成功と懸念
*またもやファン視点です。
「やった!やったよ!」
リサの指先に小さな白光がともり、数瞬ののち儚く消える。
「見たよね?」
自分の足の間に座っていたリサは振り向いて満面の笑みを見せている。
リサは足の間から抜け出して正面に座りなおすと、続けて"光"を生み出すがそれも長く続かなかった。
リサによると掌より指先の方が放出のイメージがしやすいそうだ。
「どうしてちょっとしか光らないのかな。光も弱いしこれじゃあ蓄光塗料に負けてるよ。」と首をかしげるリサ。
「今日初めての"光"だから仕方ない。もう少し魔力の循環と放出の調整を練習しよう。そのうち呼吸をするように自然に行えるはずだ。」
俺は手元の"りもこん"をとって部屋の照明を点す。
「前にも説明したが、魔力の放出は必ずしも体と接している場所でなくてもいい。体と接しているのに慣れすぎると発現場所に制限がかかる。」
「そうね~、今のじゃシャボン玉みたいに気を抜いたらしぼんじゃうんだよね。"光"の切り離しできてないし。」
「"しゃぼんだま"?」
俺の疑問にリサは「食器洗いの洗剤の泡みたいなもので、ストローは知ってるよね?で、そのストローで息を吹いて泡を飛ばすの。」と説明をしてくれる。
泡はわかるが想像がつかない。
「見せるからキッチンに来て。」
リサはすっくと立ち上がり、自分に手を差し出す。
ひきだしから赤いストローを取り出したリサが洗剤を水で溶かしたもので「ふう」と息を吹き込む。
「・・・ああ、成程。リサは魔力に流れをつけて流れるか吹き込むイメージで"光"を発現してるんだな?」
俺の言葉に「水道の蛇口みたいなイメージなんだけどなかなかうまくいかなくて。」とストローを持ったまま頷く。
「魔力の放出と言ってもそういうのじゃなくて・・・なんと言うか、もっとバッと切り離すと言うか・・・表現が難しいな。"移動"みたいに自分の思う場所に術を発現させる・・・うーん。」
魔力の放出は感覚的なものなので説明が難しい。
自分は他の人の魔法を参考にして最初から体から切り離していたので、リサのやり方の発想はなかった。
リサのやり方はオイルランプのようなものなのだろう。
効率としては悪い。
「もうちょっと考えてみる。一朝一夕でできるものでもないだろうしね、一回できたんだからもっと上手になるように練習するよ!」
リサは目をキラキラさせて自分の手を眺めていた。
よほど"光"の魔法が嬉しかったのだろう。
聞こえていないと思っているのか離れつつも「ライトッ、ライトッ♪」と小声で連呼している。
自分が初めて魔法が使えるようになったあの日はどうだったか・・・。
懐かしいものと苦い思いが交差して・・・追憶を断ち切った。
*
「にゃーん。」
リサの足元に魔物がすり寄る。
リサは魔物を抱き上げ、少し離れた場所に降ろし戻ってくると、屈んで指先に"光"を発現した。
「タビー。見てみて!"光"っ!」
指先にあわせてゆらゆら動く小さな光球に興味を示したのか魔物が近づいてゆく。
先ほどより"光"が持続していたものの、魔物が側に辿りついた時には効果を失っていた。
魔物は匂いをかぐように鼻を近づけリサの指をペロリと舐める。
「タビー。もう一回いくよ~。」
魔物の前で指を振り、横を向いて魔物が直視しないように"光"を発生させる。
その瞬間魔物はリサの指先にある光球にじゃれつくような動作を見せた。
「ほーら、タビー。ゆらゆら~。こっちだよ~。」
魔物はいとけない動物のようにじゃれついている。
リサも調子にのって魔物の前で指を動かしている。
「うりゃー、"光"!」
何回か目の"光"はリサが魔法を意識していないせいか、かなりスムーズに発現した。
光球は爪くらいの大きさで光はまだかなり弱い。
その瞬間。
魔物はリサの指に飛びかかった。
光球ごとリサの指をパクリと食らいつく。
「!!」
「リサッ!」
魔物め!本性を現したか!
"収納"から剣を取り出し、魔物に向けようとすると「ファン!ちょっとタンマ!」とリサが魔物を庇った。
「大丈夫だから!まさか手じゃなくて口でくるとは思わなかったけど、剣はやめて!」
突き出したリサの右手には指が欠けることなく揃っていた。しかし、その指先は血が滲んでいる。
「"治療"!」
リサの腕の中でおとなしくなった魔物の始末よりも、リサの治療が先だった。
一度アオイさまに"この魔物"が"使役獣"なのか確認していただいた方がいいかもしれない。
かつて飛竜種を使役していたアオイさまなら、自分が断片的にしか知らない知識もご存じのことだろう。
もし、ただの"魔物"だったとしたら、血の味を覚えただろう"魔物"は放置できない。




