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神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
生命のはじまり、火の襲来

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生命のはじまり、火の襲来 第3章ー4

 それは、突然の出来事だった。


 校舎を抜け出て、正門にたどり着いた時。神皆葉は突如、空を舞っていた。竜律華によって、円麗もろとも、空中に放り投げられたからだ。女――いや人間とは思えない怪力で、2人は上空数十メートルの高さまで、投げ飛ばされた。


「何を」


 理由を聞こうとしたが、その時間はなかった。間髪置かずに、竜律華も2人の高さまでジャンプしたが、同時に地面で爆発が起きた。遠方から飛来した物体が、ちょうど正門のあるところに着弾した瞬間、地獄のごとき炎が、その周囲数百メートルを覆い尽くした。


 直撃は避けられたものの、上空にいる三人にも、その爆風が襲いかかる。


「きゃああああ!」

「うわあああ!」


 学生2人が叫ぶ。しかし、律華は動じずに、2人の盾となるように、爆風と対峙した。前面に青い障壁を展開し、爆風を防ぐ。だが、突発的な対応だったためか、障壁には見る見る内に綻びができ、やがてガラスが砕けるかのように、消え去った。


「くぅ!」


 障壁が消えると、今度は2人の身体を抱えて、その身を盾にした。膨大な熱量が背中を焼き、律華は苦悶の表情を浮かべる。


「くぅ、あああああ……!」


「「先生!?」」


 2人は、師の顔を見る。苦しそうにしてはいるが、2人の視線が注がれると、律華は凛とした表情をして、安心させようとする。


 やがて、炎が止み、爆風も治まった。爆風によって上昇し続けた3人は、ようやく落下軌道に入る。だが、


「……」


 律華は、もはや意識を保てていなかった。2人を力強く抱えたまま、律華は落ちていく。


「……もう、いやあああああ!」


「円さん、落ち着いて」


「この状況で、どう落ち着けっていうのよ! こんな高さから落ちたら、死ぬに決まってるじゃない!」


「そうとは限らない。この高さから落ちても、重傷で済んだ例がなくは」


「そんなの、極一部の話でしょう!? 都合良く私たちが助かるなんて、ありえない!」


 身動きすら許されず、追いつめられた麗は、錯乱して皆葉に八つ当たりする。


「そもそも、こんな状況になったのも、君のせいでしょう! 君が何をしたか知らないけど、こんな馬鹿げたことに巻き込まれるのは、全部君のせい!」


「……そうかもしれないね」


「……シン君?」


「未だに、どうしてこうなっているのか、僕には分からない。だけど、一つだけ言わせて欲しい」


 それは、麗に対する怒りではなく、



「――君と、会えて良かった。死ぬまでに友達ができて、少しでも人間らしいひとときが過ごせて、僕は嬉しかったよ」



 素直に出せなかった、感謝の言葉だった。


「シン……君」


 麗は、暫し言葉を失う。思いがけない皆葉の態度に、どんな返事をしてあげれば良いのか、分からない。なぜか、顔が火照ってしまう。


「……はあ。そういうことは、もっと早く言おうよ」


 気づけば、怒りは消え失せていた。落ち着いたのか、麗は笑顔を浮かべる。


「もっと早ければ、……ごにょごにょ……な仲にも、慣れたかもしれないのに」


「円さん?」


「ああ……もういいや。私も、最後に楽しい人と一緒にいられたから、これで満足しておくわ。ありがとね、シン君」


「ん!?」


 密接しているせいで、皆葉はそれを避けることができなかった。軽く、口の中に異物が進入してくる。その感覚は、彼にとって悪くないものだった。


「私のはじめて、君にあげちゃった。……君は、どうなの?」

「……僕も、はじ」



『悪いな、麗。私(オレ)は、二度目なんだわ』



「え?」


 突如、皆葉の意思とは無関係に、彼の口が言葉を紡ぎ、皆葉は困惑する。それと同時に落下が止まり、3人は反転して、空中に浮遊している。


「シン……君? これは、君が?」

「ちが」



『ああ、私(オレ)がやった。あと、気にするな。別に、付き合ってる相手がいるわけでもないし』



「な、また? く……」


『悪いな、少し眠ってろや』


「シン君?」


 麗は、皆葉が困惑する理由が分からない。いや、まるで2人の『神皆葉』が、交互にしゃべっているかのような。そんなやりとりが、目の前で繰り広げられている。


「さて、麗よ。お前は無理矢理満足しようとしたが、私(オレ)の欲求は治まらんのよ。だから、まだまだ、付き合ってもらうぜ」


「……あなた、誰?」


「私(オレ)? お前も知っての通り、神皆葉だが?」


「違う。私の知ってるシン君は、あなたみたいな人じゃない」


 麗は知っている。神皆葉という人間を。出会って1日程度しか経っていないが、彼の人となりを、

 麗は知っている。目の前にいる彼の顔をした男は、その人物像とは、真逆だ。


「ふんむ……なら、彩(さい)破(は)とでも呼ぶがいい。ともかく、その問答は後にしようか」


 彩破の全身が緑色に輝く。短髪だった髪が、腰までの長さになり、色も黒から緑色に変わっていった。右耳には、どこから現れたのか、緑色のピアスが装着されている。


 そして、彩破は拘束する律華の腕を無理矢理こじ開け、逆に2人を抱え込んだ。


「さて、さっきの射撃はどこからかなーっと」


 大地をキョロキョロと見渡す彩破。すると、



「いやあああああ!」



 ちょうど先刻の射撃が行われたところから、大きな女の悲鳴が聞こえてきた。その悲鳴を聞いた瞬間、彩破は、


「そうか、そこにいるのか。私(オレ)様の、獲物が!」


 舌なめずりをして、その場所へ向かって高速で飛翔していく。

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