表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータス『0』の観測兵 ~クラス転移を離れた少年は、砲火と魔法の異世界で昇進させられる~  作者: ハルキーノ
第三章 ”自己”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/128

四章十五話 錆びた約束、影の追跡者

《辺境者の歌》 四章 十五節

『影の追跡者は静けさの中で、約束の錆びる音を聞く。』


2374- 王都外縁 エリカ視点


 追跡そのものは、報告書に書けば数行で済んだ。


 保管庫の鍵は破られていない。記録札も合っている。仮保管棚だけが空だった。そういう盗み方をする相手は、手順を知っている。四人の子供たちが寄せ集めた細い手がかりは、迷わず廃鉱山街跡へ向かう一本の線になった。


 エリカが見ていたのは、手がかりの精度だけではなかった。


 男が抜き切る前に桐谷が銃身を弾き、三郷が退路を氷で塞ぎ、佐々木が手首を極める。三日前なら、この四人はもっと荒く仕留めていた。誰も余計に撃たず、誰も男を斬らなかった。


 それだけの差を、エリカは記録した。


 男は膝をついた。包みは落ちず、エリカの手に渡った。


「父さん」


 男が言った。


 その一言だけが、廃鉱山街跡の壁に少し残った。



 支部へ戻る途中、エリカは小さな布包みを別に取り出した。


 追跡の前、保管庫の脇棚から見つけていたものだ。親指ほどの硝子瓶。液体はほとんど残っていないのに、内側だけが薄く光る。


「それ、何ですか」


 桐谷が聞いた。


「浅層から出た副回収品。古い回復薬か、聖別水の失敗品か、その辺りだ。鑑定待ち」


「飲めるんですか」


「飲むな。遺跡から出た物を、きれいだからって口に入れるやつは早死にする」


 山崎が口を閉じた。


「今、ちょっと飲めそうって顔したな」


 三郷が言う。


「してない」


「してた」


 短いやり取りで、張りつめていた空気が少し戻った。


 それでも、金属箱の重さは変わらない。


 協会支部では、遺物は前と同じ棚に戻されなかった。


 封印場所の公開範囲。慰霊碑への複製銘板。遺族会への通知。


 手続きが増えた。増えた手続きは、たぶん面倒だ。


 けれど、面倒なものが増えなければ、あの男の父はまた番号になる。


 桐谷は、昨日写した名前の断片を出した。


 三郷が明かりを寄せる。


 佐々木が、読める字だけを別紙に移す。


 山崎は銃の手入れをしながら、時々文字を覗いた。


 追跡は終わった。


 でも、取り戻したものをどう扱うかは、まだ決まっていなかった。


――――――――


面白かったら、下記のリンクから評価やレビューをいただけると嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/822139841314440520/reviews

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ