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神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
生命のはじまり、火の襲来

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生命のはじまり、火の襲来 第2章ー3

 皆葉が連れて行かれたのは、屋上だった。ホームルーム開始前のため、彼ら以外には誰もいない。教師たちの目も、ここには届かない。


「さて、中二病野郎。落とし前をつけてもらおうか」


「落とし前? さっき、僕は謝ったはずだが、これ以上何が必要だというのだ?」


「その偉そうな態度の、どこが謝っているだ! 落とし前っつったら、これに決まってるだろうが!」


 男は、指で丸を作る。すなわち、金を寄越せということのようだ。


「なるほど、お金か。だが、僕はボンビー学生でね。生活費が少ししかないのだよ。残念ながら、君たちに上げられるお金は一銭もない。じゃ、そういうことで」


 立ち去ろうとする皆葉。だが、当然それを許すはずもなく、男たちは立ち塞がる。


「なめた口利いてんじゃねえぞ、こらあ!」


 背後から、男が皆葉に手を伸ばす。皆葉は男の行動を読んでいたのか、軽く頭を横にずらして回避した。だが、わずかに避けそこない、男の拳は皆葉の眼帯を掠め、留め具が外れてしまった。


「……」


 床に落ちていく眼帯を、皆葉は両(・)目(・)で(・)見ていた。その動きに、他ならぬ皆葉は驚いていた。


「あ……れ?」


 突然の異変に、皆葉は驚く。確認するべく、左目を閉じて、右目だけで周りを見てみる。その目には、光が戻っていた。


(なぜだろう? 完全に見えなくなっていたのに、僕の目には、すべてが見えている)


 右目は、円滑に動いていた。次々と迫り来る男たちの動きを、まるでビデオをスロー再生しているかのように、ゆっくりと感じ取っていた。そして、自然に身体は、回避行動をとっていた。


「何だか分からないけど、ともかく、ありがとう。君たちのおかげかは知らないけど、なぜか見えるようになったよ」


 踊るように攻撃を避け、適当に距離を取ってから、皆葉は感謝の意を示した。それは、心からの言葉だった。しかし、男たちの気が治まるはずもなく、


「何訳の分からないこといってやがんだ、てめえ! もういい。お前ら、やっちまえ!」


 男の指示を受け、手下達は獲物を出す。ナイフだ。物騒な物を持っているなーという感想を持ちながらも、皆葉は慌てることもなく、逆に落ち着いていた。


「君たち、そんな物を出したら危ないよ。お金はないけど、チ○ルチョコを上げるから、勘弁してくれないか?」


「アホかー! やれ、ぶっ殺せ!」


 手下は、一斉に皆葉に襲いかかった。迫り来る四つの刃。出口までは遠く、後ろを向いたら刺されてしまう。だから皆葉は、逆に彼らに近づいた。


「お気に召さなかった? なら、オマケに一人十円あげるから、それで我慢してもらえないだろうか?」


 再び回転しながら皆葉は回避する。その動きからか、もしくは言動から火を点けられたのかは分からないが、男たちの怒りは、もはや沸点を大幅に超過していた。


「このドケチ野郎が!」


 刺突の嵐が巻き起こる。間髪入れない攻撃に、さすがに皆葉も疲れてきたのか、動きが鈍くなった。バランスを崩して、回転が止まってしまう。


「あ」


 すかさず、ナイフが襲いかかってくる。四方から迫る刃に、皆葉の逃げる道はない。


(あーあ。ここで、僕も終わりなのかな)


 まるで他人事のように、自分のことを見つめる皆葉。ゆっくりとナイフが迫ってくる。そして、



「ぐ……ふ!」



 肉が、抉られた。腹からは鮮血が徐々に流れ落ちていく。血の流れと共に、痛みも増していく。


(痛い。……いたいイタイ、ITA……I、……あ、れ?)


 皆葉の全身から力が抜けていく。膝が折れて、仰向けに倒れた。

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