麗が叫ぶ。前方には、人影が立っていた。
自動操縦の車は、人影を探知して急ブレーキをかける。急ブレーキの反動は、乗車している3人を激しく揺さぶった。
「チッ!」
シートベルト越しの反動は、疲弊している皆葉の身体に響いた。同時に、意識が一瞬飛びかけた。
「二人とも、大丈夫か!?」
「ええ……」「はい……」
「そうか……待て、何でこの状況下で、人が外を出歩いている?」
今日の夕方頃から、商業区を中心として外出自粛が始まっている。今は深夜だが、外出自粛が解除されたというニュースは流れていない。
さらに、人影は車を避けるわけではなく、ゆっくりと近づいて来ていた。そして、
「なん……だと……!?」
皆葉に生じる異変。それは、神霊石が発する警告だった。疲労困憊な皆葉だが、身体に鞭打って車外に出る。
「ようやく会えましたね。先輩」
にっこりと笑みを浮かべる人影――小柄な少女はそう告げた。闇夜に馴染む、漆黒のゴスロリ衣装を纏う少女。
それは、新たなる”神の道化”だった。
次回からは、新たな”神の道化”との話になります。




