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水の咆哮 第3章-5(1/2)

一か月ぶりの更新です。

 午後9時00分。

 新緑高校の職員室にて、水無月メイは驚くべき知らせを聞かされた。


『——作戦成功。対象S及び同伴者1名に重傷を負わせた』

 

「さあどうする、お嬢さん」

 傍にいる豪紅蓮が、面白そうに尋ねてくる。

「どうする、とは?」

「なに、”殺し愛”とやらに水を差されているが、お嬢さんの方針はどうするのか興味があってな」

「別に、どうもしませんよ」

 つまらなさそうに、メイは答える。

「重症を負わせた、なるほど、確かにこれは、私にとって良い知らせでしょう。

 ですがそれは、本当(・・)なのか、怪しいですけどね」

「ほう?」

 興味深そうに、紅蓮は頷く。

「あなたも彼と戦った時に、騙されたでしょう。正確には、”彩破”でしたか。

 最初の戦闘時、あなたは彼の左腕を焼き切って勝利を確信したところ、突然消し炭にした左腕で反撃を受けた。それで否応なくメモリを使わされたのでは?」

「……よく覚えているじゃないか。さすがに、自分が泣かされた時のことは、鮮明に覚えているか」

「…………ええ、そうです。私があなたに敗北しかけた時のことです。」

 不満気——いや憤怒の感情を出しかけるが、メイはひとまず飲み込んで続ける。

「だからこそ、この知らせが本当かは疑わしい。それよりも、虚偽の情報だと推定し、万全の状態で臨めるようにしておくのがベターです」

「まあ、そうだろうな。さて、お嬢さん。次の知らせが来たようだが、そいつはどうする?」

 紅蓮がスクリーンに映し出された情報を読み上げる。


「『——作戦中止。現警戒態勢を維持しつつ、DBに備えろ』」


「ッ!?」

 言われて、メイは急激に振り返る。

「DB!?」

「ああ、ついに現れたようだな」

「……そうですか」

 メイの手が震える。

「どうした、怖いのか?」

「いいえ」


「嬉しいんです。ようやく、父の仇に会えるので」


 ニヤリと、メイは笑う。

「DBと戦うなら、少し考える必要がありますね」

 メイは踵を返し、職員室から去っていった。



 メイが去った職員室で、紅蓮は一人、自身の端末を操作する。

「父の仇……か。惚れた相手よりも気になるのは無理もないが、それが敗因にならなければいいが」

 独り言ちながら、紅蓮はDBの情報を検索する。

「——商業区で監視カメラに引っかかったか。時間は午後8時53分。

 おそらく、竜律華はDBを追跡しているはず。奴を狙うなら、俺も動くべきではあるが……商業区?」

 DB を捕捉した場所に、紅蓮は引っかかりを覚える。

「商業区と言えば、確かあの少年がNINJAと戦っていたな。映像の場所も、モノレール駅から近いとは言えないが、視力を魔術で強化していれば捕捉はできなくもなさそうなところか。映像の時間から推測するに、DBは少年を眺めていた? だとしたら」

 紅蓮の中で考えがまとまっていく。

「……下手に動き回るよりかは、ここで待っていた方が、遭遇できそうだな」

 結論が導き出された。

「ならば、俺も準備するか」

 


   *   *



 午後11時30分。

 教育区にある新緑高校校舎——生徒会室。水無月メイは、闘いに備えていた。

 机の上には、彼女が用いる各種道具が置かれている。

 ブレスレットとアンクレット、それにイヤリングがそれぞれ2個。

 先日の豪紅蓮と戦った時に用いた物と同じ装備——魔術媒介を、メイは念入りに点検する。

(あの男との闘いの後点検したけど、念のため見ておかないと)

 これらの魔術媒介は、メイが自作したもの。神の道化になる前から使用している。


 メイが神の道化になった際、魔術媒介が1つ、彼女に与えられている。右手の人差し指に嵌められている、青い指輪がそれだ。

 単に魔術を使うだけならば、その指輪だけで事足りる。しかし魔術媒介は、剣や槍などの武器に変換できるものの、1個の魔術媒介では同時に1個の物にしか変換できない。

 その問題を補うため、メイは装備変換用の魔術媒介を四肢に装着するようにしている。

 これによって、それぞれを籠手と脛当に変換して格闘戦ができる。また両手に武器を持つ等、戦闘のバリエーションが豊富になる。

 問題があるとすれば、人造のために、機能に制約があること。

 メイが作成した各種魔術媒介は、武器へと変換するためのものに過ぎず、それらを介しての魔術行使はできない。しかしメイは、指輪——神造の魔術媒介があるので、魔術行使はそれで事足りるという発想から、この手法を採用している。また、余分な機能を搭載していないため、彼女の魔術媒介は装備品とした際の強度がより高い傾向にある。


「……特に問題はなし」

 すべての魔術媒介に魔力を流し、変換具合を確認するが、特に異常はなかった。

 安心して、メイは両耳と両腕、両足にすべての魔術媒介を装着する。

「さて、あとは……」

 メイは生徒会室に置かれているPCに触れる。ディスプレイには、”DB”の追跡情報が表示される。

「商業区から徐々に教育区に向けて移動している。いや、むしろ」

 一つの仮説が思い浮かび、メイは別の情報を検索する。


『神皆葉』


 検索ワードを入れると、新緑市内のあらゆる監視カメラ映像から、現在の位置が表示される。

「商業区のモノレール駅から、こっちに向けて移動を開始したってとこね。ならば」

 仮説が裏付けられていくことを実感し、メイは端末のメールソフトを立ち上げる。


『DBは、神皆葉を尾行している可能性がある。神皆葉は新緑高校に向けて移動中』


 挨拶文もなく、ただ用件だけを打ち込み、メイは送信した。

「これで、あの人は動く。あとは——出迎えの準備をしなくては」

 PCをスリーブ状態にし、メイは生徒会室を後にした。

次の話も今日中に上げる予定です。

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