バザールでござーる?
残念ながらアクセサリーの店では「これ!」といった品物が見つからなかった。
ローザさんとエルザさんにはニコニコ(ニヤニヤじゃない)、お店に行く前にファンに腕輪をもらう話をしたのでそれなりのお店に案内してくれた。
きちんと店舗をかまえた店の他に女性に評判のいいアクセサリーのお店もあり、テントで営業している市場もめぐった。
そこで買ったものは同僚のユッカへのお土産・・・ストラップとして使えそうなきれいなピンク色の飾り石と、通常サイズのタビーの黒い毛皮に似合いそうな首輪にできそうな赤いベルト。
分類としては腕輪の一種らしいので輪ゴムひとつで大騒ぎになったファンの誤解のないように気をつけないと。
あの輪ゴムはファンが「もらっていいか?」と言ったので却下してハサミを入れた上でゴミ箱行きでした。
エルザさんとローザさんにはさまれる形で並んで歩いていると、向こうからやってくる人に目が釘づけになりました。
な ん で ち ょ ん ま げ の 人 が ?
金髪の頭をしていてみるからに日本人ではなく、ちょんまげにひざ上の白い貫頭衣を黒い腰紐で結び、腰に刀ではなく剣を佩いて編み上げサンダルスタイルの男の人二人連れとすれ違いました。
私がガン見しているのに気付いてはいるものの、そういう視線に慣れているのか二人はチラリとこちらを見て通り過ぎていきます。
「ファリサさん、お知り合いでした?」
急に立ち止まった私にエルザさんが顔を覗き込んで尋ねてきました。
「い、いえ。ちょっと珍しいなと思って。」
ローザさんはすれ違った彼らをチラリと見て「ああ、クロオビの人たちですね。」と事もなげに言った。
「確かに黒帯でしたけど。」
きれいな月代もあったのでかなり印象的な人たちなのですっかり目に焼きついた。
「ああ!帯じゃなくて国名が【クロオビ】なんですよ。」
エルザさんが私の勘違いを指摘したので、ある程度知られた国の人なのでしょう。
「へ、へぇ。」
・・・後でアオイさんに話を聞いてみよう。
そう思っていると「あの国では強い人しかあの黒い帯を身につけられないそうですよ。他にも白い帯、茶色の帯の者もいました。」と追加情報が。
それ、どこかで日本人か日本かぶれした人が関わっていそうと思うのは私だけでしょうか。
「でもクロオビを訪問した時に国王さまは赤と白の帯だった・・・」
・・・なんかめでたい色だな。
「へぇ~。よく見てますね。」
「いえ、一人だけそうだと目立ちますから。」
まぁ確かに。
「珍しいと言えば、ほら、あちらの店が。」
エルザさんが視線を向けた方を見ると特に変わり映えしないテントのお店がありました。
「本屋さん?」
日よけのある店内には紙のようなものが積み重なっている。
「絵姿屋ですよ。」
「絵姿って?」
「有名な騎士とか冒険者、神話の英雄、近頃でしたら人気の役者や歌手の絵姿を売っている店です。」
肖像権なんてなさそうなこの世界だけど、ブロマイドみたいなものかと店に寄ってみると・・・。
「なんかゼットさんみたいな人の絵がある~。」
「それは在りし日のナガラー様の絵姿です。」
すかさず横からローザさんが教えてくれる。
「へぇ・・・。(あれがアオイさんの旦那さんのレージさんか)」
「お嬢さん。お気に入りの絵がありましたら金属に貼り付ける加工もできますよ。」
人の良さそうな笑みを浮かべた店主らしきひげもじゃの太ったおじさんが座ったまま声をかけてきた。
「金属の盆や皿、兜や盾なんかにも貼る方もおられますよ。」
「・・・ひげの生えていない方も多いんですね。」
半分くらいティルディグのハンサム要件を満たしている長髪&ひげのガチムチマッチョの絵で占められているものの、女性の絵を除けば残りはヒゲのない人のように見える。
ちょっと胸やけしそうな品ぞろえです。
「他国の方もおられますからね。それに新進の冒険者なんかもそうですね。」
そういうエルザさんの手には甲冑に身をつつんでウマに乗った男性の絵が握られていた。
ローザさんも「私ももしお店があったらって、絵姿を頼まれてたの。店主、近衛隊の新しい絵姿はあるかしら。」とやっている。
二人の買い物を横目に奥を見てみると、絵だけでなく一緒に文字が書かれているものもある。
「そちらは冒険者の活躍を書き添えたものです。」
「わっ。」
いきなり後ろから声をかけられびっくりする。
「これなんてどうですか?大猿討伐の絵姿です。」
店主が手に持ったのは人間の倍はありそうな大きな猿?に大剣を向ける一人の冒険者の絵だった。
「絵姿師が討伐に同行してまで書いた絵です。新人ですが元冒険者で構成も色遣いもよく躍動感もあって、この絵姿師のものはすぐに売り切れる人気の品。しかも今日入ったばかりですよ。」
・・・この冒険者、体つきとか大きな剣がちょっとファンに似ているっぽいなと思った。
「同じ絵姿師の作で、ヒュドラと冒険者のものもあります。」
こちらはチームなのか数人が緑のヒュドラと戦っている絵だった。
・・・兄のお土産に買っていこうか。
店主に値段を聞くと、一枚の値段は3千円程度の値段だった。
一点ものは高くなるが、同じ構図のものを何枚も書くので一般に流通するものは手書きでも価格をおさえていると説明された。
それでもこの絵は庶民用にしては高い部類に入るそう。
安いものはワンコインくらいで買えるとのこと。(ただし白黒)
二枚を購入すると、店主はサービスに『世界手札』(そういう商品名)をプレゼントしてくれた。
トレーディングカード的なものでサイズは冒険者カードと同じくらいのサイズで絵姿の安いものの廉価版といった感じだった。
私がもらったのは武装した?知らないおじさんの絵に何やら文字が書いてある。
冒険者や騎士・神話の英雄やモンスター・薬草や毒草・武器や防具・鉱石などが簡単な説明文や対処法など書かれたカードを集めるのが首都の子供で流行っているそうだ。
鉱石と毒草や薬草類だけ似たものと間違えないように着色されている。
それぞれのギルドでも制作・販売しているのでそこでも購入できると言われ、商魂たくましいのはどこでも同じだな、と感じた。
印刷技術もないのに大変だなぁと思っていると、怪我などで引退した冒険者も携わっていると聞きちょっと納得した。
スタンプがあるなら版画にすれば楽なのに・・・とチラリと思う。
*
ティルディグの首都アザンプールの市場には色んな国の色んな人種がいた。
髪の毛でファンタジー世界な色(青や緑など)の人はいなかったけど、金・銀・赤・茶・黒・白・グレー・・・と地球でみかけるような色はみかけたし、肌や瞳の色、民族衣装なのかさまざまな服装の人も見た。
女性の服装は肌を露出はしないものの、頭を隠したり帽子をかぶったりする人がいる傍ら、髪を結いあげた人、髪をたらしている人、ローブや仮面をかぶって顔を隠している人など多種多様だった。
おおむね日本人よりは体格がよく男女ともにがっしりとしている。
どこに行っても自分が若くみられる理由が少しわかった気がした。
バザールのお店は食べ物・飲み物の他に、衣類(庶民向けのもので古着が多い)・布・毛皮・皮、宝石(庶民でも買えそうな色のついた小さな石)やアクセサリー、家具や絨毯、武器・防具、杖(魔法使いや僧侶用)をはじめ、冒険者向けの携帯食料や便利グッズがあった。
絵姿はいつも販売しているとは限らないので珍しいそうだ。
噴水広場のお土産の絵を描いていた人と店主がなんとなく似ていたような気もするけど・・・。
やはり一番多いのは食べ物関係で、三人で食事に障らない程度に買い食いをしたりお土産も購入した。
ファンに贈る腕輪はみつからなかったけど、楽しい観光&市場体験を終え、お土産とともにアオイさんの館に戻ることができました。
・・・あ、新しい出会い?もあったっけ。
ヤトヴィル君という小さい男の子の母親に間違われ、手紙をもらうことになったから文字の練習もしておかないと・・・。




