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神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
幕間

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幕間 5

後日談が、(多分)ここで終わる予定です。

 濃密な記憶の奔流が終わると、目が開いていた。


 手には銃で人を殺した間隔が、胸には仲間を殺された恨みが、新たに得た知識に付随して皆葉の中にあった。


「診療所……か」


 ベッドから起き上がり、周りを見渡すと、最近見慣れてきた彼の生家である診療所――の寝室であることが分かる。


「今日は……2日後、月曜日か」


 立ち上がって時計を見ると、紅蓮との戦いから2日後――月曜日の朝6時であることを示していた。


「身体は……動く。うん?」


 軽く身体を動かすと、満身創痍の状態から回復できている。だが、姿見に写る姿に違和感があった。先日の戦いの際、神霊結晶を使用したことによって髪が腰まで伸びていたが、色が赤になっていた。


「“火”の神霊石の影響かな? 少しずつ緑に変わっていっているようだけど……ああ、記憶といえば、試してみるか」


 耳のピアスに触れ、魔力を込める。ピアス――魔術媒介は姿を変え、リボルバーになった。


「……」


 数度引き金を引くが、リボルバーは撃鉄をおろすだけで空を切り続ける。


「……なるほど」


 弾倉を開く。中には、弾丸は込められていない。


「弾丸は、さすがに魔力で賄うことはできないか」


 弾倉を戻し、手のひらでリボルバーを弄り回してから、元のピアスへと形を戻した。


「弾丸の調達は今後の課題として、とりあえず戦術の幅は広がりそうか。さて」


 残り時間は18時間。コンディションはほぼ戻ったが、紅蓮との戦いでカード等の消耗品を使い果たしてしまった。補給の必要がある。だが、


「彼女と話さなくては」


 着替えを済ませて、皆葉は寝室から出て食卓へ行く。




「おはようございます、兄さん」


 食卓には、神奈がいた。既に朝食を作り終え、配膳が済んでいる。


「おはよう、神奈」


「大丈夫ですか? 丸2日間寝てましたけど、どこか悪いとこはないですか?」


「大丈夫。まあ、これがちょっと変わってるけど」


 皆葉は赤く染まった髪を示す。


「そうですか。じゃあ、朝食を食べてください。お腹空いてるでしょ?」


「ああ、いただこう」


 2人は椅子にかけ、朝食を取り始めた。




「……」


「……どうですか?」


「ああ、美味しいよ」


「ありがとうございます」


「こちらこそ、ありがとう。それと、すまない。僕が眠っている間、神奈には迷惑をかけてしまった」


「迷惑だなんて、私は、好きでやってるだけですから、気にしないでください」


「……そう。ああ、後で少しだけ話があるけど、いい?」


「私は構わないですよ」


「じゃあ、後で」


 それっきり、2人は何も会話することなく、黙々と食事を済ませた。




 食事を済ませて洗い物を済ませると、皆葉と神奈は再び椅子にかけていた。


「さて、神奈。色々聞きたいことがあるけど、何から聞けばいいかな?」


「? 兄さんが聞きたいなら、兄さんが興味のあることを聞けば良いのでは?」


「いや……」


 少し、逡巡してから皆葉は口を開く。


「これから僕は、君が答えにくいことを尋ねる。君が話したくないなら、無理に答える必要はない。だけど、嘘は言わないでほしい」


「…………わかりました。何なりと、聞いてください」


「ありがとう。じゃあ、最初に聞きたいんだけど、君はなぜ、僕の知らないところで、僕に関わった人を排除してきた?」


 その疑問は、朝目覚めた時に抱いたものだった。紅蓮の記憶を継承した際、紅蓮がCIAを通じて得た情報の中に、神奈の行動についてのものもあった。その情報には、神奈が徹底して皆葉に関わろうとする他人を排除してきた記録があった。


「何のことですか?」


「……たとえば先日の入学式、僕に絡んできたクラスメイトがいたけど、彼らをどうした?」


「ぶちのめした後で記憶と人格を操作して、まともな人間にしました。兄さんに手を出したことを後悔して、今頃は退学届けを出してこの町を離れたと思いますが」


「……」


 絶句する皆葉。何事もなかった――掃除でもしておいたように、神奈は淡々と答える。


「今回以外にも、兄さんをイジメた人には相応の報いを受けていただいてます。兄さんが聞きたいのは、その動機ですか?」


「……ああ」


「なら、理由は1つです。兄さんを愛しているからです」


「……………………」


 再び絶句。皆葉は何も返せない。


 皆葉の沈黙に構わず、神奈は続ける。


「兄さんを虐げたんです。当然の報いですよ。どうして、そんなことを気にされるのか、私には理解できないですけど」


「……なら、僕が中学生の時、何人か親切にしてくれた同級生がいたけど、彼らが突然いなくなったのも君が?」


「ええ。兄さんがいないところで陰口をたたいているのを聞きました。放っておいたらどんなことをしでかしたか分からないから、どこかに行ってもらいました」


「陰口……そんなことで、か?」


「ええ、そんなことで、です。兄さんも経験したでしょう? 大衆なんてのは、弱いものイジメが大好きなんだって。ちょっと善人っぽいふるまいをしても、すぐに他の人間に感化されて悪人になるって。私は、そんな奴らが何かしでかす前に排除しただけです。

 もしかして、私の行動について咎めたいからそんなことを言ってるんですか? 気を悪くさせてしまったなら申し訳ありません。でも、今までの例を見る限り、大なり小なり差はあっても、奴らは同じようなことをしますよ?」


「……ああ、そうだろうな。勘違いしないでほしいのは、僕は、君を責めたいからこんなことを聞いているんじゃない、そこは誤解してほしくないんだ」


 本心から、皆葉はそう告げる。神奈が言うように、皆葉に良くしようとする人間がいても、結局は他の連中と共に皆葉を迫害する。だが、1点だけ気になることがある。


「じゃあ、円麗さんについても、君は排除するつもりなのか?」


「……」


 その時、今まで即答してきた神奈が、黙り込んだ。


「神奈?」


「…………」


 答えない。人形のように表情を凍らせ、神奈は何も答えない。


「……答えられないなら、まあいい。でも、彼女も含めて、今後はそんなことはしないでくれ」


 そう告げると、皆葉は立ち上がり、食卓を後にする。そろそろ学校に行く時間だ。


「……わかりました」


 去っていく皆葉に、神奈は返事をした。




「……何で、『そのつもりです』って言えなかったんだろう」


 皆葉がいなくなった食卓で、神奈は独り言ちた。


「今までとは別のベクトルで目障りなのに、なんであの女を排除しようと思えないんだろう」


 彩破に言われたから? 違う。そうではないと、神奈は思う。けれども、答えは見つからない。


 自分の感情に困惑しながら、神奈は出かける準備をし始めた。

次回からは、多分本筋に入っていけると思います。

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