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神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
生命のはじまり、火の襲来

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生命のはじまり、火の襲来 第5章ー1

 そこは、ドーム状のだだっ広い空間だった。外壁が無骨な鉄色1色で、何も置かれていない。ただ、非常に堅固な場所であることは、違いなかった。


 ここは、学校から北に抜けた、研究区にある訓練施設。表向きは新緑市が所有するアスレチック施設とのことだが、実際は、NINJAが様々な訓練を行うための施設である。


 その空間で、神皆葉と円麗は瞑想をしていた。側には竜律華が付き添い、2人に手を当てている。



「さて、道中話したが、まずは魔力を練ることから始めてもらう。おまえたち、魔術のシステムは理解しているな?」


「はい」


 皆葉が返事をし、教えてもらったことを復唱し始める。


 魔術とは、魔力を行使して、各属性に応じた事象を具現化するもの。魔力は、生命エネルギーを加工して、魔術の原料としたもので、主に自分の生命エネルギーを使う。熟練の魔術師になれば、大気から生命エネルギーを取り入れ、より規模の大きい魔術行使が可能になる。


「だから、生物にしか魔術は使えない、というお話でしたね」


「そうだ。で、魔力を練ることから魔術は始まるのだが、本来ならばある程度の時間を費やして、自分の力で身につける。だが、お前には時間がない。そこで、少しばかり手助けをして、短縮する」


 律華の手が淡く輝き、暖かなエネルギーが2人に流れていく。それは、魔力だった。


 2人は魔力を実感し、理解していく。身体の中で蠢く血液が、魔力を運んでいる。身体の隅々にまで力が満ち、循環していることが感じられる。


「この、妙な感覚が、魔力ですか」


「そうだ。今回は私の魔力をお前たちに流すことで、無理矢理魔力を練らせた。言わば、呼び水だ。ただ、気をつけておけ。制御できないと」


「あああああああ!」「きゃああああああ!」


 言うが矢先、突然2人は悲鳴を上げ始めた。彼らの中で循環していた魔力が、明確に認識できるほど濃厚な光となって、溢れ出している。


「――そうなる。そのまま放出し続けて魔力がすっからかんになると、気絶する。最悪、生命エネルギーが枯渇して、死ぬ危険もある」


「そういうことは」

「先に行ってください!」


「言っても、お前らはやったと思うがね。とりあえず、落ち着け。呼吸を整えて、魔力を身体の中で循環させろ。お前たちにも扱えるぐらいの速度に調節するんだ」


 律華は、麗と皆葉の訴えに構わず、隣で見本を見せる。2人に知覚できるように魔力を濃く練り、その循環速度の調節を、簡単にやってみせる。


「こんな感じだ」


   *   *


 数分間、2人は魔力操作に悩まされたが、どうにか落ち着いた。ダダ漏れになっていた魔力は、今では2人の身体の中で、清流のように穏やかに循環している。


「さて、そろそろ慣れたな。次に、魔術の発動をするわけだが、円麗。こいつを受け取れ」


 差し出されたのは、指輪だった。ダイヤモンドがはめ込まれているが、不格好なカットで、観賞用には到底見えない。


「これは……魔術媒介ですか?」


「ああ。お前にはないから、わざわざ創ってやった。感謝しろよ」


「そんなことを言われなくても、感謝はしてますよ。創ったっておっしゃいましたが、どうやったんですか?」


 その問いかけに、律華は行動で応えた。手の平を上に向けると、そこから黄色い魔力――“天”属性の力が発動される。すると、猛烈な風が、周囲から発生した。いや、律華の手が、空気を吸い寄せていた。


「まずは、こうやってダイヤモンドを創る」


 しばらくの間空気を吸引した後、律華は、手では掴めないはずの気体を、握りつぶした。次に手が開かれると、そこには凹凸の激しい、手の平台の原石があった。


「それから、加工だ」


 再び律華は、ダイヤモンドを握り込む。その手は、今度は茶色――“地”の魔力に輝き、数秒後に開かれると、凹凸がなくなっていた。明かりを反射して、綺麗な輝きを放っている。


「台はつけてないが、こんな要領だ。ほれ、皆葉」


 ダイヤモンドが投げられる。高価な物のはずなのに、律華はどうでも良いかのように、無造作に放った。


 皆葉は慌ててキャッチをしようとするが、2・3度お手玉のように踊らせてしまう。


「さて、これで道具は揃ったな。じゃあ、お前たち。早速何かやってみろ」


「「はい」」


 2人は、ダイヤモンドを手に持ち、静かに空いている手を前に突き出す。


 ――魔術は、魔力を練った後、次にその使う属性を決めなければならない。その際には、各属性の色をイメージすることによって、魔力に属性が与えられる。


 次に、具現化させる事象をイメージする。この動作が完了すると、魔術媒介が反応して、イメージした通りの魔術となる。


「普通の人造の魔術媒介だと、具現化できるものに制限があるが、私のは特別製だ。神造もののように万能ではなく、 “生命”だと簡単なものしかできないが、“生命”以外なら何でもできる」




 神の道化には、神霊石とは別に、魔術媒介が一つ与えられる。それが、神造の魔術媒介。皆葉のピアスも神造の魔術媒介に該当する。


 これは、神の道化が限定結晶を生成したり、また他の通常の魔術を使う際に使われたりする。すべての属性に対応しており、やり方によっては神霊結晶なしでも勝ち抜けるような可能性を秘めた道具。


 その他の物が、人造の魔術媒介。対応する属性や、変化させられる道具に制限がある。律華の製造した魔術媒介は、極めて精巧なもので、人造ものとしては最高峰と言っても良い代物だ。


 神霊石とは別に魔術媒介を与えられる理由だが、神霊結晶だけを使った単調な戦闘になるのを回避し、選択肢を増やすことによって戦闘を盛り上げるためにあるのではないか、と律華は推測している。


 そのように律華が補足をするが、2人は聞いていない。集中して、イメージを作り上げる。




 そして――魔術が完成した。


「やあ!」


 まず、麗の手から火の玉が飛んでいった。10メートルほどを勢いよく突き進み、やがて四散していった。


 一方。皆葉は、


「はああああああ!」


 その手から、冷気を発生させていた。冷気はたちまち訓練場全体に広がり、どんどん気温が下がっていく。


「はああああああ!」


 続いて、大気中の水分が凝縮され、部屋全体が水浸しになり、


「は!」


 さらに温度が低下して、数多もの氷の槍となった。


「すごい……!」


 その光景を目にして、麗は感動を覚える。自分よりも規模が大きく、それに芸術性をも感じられるからだ。しかし、


「ふむ……」


 律華が氷の槍に近づく。軽く拳を振るうと、氷の槍はいとも簡単に砕け散っていった。


「さて、皆葉。私がお前と円麗に点数をつけるとしたら、何点だと思う?」


「……僕が0点で、彼女は60点、といったところですか?」


「なぜ、そう思う?」


「僕のは、実用的ではないからです。円さんは、弱々しいものでしたが、すぐに火の玉を放つという結果を出しました。僕のように、順序立てることもなく。威力も似たようなものです。だから、僕は零点で、彼女は及第点の60点です」


 自分の欠点を坦々と指摘する皆葉。その回答を聞いて、律華は満足そうに頷く。


「分かっているなら、あとはその過程を省くことだな。魔術をショーに使いたいなら、お前の魔術は100点をくれてやっても良いが、実戦に使えるようなものじゃない。もっと、シンプルにイメージすれば良い。その点、円麗は非常に優秀だ。お前もこいつを見習え」


「何か、微妙に馬鹿にされた気がするんですけど……」


「いいや、褒めているさ。診療所でお前たちは認識したと思うが、我々魔術師は、道徳や倫理というものを捨てている。いや、興味がないと言った方が良いかもしれない。魔術に求められるのはシンプルな思考だから、それを惑わす余計なものは、枷でしかないからな」


 律華は2人から離れていく。30メートルほど間を開けたところで、彼女は振り向いた。


「ともかく、魔術の行使自体は問題なさそうだ。後は、実戦あるのみ。私との魔術戦で、鍛えてやる」


 律華の両手には、運動会で使われる大玉ぐらいの火球が2つ現れる。


「さあ、こいつを防いでみろ。そして、私を倒してみせろ!」


 鬼教官による地獄の特訓が、幕を開けた。

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