▽1・3 人類連合軍・出撃開始
準備を終えて出撃が迫る時間。
ユリの率いるフォックス小隊と援護役のアルファ小隊の『ベースドアーマー』が歩いて格納庫から出てくる。
それら機体は空中戦闘仕様に換装されたもの。
戦闘機と同じ灰色塗装、背部に搭載された飛行ユニット――専用の高出力Fデバイスと翼状の大型スラスター、機体を飛ばすための軽装甲が特徴的。
兵士たちの機体の大半は手持ちの40mmライフルとシールドを持ち、ライフルを持つ利き手側の肩部にミサイルポッドを搭載した基本装備。
「こちらフォックス小隊、出撃します。アルファ小隊は続いて出撃してください」
「アルファリーダー、了解」
出撃を告げる、ユリも周りと同じ基本機体。
フォックス小隊を率いる隊長として一番に空へ飛ぶ。
「よし、しっかりユリ少尉のケツに付いていけ! 行くぞ!」
次はノア。40mmライフルとシールド、左肩部に固定式ガトリングガンを搭載した機体で飛ぶ。
「行くよ! ラウラ、ハート!」
「おケツ! おケツ!」
「了解、付いていくわよ」
ナコは基本機体。
ラウラは固定式ミサイルランチャーを両腕部に、両肩部にはミサイルポッドというミサイルづくし。
ハートは腕部固定式ガトリングガンとシールド、肩部にはガトリングガンと繋がった専用の大容量弾倉を搭載。
三人それぞれ違う装備で三人一緒に飛んでいく。
「……行くぞ、俺も」
フォックス小隊の最後尾のヨシノリ。
機体の武装は右腕部に40mmライフル、肩部にはミサイルポッドと固定式ガトリングガンを搭載。そして左腕部に一発限りの一撃必殺、槍状爆弾筒ことブリーチングパイルが付いている。
防御の欠片もない武装構成。避ければ良いの思考と、より多くを殺すための機体。
そんな機体でヨシノリも空へ飛ぶ。
続いて飛ぶ、アルファ小隊の面々。
出撃と任務の始まり。
蝦夷基地から飛び立ち、フォックス小隊とアルファ小隊は作戦地帯に向かう。
じっと隠れた、赤い目に見られていることも知らずに。
※
任務が始まってから数分後。
青い『ヘキサ』の空。建物の少ない田舎の風景。
地球とあまり変わらない光景の中を十六機の『ベースドアーマー』が飛ぶ。
「周辺に異常なし。全機、進路そのままで目標の旧整備工場へ直進します」
「了解。アルファはこのままフォックス小隊の後ろを飛ぶ」
敵はまだ見えない。
ユリは指針を示して目的地へと部隊を直進させる。
「アルファは十機。こっちは六機。うちの小隊って、もしかしてエースの集まりだったりするの?」
「アタシとラウラとナコで二十機も撃破してるんだもん、十分エースでしょ」
「僕たちがエース……悪くないね」
通信に乗せた三人娘の会話。
ヨシノリにも聞こえて「エースか」と独り言を言う。
「どうした? ヨシノリもエースに興味があるのか?」
そんな独り言を聞いたノアが語りかけてくる。
「あ、いえ、別に興味は……ただなんとなく、この小隊が本当にエースの集まりなのかなと思っただけです」
「なるほど。私はこの小隊、エースの集まりだとは思うぞ。お前がここにいるのが、なによりの証拠だ」
「俺ですか?」
「お前は今日の演習で襲撃してきたプランヴェル軍機を四機も撃破していて、しかも模擬戦で私を含めた教官全員に撃破判定を与えたんだ。これがエースじゃなくてなんだ?」
ノアがヨシノリをべた褒めするくらいの信用を語る。
そうした会話の最中、ユリが「ノア軍曹。演習中に襲撃というのは、今日の?」と質問を投げかけた。
「そうですよ、少尉。私の教え子が敵を四機も撃破して大活躍した事件のことです」
「まさか訓練生の身で実戦を……四機撃破というのは単機でやったんですか?」
訓練生であったヨシノリがいきなりの実戦で四機を撃破。
その場で活躍を見ていないユリにとっては誇張の付いた話でしかない。
だから疑い深くなる。
「もちろん単機で、しかも模擬戦用装備での撃破数です。なぁ、ヨシノリ?」
「あ、はい。模擬戦用のペイント弾で敵の視界を潰し、格闘戦で四機を撃破しました」
ノアとヨシノリは実際に起きたことを話す。
噓などない。
「信じられない。本当に撃破したなんて……」
模擬戦用装備で単機、それも五体満足で生存のみならず敵を四機も撃破した。
訓練生がそんなことを出来たなど、ユリは驚くしかなかった。
「すっげー、初の実戦で四機だなんて!」
「本当なの? 教官全員に撃破判定とかも」
「嘘じゃなかったら、ラウラの言ったこともあながち間違いじゃないかもね」
話を聞いていた三人娘もヨシノリの活躍に驚く。これには自分たちの小隊がエース部隊であるかもしれない冗談が現実味を帯びてくる。
「……エース。お荷物にならないくらいにはしないと……」
ユリの小声の独り言。
三人娘が気乗りする一方でユリは気乗りしていない。
「あ、ユリ少尉。旧整備工場らしき建物が見えてきました。あれが目的地ですね?」
そんな時にヨシノリの目に目的地らしき場所が映り、即座に報告。
「は、はい。あれが目的地です。ここからは敵が出てきてもおかしくありません。十分に気を引き締めてください」
プランヴェル軍がいるであろう目的地。もしも情報通りであれば、生き死にが隣り合う殺し合いが始まるだろう。
ヨシノリの報告に受け答えしたユリも、ノアも三人娘も、エースや自分たちの活躍から作戦に頭を切り替える。
「敵はまだいないな」
「いるなら森の中か工場内だろうさ、ヨシノリ」
「やはりそうですよね、ノア軍曹」
ヨシノリの視界に敵はまだいない。眼下に見えるのは森と旧整備工場のみ。
「小隊各機へ、目的地を視認しました。警戒態勢でこのまま前進します」
フォックス小隊は前衛。アルファ小隊は後衛。
全部で十六機の重装甲機兵は作戦地域に向けて飛翔する。




