▽1・5 人類連合軍・反転、一転の状況
屋内から屋上へ脱出。ヨシノリは外へ出た。
「戻ってきたか、ヨシノリ!」
「ノア軍曹、全員無事ですか!?」
「私たちは全員無事だが、援護に回っていたアルファ小隊がヤバイ状況だ!」
外では全員が応戦。状況は悪い。
アルファ小隊の隊長は戦死、十機いた機体数は四機にまで減少。指揮官の戦死で連携がバラバラになってしまっている。
しかもプランヴェル軍は二十機もいる。
それに対して、こちら側の総数は十機。単純に二倍の戦力差で状況は不利。
「ユリ少尉、小隊を頼みます! 私はアルファ小隊の指揮を引き継いでくるんで!」
「わ、分かりました!」
この状況を打開しなければ更に死人が増える。
だからノアは状況打開の一歩目を踏む。
「アルファ小隊、フォックス小隊のノア・フォート軍曹だ。今からアルファ小隊の指揮を引き継ぐ。各機二機一組で連携しろ、私は単独でお前たちを援護する」
「二機一組か、分かった!」
「来い、俺と組め!」
アルファ小隊の四機はノアの指示通りに二機一組の連携した戦闘機動に移行。
ノアの援護もあって、敵への攻撃、敵から来る攻撃の防御と回避が効率的となる。
これが状況打開の一歩目。
味方の被害を抑えながら敵を二機撃破する。
「ラウラ、ハート、押せ押せ戦法!」
「あーい! マルチロック、ミサイルポッドブッパー!」
「さぁ一気に押し込むわよ!」
状況打開の二歩目は三人娘が踏む。
まずはラウラがミサイルポッド全弾発射。同時ロックオンした敵八機にミサイルが飛んでいく。
もちろんプランヴェル軍は簡単にミサイルに当たってくれはしない。
3Dホログラム装置に機体並の熱量を持つホロデコイを放出。デコイに自機と同じ姿を投影させてミサイルを誘引、狙われた八機は回避に成功する。
「攻撃、今!」
「これで敵を削る!」
ミサイルだけが攻撃じゃない。
ミサイル回避に気を取られているところにナコとハートの攻撃が飛ぶ。
「敵を一機、二機!」
「三機、いや四機撃破!」
「今ので五機目! 追加のミサイルブッパー!」
ナコとハートの多方向からの攻撃に反応し切れず、プランヴェル軍の機体は次々撃破されていく。連携も崩れて攻撃に対処出来ていない。
そこにラウラが腕部固定ミサイルランチャーを全弾発射。計六発のミサイルで敵三機を撃破し、プランヴェル軍は合計八機を損失した。
これが状況打開の二歩目。
プランヴェル軍の残る機体は十機。同数となる。
≪雑兵如きが……っ!≫
「みんな、頑張っている。なら俺も!」
状況打開の三歩目。仕上げの段階はヨシノリが踏む。
Fデバイスとスラスターをリミッター解除、残る十機の敵の集団へと一気に飛び込む。
≪来るか!≫
「このまま押し切る!」
プランヴェル軍全機の目が全てヨシノリに向く。単機のヨシノリに対して十機の迎撃が始まるが、迎撃を避け切って全ては無意味になる。
人間離れした高機動と回避。
空中戦闘仕様の最高時速700km以上を叩き出して、敵の攻撃を見切り、敵陣の懐で縦横無尽に駆け回る。
「援護しないと……タキ一等兵、援護します!」
そこにユリの援護が来る。敵がヨシノリに気を取られている間に、ユリの放つ40mmライフルの連射が敵一機を何度も貫く。
「今の援護に気を取られたな!」
援護のおかげで敵の視線がいくつかヨシノリから外れ、敵の向けてくる銃口が減った。
このチャンスをすかさず活かして攻撃を加える。
一発を正確に、一撃を最大限に、プランヴェル軍機を撃破。
小さく当てるのも難しいホロデコイも放出された瞬間に即破壊。破壊に破壊を重ねて次々に敵の数を減らす。
≪破壊者……≫
なにも当たらなかった、プランヴェル軍の攻撃。
必殺必中で撃破してくる、ヨシノリの反撃。
後に残るのはひたすらに蹂躙。
人間離れした圧倒的な強さを前に、プランヴェル軍の部隊は呆気もなく全滅する。
「すごい……これがタキ一等兵の力……!」
ヨシノリの強さを目の当たりにして、その力をユリは実感する。
「すっげー、一人で九機もやっちゃうなんて」
「私たちだって負けてないわよ。八機も撃破したんだから」
「三人でやった数だけどね」
これで状況打開の三歩目を踏み切った。
プランヴェル軍は全滅。味方側は十機から減少はない。
これで状況を打開。不利をひっくり返した。
≪なるほど、奴らの力量を見誤った。そういうことか≫
この場にプランヴェル軍の戦力はもういない。
プランヴェルは戦闘に敗北した。
≪フフフ……仕方ない≫
しかしプランヴェルに落ち込む様子も、諦める様子もない。
ただヨシノリを見つめて微笑む。余裕がまだある。
≪出し惜しみはやめるとしよう≫
その余裕ある理由が空に真っ暗な穴が開くという形で表れる。
「あれは空間歪曲! でも僕たち人類のじゃない!」
「まさか、プランヴェル軍なんじゃ!」
「ってことは増援!? ちょっと待って、ミサイル撃ち尽くしちゃったんだけど!」
空に開いた穴。ワープ航行のワープゲート。
転移座標指定装置と空間歪曲転移装置を有する軌道エレベーターなどの大規模で手間のかかる施設がなければ人類にワープは出来ない。
だが、プランヴェル軍はそんなものがなくてもワープが出来る。
これが人類を苦しめた要素の一つ。場所を指定出来る範囲なら、手間もかけずにどこにでも瞬時にどんなものでも移動出来る。しかも妨害などの手出しが出来ない。
つまりプランヴェル軍は本気を出した。ワープゲートを開いたのは、その証明である。
「全機、蝦夷基地にまで撤退だ! 蝦夷基地に戻ることが出来れば他の小隊も航空戦力もいる。敵は迂闊に手出し出来ないはずだ、行くぞ!」
ノアは撤退を告げた。
弾薬も装甲も、全員の精神も消耗している。これ以上戦えば被害が増える。
だから言葉通りにノアはアルファ小隊を率いて撤退していった。
「ハート、ラウラ! 僕たちも!」
「ラウラは先に行って、守るから!」
「ごめん!」
三人娘も撤退を開始。ラウラを先頭に行かせて、その後ろを守るようにナコとハートが飛ぶ。
「タキ一等兵、私たちも行きます!」
「はい!」
ユリとヨシノリも周りに続いて撤退を始める。
≪逃がさんよ、タキ一等兵≫
もちろんプランヴェルはその撤退を見逃さない。
ノアとアルファ小隊の撤退、三人娘の撤退は見逃しても、ヨシノリの撤退だけは絶対に見逃さない。
≪地の果てまで逃げようともな!≫
そしてワープゲートから一つの物体が音速を超えて放たれる。
「なにか飛んできます、少尉!」
「え?」
二人に向かって飛んでくる物体。
それはなにか?
物体が近付いてくると分かる。
「これは、電磁パルス発生器!?」
飛んでくる物体が近付いてくれば『ベースドアーマー』のバイザー上のHUDにEMPと表示。
そのまま二人の間を電磁パルス発生器が行き過ぎる。
衝突や爆発など直接的な攻撃力はない。
その真価は別にある。
≪捕まえた≫
電磁パルス発生器から光輝く多量の大電流が広範囲に広がる。
逃げる暇もない速さ。
二人は電磁パルスに巻き込まれて『ベースドアーマー』に搭載された電子機器の一部が停止。半ば無力化された。
これが電磁パルスの真価。
「なんだこれ、機体に不調が!」
「そんな! 落ち――」
通信は途切れ、Fデバイスも停止。
プランヴェルの捕まえようとする意志が、ヨシノリとユリを地上へ落としていく。




