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破壊者_全ての敵を破壊せし復讐/デストロイヤー_ペネトレイト・ヴェンジェンス  作者: D-delta
第一章 世界の裏と奥底の真実に隠れた憎き仇敵、復讐すべし
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▽1・6 人類連合軍・破壊者(デストロイヤー)

 空から落ちる二人。

 しかし機体と大型スラスターは動かせる。


「くっ! まだ動ける部分があるなら!」


 ヨシノリは大型スラスターの推力で無理やり飛行、ゆっくり落下しながら空中での姿勢を安定させた。


「ユリ少尉は?」


 心配して、すぐさまユリの方へ視線を向ける。


「あ、ぁ、タキ一等兵! 助けて!」


 視線の先には地に落ちる中をもがくだけで、助けを求めるユリの姿があった。

 パニック状態である。機能不全を示すアラート音が更にパニックを助長し、飛べることも忘れて心が恐怖に染まる。

 このまま墜落すればユリは負傷、最悪の場合死亡するだろう。


「今行きます、ユリ少尉」


 助けられる命を見捨てる訳にはいかない。

 ヨシノリは助けに行く。大型スラスターを限界出力にして、ユリのところへ駆ける。


「き、来た! タキ一等兵!」


 駆け付けたヨシノリを、ユリは目視。腕を伸ばして助けを求める。


「俺が下からスラスターで減速させてやれば、たぶんなんとかなるか!」


 助ける方法は決まった。

 まずは全ての武装を捨てて機体を軽くさせる。

 これで軽くなった分、スラスター速度が上がる。ユリの落下も減速させやすくなる。


「へ? どうするつもりなの?」


 地上に面しているユリの機体の正面へと移動。互いに向き合い、ユリの機体をしっかり掴んで背の大型スラスターを地上に向ける。


「なんとかなってくれよ!」


 そして大型スラスターを噴かした。

 ユリの落下を押し返すように落下速度を軽減させていく。


「クソ、高度が足りない! 減速し切れない!」


 しかし地上までの高度はもう20mもない。

 減速し切るには高度が足りない。


「ダメ! 死んじゃう!」

「こうなったら俺を下敷きにして!」


 大型スラスターの推力で減速し続けるものの、墜落は避けられない。


「このまま、このまま――」


 だからユリを助けるために、自分の機体を下敷きにして墜落した。

 墜落の衝撃が背中から全身の内臓や骨にまで伝わる。


「うっ……!」


 骨と内臓に響く一瞬の激痛。

 まだ死んではいない。まだ現実の光景を見ている。

 まだ体は万全に動くが、機体は動かない。


「機体はダメか。だと思った」


 HUD上に機体のエラーが大量に出ている。

 ユリの下敷きとなって墜落したせいで自機の駆動部の全てが故障。大型スラスターは押し潰され、完全に破壊されている。

 動かせる部分はない。もうガラクタ同然だ。


「脱出して外に出るしかない」


 残る選択肢は脱出。しかしユリの機体が覆い被さっているせいで脱出が出来ない。


「ユリ少尉! 機体を起こしてください!」


 通信は使えず、機体から出るために大声で目の前のユリに叫ぶ。


「ユリ少尉?」

「はぁ……はぁ……」


 自機に覆い被さったまま動かない。

 ユリは息を荒くして放心している。声は薄く届いていても、反応が出来ない。


「自力でなんとかするか」


 ヨシノリは自力で機体から出ることを実行。

 両手の拳で機体の内側から殴り、自機の胸部を(いびつ)に膨れ上がらせていく。


「ふんっ!」


 数発殴った後の最後の一発は思い切り殴り飛ばす。

 自機の胸部装甲もユリの機体も、ヨシノリの拳に退かされ、ようやく機体から出られるようになる。


「少尉! 生きていますか!」


 声を大きくして呼び掛ける。

 するとユリの機体がピクリと動く。ようやく呼び掛けに反応したのを見て、ヨシノリは機体から出る。


「タキ一等兵……」


 意識を戻したかのようにユリの機体は頭部と胸部を展開、ハッチが開く。


「少尉、大丈夫ですか?」

「私は大丈夫です、大丈夫……」


 機体の中から姿を現したユリに怪我はない。ちゃんと助けることが出来た。


「そっちの機体はどうですか?」

「えっと、火器管制システムはダメで、今は歩行するだけの(てっ)(かい)みたいな状態です」

「なるほど……」


 怪我がない代わりにユリの機体もガラクタ同然。

 武装も使えず、遅く歩くしか出来ないとなれば『ベースドアーマー』はもう使えないに等しい。


「少尉、機体はここで捨てましょう。自分たちの足で撤退する方が早いです」

「そう、ですね」


 二人はガラクタ同然の機体を捨てることにした。

 ユリも機体から出て、自らの足で地面に立つ。


「あ、これはもらいます。まだ使えるので」


 ヨシノリは撤退の護身用にと、ユリの機体から平然と40mmライフルを取る。


「へ?」


 ユリは思わず口を開ける。

 40mmライフルの重さは弾倉に弾薬が満タンなら50kgを超える。

 常人はそんなものを軽々持てない。それなのにヨシノリは片手で軽々持った。


「タキ一等兵――」


 あなたは人間ですか?

 そう言おうとしたユリの言葉は、一発の銃弾に遮られる。


「うっ!?」


 撃たれたのはヨシノリ。

 左腕を背後から撃たれ、欠損して地面に落ちる。


≪捕まえたと言った!≫


 ワープゲートからの狙撃。

 撃ってきたのはワープゲートから出現した、プランヴェル軍の機体。40mmライフルを構えている。


「タキ一等兵! 腕が!」

「狙撃します! ユリ少尉は俺の左腕を持って来てください!」

「え、はい!」


 狙撃には狙撃をし返す。

 残った右腕だけで銃口をワープゲートに留まる敵に向け、何千mと離れた距離にいる敵を照準器もなしで狙う。


≪フフフ……この距離で、生身の目で当てられる訳がない≫

「当てる」


 ヨシノリは片手で40mmライフルを撃った。常人なら発射時反動を受け切れず倒れるところを平然と立ったままでいる。

 そんな常人から外れた者が放った弾丸。人並み外れた命中精度で敵機の脳天を貫く。


≪当てられた!?≫

「次も当てる」


 一機目を撃破。

 続けて敵の二機目を狙う。


≪ようやく奴を兵器から引き剥がせたのだ、諦められるか!≫


 両者共に次弾を発射。

 ヨシノリが撃った弾丸はプランヴェル軍の二機目の脳天を再び貫いた。

 対してプランヴェルが撃った弾丸はヨシノリの右肩に直撃する。


「……っ」

≪あり()ない≫


 生身の人間の何倍も堅い『ベースドアーマー』の装甲を貫通もしくは大きく損傷させる威力の40mmライフル。


≪貴様は一体なんだ?≫


 人間に直撃すれば体の欠損は確実。それなのにヨシノリの右肩は欠損していない。

 まるで体が40mmライフルの威力を覚えたように直撃した弾丸を受け止めていた。


「こんなもの!」


 右肩を動かし、食い込んで潰れた弾丸を地面に落とす。

 弾丸の直撃で破れた衣服越しに怪我が見えても、すぐ治って元通りに戻っている。

 ヨシノリの右腕はなんの支障もない。


「タキ一等兵! あなたの左腕、持ってきました!」


 ユリが左腕を持って戻ってくる。


「その左腕、元の場所にくっ付けてください」

「くっ付ける!?」

「お願いします!」

「は、はい!」


 普通はくっ付けて治るものではない。そもそも接着出来るものでもない。

 それでもヨシノリは普通じゃない。

 ユリは困惑しながらも言われた通りにヨシノリの左腕を元の場所にくっ付けた。


「よし」

「え?」


 噓のように左腕が接着した。しかも指の一つ一つから腕の関節まで動かせる。

 ただくっ付けただけで左腕が完治(かんち)してしまった。


「逃げますよ、少尉。お体触ります」

「え、え? はい」


 ユリから体に触る了承を得た。

 早速ヨシノリは左腕のみでユリを持ち上げ、(たわら)(かつ)ぎする。


「ふぇ!?」

「行きます!」


 そして40mmライフルを片手に、ユリを担いだまま走った。

 その速さは時速300kmになり、一般の自動車よりも速く走って撤退していく。


≪タキ・ヨシノリ……これが破壊者(デストロイヤー)の力≫


 まさに化け物。


≪やはり危険だ≫


 プランヴェルは人間離れし過ぎたヨシノリの力を恐れ、これ以上は手を出さずに撤退を判断。撤退した後にワープゲートは閉じられる。

 戦場に残る者はもう誰もいない。

 戦闘は終わった。だが、新しい戦争の始まりは近い。

 また新しい戦争がこの先に待っている。

とりあえずここまで更新

ここから手直ししながら順次更新していきます

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