え?それダメなの?
ファンとタビーを家に残して今日から仕事です!
少し不安が残るものの、なんとなくうまく距離をとっているタビーとファンの様子に「頻繁にはスマホは見れないけど、何かあったら電話してね。」と仕事に出ることにしました。
二階で支度をして、化粧もして降りてくると、さっきまで普通だったファンが不機嫌そうな表情に・・・。
指輪は仕事中はつけられないからネックレスに通してあってファンにも事情を伝えてあるけど、何がいけなかった?
「・・・スカート丈短かった?」
通勤服のスカート丈(膝が出てるから?)がお気に召さないのかと聞いてみると、首を横にふるファン。
まさか仕事に行くのが気に喰わないとかじゃないよね?
ファンはゆっくりと手を伸ばすと、私の左手を掴んだ。
「この腕輪、いつ、誰に、貰った?」
声が氷点下です。
顔もちょっと怖いけど。
「腕輪じゃなくて時計なんだけど・・・」と言いかけて、「ティルディグには腕時計がない・・・のよね?」と質問に変えた。
ファンは「腕、時計?」と掴んだ手につけている時計を凝視する。
そして壁の時計と見比べて納得したような表情になる。
「・・・できれば外して欲しい。」
「自分で買ったのもダメなの?」
ファンは少し考えて「リサがどうしても必要というなら・・・仕方ない。でも、できれば外して欲しい。」とまっすぐこちらを見つめて言った。
私は普段はあまり時計は身につけない方だ。
今日はたまたま「久しぶりに~」とつけただけだし・・・。
ファンは金属のベルトのはずし方がわからないようだ。
「いいよ。ファンのために手首あけとくから。」
独占欲なのかな?
某ブランドの自分にご褒美で買った時計だったけど、つけなくてもいいから外しておこう。
ティルディグの人のこだわりはよくわからないけど、まぁいいや。
左手から時計を外してファンの手に渡す。
「向こうに帰ったらすぐ腕輪を用意するから。」
「ありがとう。」
私も早く腕輪を用意しないといけないな・・・。
このファンの様子ならすぐお返しした方が良さそうだし。
ファンは「これでもいいけど?」と渡した時計を腕にはめようとした。
もちろんベルトのサイズが合わない。
「だーめーよ。私のサイズだし、それ女ものだから。」
ファンから時計を取り返して、テーブルの上に置いておく。
「じゃあ行ってくるね。ぜったい勝手に"取り寄せ"しちゃダメよ!」
*
「亜莉紗、化粧品変えた?なんか肌がいい感じ。どこのメーカーのにしたの?それともエステ?」
同期のユッカが朝礼の後にこっそり囁いてきた。
私はファイルを取り出しながら「化粧?いつものやつから変えてないよ~。」ととぼける。
「なんか若返った感じ。」
ギクリ。
魔力効果?で肌が活性化しているらしい私は、アオイさんに言わせると少し若返っているそうだ。
しかも魔力が循環するとともにアオイさんのように老化が遅くなっているらしい・・・。
ユッカはニヤリとしてまわりに聞こえないように「ダーリンのおかげ?」と囁いて私の返事を聞かずに退散して行った。
しばらくは年下の恋人のおかげで通るかなぁ。
たしかにファンのおかげと言えばおかげだけど(恥)
魔力云々がなくても絶対なにか肌にいいホルモンが出まくりだと思う。
アオイさんのように何十年も経つとごまかせなくなるかもしれないけど、私の場合はまだまだ大丈夫だろう。
そもそも召喚でチート?のアオイさんと同じようになるかもわからないし、魔法だってまだ何も使えない状態の私。
ファンがいる今週のうちにぜひとも"光"くらい取得したい!
あ、ダメだ。
仕事仕事。仕事に集中だって!
開店前のお店だけど、早く帰るためにも注意力散漫にならないように集中しなきゃ!
*
トラブルはなかったけど定時より少し長くなった仕事が終わって、ユッカと一緒に店を出る。
ユッカは月曜日から彼氏とデートだそうでお迎えが来ていた。
いつも迎えに来てるけど、彼氏何の仕事してるんだろう。
私はユッカと別れて歩き出す。
ファンに何か買ってきて欲しいものがないか電話してみると「まわりに人はいないか?」と聞かれ、「うん。」と言ったばかりに自宅に"取り寄せ"られてしまった。
「・・・ファン。玄関なら"取り寄せて"いいっていいって訳じゃないのよ?」
さっきまで目の前の彼と話していたスマホの通話を終了し、スマホをしまおうとした右手をファンにおさえられる。
あれ?
今朝もこんなことあったよね?
「リサ。これは?」
ひんやりとしたファンの声音に「は?」と間抜けな顔をして聞き返す。
右手なんて何もつけてない・・・と思ってファンに掴まれた手を見てみると。
輪 ゴ ム が 一 本 、 手 首 に か け て あ り ま し た 。
仕事中に捨てようと思ってた輪ゴムをつけたまま、気づかず・・・。
それすらもダメなのか・・・org




