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"おやっさんの店"は"幸運の宿り木"と言うらしい。

ファンと私と兄の三人で"おやっさんの店"に着いた。


"おやっさんの店"はドリューズの北門にほど近く、店のまわりを木に囲まれた木造の一見店という構えにみえない店だ。


一応大通りにつながる道もあり、街のはずれというほど外れでもない。


「ここは?」


兄が怪訝な顔で尋ねる。


「"おやっさんの店"。」


私が言うのとほとんど同時にファンが「屋号が"幸運の宿り木"というらしい。」と言う。


「どっかに看板あったっけ?」


「前に喧嘩で壊されてから看板は置いてないとおやっさんが言っていた。」


ティルディグにもヤドリギなるものがあるのか、アオイさんが持ち込んだ言葉なのかは謎のまま・・・。




ファンが入口を押して店内に入る。


「先ほどは失礼した。」


ファンは先ほどと言ったけど、自分たちの時間に直すと2週間ぶりになる。


「なんだったんだ、一体。」


「お騒がせしてすみませんでした。」


私が後ろから謝ると「おっ、ファリサちゃんたち着替えてきたのか?オアツイことで。」とタムじいがニヤニヤした。


2週間前の服装の違いまで考えていませんでした。


タムさん達にしてみればつい"さっき"。


・・・別にやましいことはないけど、何か意味ありげな視線がいたたまれません。


「いえ、兄を連れて来たので・・・。」


「「兄!!」」


おやっさんとタムじいが顔を見合わせて「「フツーだな。」」と囁き合った。


「ファリサちゃんに似てると言えば似てるなぁ。」


「おやっさん、タムさん。うちの兄でドュニューです。」


兄は私の後頭部をチョップした。


「はじめまして。川原 潤です。亜莉紗(ありさ)がいつもお世話になってます。」


兄の自己紹介に「ドュニューさんか、よろしく。」と二人ともニコニコしていた。


「いえ、 ジ ュ ン です!」


兄も私と同じやりとりを繰り返している。


便利な異世界自動翻訳は日本名は正確に翻訳できないのだ(笑)


何回かのやりとりを楽しんだ後に「ジェイって愛称なの。そう呼んであげて。」と助け舟を出してあげた。







今日はファンが兄の家まで送り届ける予定なので、車を運転しない兄はそこそこにお酒を口にした。


私も軽くいつものを飲んだけど、兄が何か変なことを口走らないか監視していたので全然酔えなかった。


兄、現地通貨を持ってないのにポンポン注文するな!


一番年下のファンが「リサは気にするな。」って全額会計してくれましたよ、本当にもう!


気にしますから!




アオイさんは時間を気にしなくても日本に移動できると言っていたけれど、私はまだ自信がないので当日内(いつもの時間)に帰ることにしました。


もし、時間が自由になるならファンの家やアオイさんの館に行くこともできるようになるでしょう。


まじめに魔力の訓練をしてもっと自在に行き来できるようになるといいな♪




ドリューズの北門から私を真ん中にして3人で手をつなぎ道を歩きます。


もうそろそろかな・・・。


そう思っていると、どこからか「にゃーん。」と鳴き声が聞こえた。







ファンが私の手を離し、声の聞こえた林の方に身構えた。




「あ、ファン。大丈夫。たぶんタビーだから。」


私がバッグから鰹節のパックを出すと「前に猫を拾ったって言ってたでしょ?」とファンに笑いかける。


草をガサガサを音を立てて近づいてくる音がする。


ファンが"収納"から剣を出して「リサ、下がって!」と私の前に立った。


「にゃーん。」


草むらから出て来たのは白い靴下をはいたような黒い猫・・・タビーだった。


「あれがタビーよ。ファン、剣をしまって大丈夫だから。」


「リサ!」


タビーはファンの方をチラリと見て、視線をこちらに向ける。


「猫じゃないか。可愛いなぁ。おいで~。」


兄も私に負けず劣らず動物が好きだ。


タビーに向かって手を出してチッチッと呼んでいる。


「ファン。前に言ったでしょ?うちで飼ってたって猫のタビーだって。」


タビーに向かって剣を構えるファンの腕をそっとおさえた。


もしかしてファンは猫に剣を向けるくらい大っきらいなの?


「・・・リサ。あれは"魔物(シャー)"だ。」


「?ゼットさんも(シャー)?だって言ってたから知ってるけど?」


ファンの腕が一瞬ピクンと強張った。


「タビー、一緒に帰る?」


「・・・にゃーん。」


「おいで~。ホラ、ファンも剣をしまって。物騒だから。」


そういえばゼットさんも猫嫌いだったなぁ。


ティルディグの人って猫はダメなのかな。


「ファン。」


ファンの腕をおさえたまま「ダメ?」と聞いてみる。


「リサが危ない・・・。」


「一週間一緒に暮らしたけど、ちょっと甘噛みされた程度だよ。猫ってそんなものだし、飼い猫経験もあるみたいだから。」


ファンは警戒をしつつ剣を消す。


まだ何か言いたげだ。


どんだけ私に過保護なのよ(笑)


「じゃあタビーおいで。」


私はその場にしゃがみ込み、掌に鰹節を出して(兄も欲しそうだったので兄の手の上にも出してやる)タビーをそばに寄せた。


まず私の手の上から鰹節をショリショリ食べるタビー。


ザリザリと何もなくなった掌を舐められ、次は兄の方へと進む。


「タビー。私の兄の潤て言うの。ヘンな人じゃないから大丈夫よ。」


兄の前に行って、フンフンと匂いをかいでいたタビーは私にするようにシャリシャリと鰹節を食べ始めた。


「お兄ちゃん、ズルイなぁ。私なんてタビーに触るまで何年もかかったのに。」




ファンは私の横でタビーとのやりとりを堅い表情で見つめていました。




「魔物じゃなくて・・・使役獣?」




「ん?何か言った?」


ファンは「・・・いや、いい。」と言葉を濁して首をふりました。




こうして3人と1匹は、何事もなかったかのようにそのまま日本に戻ったのでした。


私ごとで申し訳ありませんが、しばらく更新が滞る予定です。



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