"持ち帰られた男"と"取り寄せ可能な女"・・・と、その猫
しばらくは不定期更新になります。
「やっぱりリサは肝がすわってる。」
タビーが私の太股の上に居座っているのを苦々しく思っているようだが、家に帰ってもファンはタビーの側には寄らなかった。
タビーも剣を向けられたせいかファンに構おうとしないし、知っていて無視するようなそぶりを感じる。
「まさか一緒に寝ない・・・よな?」
ファンが嫌そうな顔で尋ねてきた。
「え、ダメ?」
「・・・駄目だ。」
タビーは気持ちよさそうに丸くなっている。
しっぽが『たしん、たしん』と一定のリズムで私の太ももを打っているので、目を瞑っていてもタビーは起きているのだと思われる。
「リサのベッドにそれがいるなら、俺は別の場所で寝る。」
「えー・・・。」
ファンはわざわざソファの後ろにまわって、座っている私の頬にキスをした。
「そんな小さいのがいたら潰しても責任はとれない。」
・・・それを言われるとありえそうだし、猫の苦手な人に強制もできないし、仕方ないと思うしかないのかな。
「一緒に寝るならそれは洗っておいた方がいい。」
まぁ確かに外で過ごしていたならシャンプーは必須だろう。
ダニとかいたら嫌だし。(この前は猫用のシャンプーを用意していなくてそのままだった。)
「タビー・・・お風呂・・・入ろうか。」
私が風呂に入っていると浴槽のふちに腰をかけて様子をうかがっているタビーだけど、お風呂に入りたそうなそぶりは見たことがない。
一般的に猫は洗われるのはキライだろうから苦労しそうだな・・・。
風呂に入れてみると・・・やはり、それは私の杞憂ではなかった。
*
「賢いと思っても、所詮・・・猫は猫だったわ。」
タビーにちょっと手をひっかかれてファンが「"治癒"!」と大騒ぎをするのをよそに、濡れてガリガリになったタビーをなんとかタオルドライしたもののドライヤーを動かした瞬間、再び「フシャー!」と逃げられてしまった。
かなり不信感を持たれちゃったかもしれない。
ファンはタオルドライするまでタビーによって被害にあった濡れた床を拭いてくれた。
気が利く男だ。
この前、入浴中の私を"呼び寄せ"て床を濡らしてから床拭きが上手になったと思う。
「今度はリサが風呂に入ってくるといい。俺は少し飲みすぎたから朝入る。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね。遅い時間までつきあってくれてありがとう。」
私はあくびを噛み殺しながら、タビーに濡らされた服に手をかける。
「あ、ファン。お布団まだ敷いてないから私のベッドで寝て。部屋の戸は閉まってるからタビーも入れないし、寝る前にタビーを布団に連れて行くから。(たぶん)」
「・・・そうさせてもらう。」
ファンもあくびをひとつして着ていたシャツを脱いで洗濯カゴに入れた。
シャツの下は素肌だ。そしてファンは何もない日はパンツ(ズボンの方ね)を穿いたまま寝る。
普段は何かあったらすぐに動けるように・・・らしいけど、裸で寝てる日はどうするつもりなんだろう?
仕事中は靴も履いたまま寝ているらしいファン。
少しアルコール臭のするファンにチュッと唇にキスをされて「おやすみ。」と挨拶を交わした。
*
私は風呂からあがって、布団を敷いてタビーを探す。
食器棚の上にもカーテンの裏にも、キッチンやソファにもテーブルの下の椅子や階段や隙間にもいない。
押し入れも開いてなかった(モチロン中を見た←たまに入って寝てることもあるから)し変だな・・・
まさか閉めてあった自分の部屋?
窓が開いた網戸だけ(不用心だけど)の暗い部屋の中にそっと入ってみる。
ファンは気持ちよさそうにベッドの上で寝息を立てていた。
まさかいないよな~と思ってベッドを覗き込むと、ファンの腕と脇の間でタビーはCの字状態で寝ていた。
え、ちょっとどういうこと?
タビーってファンのこと無視してなかったっけ?
私は風呂場で無理やり洗ったからファンに乗り換えたの?!
それともベッドが定位置で寝てるのはファンでもいいの?
ちょっと嫉妬でメラッときました・・・が、気持ち良さそうに寄り添って?眠る一人と一匹を眺めていると、なんだかほんわかとした気持ちになってきて「ま、幸せそうだしいっか。」と自分の部屋を後にしたのでした。
翌朝、ファンの「うわっ!!」という悲鳴に似た叫びで起こされるとも知らずに。
冒険者なのに魔物の侵入に気づけなかったファン。
害意はなかったのでセンサーにひっかからなかったのかも。




