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破壊者_全ての敵を破壊せし復讐/デストロイヤー_ペネトレイト・ヴェンジェンス  作者: D-delta
第一章 世界の裏と奥底の真実に隠れた憎き仇敵、復讐すべし

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▽6・4 有志連合・破壊者と悪魔の行き着く先

 両者は高度を上げる。

 地平線と宇宙が見える高空。


≪さぁ最後の戦いだ!≫

「行くぞ!」


 決着のために動き出す。

 ヨシノリはすぐさま音速を超え、超スピードで飛翔。

 対するプランヴェルは移動せず、その場でエネルギー防御フィールドを発光と共に全方位に展開。イズレット粒子砲の照準を『魂解』へと合わせる。


≪照準補正は正常。どれだけ速かろうと捉えられるのだ、当たらない訳がない!≫


 初手はプランヴェルが取る。初手に放つはイズレット粒子砲での狙い澄ました一撃。


「出力を調整して命中精度を上げた? だけど!」


 先ほどのように巨大ではない細いビーム。極大な威力はなくても『魂解』の装甲を貫通するには十分な火力。だとしても当たらなければ意味はなく、普通であれば必中であったものをヨシノリは当たり前のように容易く避けていく。


≪今のは、いや〝今のも〟当たったはずだ。照準補正も軌道予測もある。機体スペックはこちらがなにもかも上だ≫


 二射目、三射目、四射目。プランヴェルの攻撃の全ては見切られるどころか、ヨシノリの視界に入っていないであろう角度からでも避けられる。


≪それなのに当たらないのは、やはり相手が破壊者(デストロイヤー)だからか≫


『ハートサイス』の強力なアシストでさえ狙いを振り切られる。

 まさにヨシノリの回避は未来予知にも等しい。完璧なまでに攻撃を見切っている。


「こっちの攻撃、直撃通るか?」


 対するヨシノリの反撃。背部の140mm滑腔砲による一撃、装甲越しにプランヴェルの心臓を狙った一発が放たれた。


≪出来る訳なかろうに! そのような実弾でイズレットフィールドを抜けはしない!≫


 しかしエネルギー防御フィールド――イズレットフィールドの鉄壁の守りで確かな一撃だろうと攻撃が弾かれた。


「やっぱりダメか!」

≪どこを狙っても無駄だ。先ほどの『ハートシンク』と違って『ハートサイス』の防御に隙はないのだからな!≫


 撃った本人でさえも予想出来た光景。イズレットフィールドを貫通出来るかも、という甘えた望みは一瞬にして消えた。

 まさに敵の防御は鉄壁そのもの。今使える武装では、どう撃っても意味がない。


「実弾兵装だらけの今で、どうやってプランヴェルの機体本体にダメージを与える!?」

≪しかし攻撃が当たらない今で、どうすれば勝てる!?≫


 機体の鉄壁の防御と全ての攻撃を見切った完全回避。

 どちらも互いの攻撃を無意味にさせていく。

 どちらもが決定打を与えられない。お互いに明確なダメージを与えられない。


「この機体の腕、武装っぽかったが……もしかしたら!」

≪先ほど最大出力で撃ったばかりで出力が下がっている。実弾がイズレットフィールドを貫通するようになれば私の勝ち筋が消える……今の内に奴を仕留めるしか!≫


 だから両者は思考の末、互いに有効打たるものを探す。


「全ての武装を表示――これだ、イズレット粒子試作マルチウェポン! だけど……」

≪挑むべきは短期決戦……私にやれるのか? いや、方法はあるのだ!≫


 そして探れば両者は見つける。互いに動かせない状況を動かす有効打たるもの、互いの機体に隠されているものを。


「コレを使うなら条件が必要って訳か。それなら喜んで条件通りにしてやる!」

≪私も意を決する! 更に本気で、更に高い性能で、奴を凌駕(りょうが)するために!≫ 


 両者は答えを見出した。

 後は隠された力を解き放つのみ。言い放つのみ。


「リミッター解除!」

≪リミッター解除!≫


 そして両者が放つ答えは同じ。

 ここから始まるのは似た挙動、同じ力の解き放ち。

 ヨシノリの『魂解』は外付けの全武装を切り離し、機体の一部装甲を排除。

 リミッター解除の飛躍的な出力向上と共に機体各部の排熱機構を露出させ、跳ね上がる機体温度の冷却が始まる。

 それに対してプランヴェルの『ハートサイス』は武装を切り離さず、機体の一部装甲を展開して排熱機構を露出。そこから先は『魂解』と同じく飛躍的な出力向上による、機体温度上昇を抑えるための冷却が始まる。


≪なに!? 奴も同じ手を使ってきたか!≫

「イズレット粒子……父さんが再現したプランヴェルの兵器の力……!」


 これで『魂解』は武装そのものの両腕部を変形、イズレット粒子試作マルチウェポンを使用可能状態へ移行する。


「これが『魂解』の真の力!」


 しかもイズレット粒子の武装が使えるようになっただけではない。

 球体状に『魂解』を包む発光、敵と同種のイズレットフィールドも展開された。


≪だが、その機体でリミッターを外すということは自らの命を削ることと同義だ。程なくして絶え間ない出力と熱量の上昇で貴様の機体は自壊する≫


 解き放った力の代償はある。

 リミッターの解除後に表示される、最大180秒の稼働限界時間。

 このタイムリミットを過ぎれば『魂解』の自壊が待っている。


≪貴様はわざわざ封じられた機能に手を付け、力と引き換えに自殺行為を選んだ。今ならまだ間に合う、こちらの機体に飛び移れ。私が受け止めてやる≫


 タイムリミットは動き出している。このまま機体を捨て、受け止めてもらえれば機体の自壊に巻き込まれずに命は助かる。


「俺は降りない」

≪なにを言っている!? このままでは貴様が死ぬのだぞ!≫


 でも、ヨシノリの望みはそれじゃない。


「言ったはずだ、プランヴェル」

≪なにをだ!≫

「お前の全てを壊すと!」


 これこそが本当の望み。みんなを守るため、仇を討つため、命を捨てる。

 ヨシノリはイズレット粒子試作マルチウェポンを射撃モードで、イズレット粒子砲を撃ち放った。


≪き、貴様!≫

「ようやくそっちの装甲に当たったな」


 イズレット粒子に対して、イズレット粒子は物理的干渉をしない。

 撃ち放った攻撃は両者のイズレットフィールドを通り抜けて『ハートサイス』の装甲に当たる。しかしその威力は装甲表面を焼いた程度のもの。


≪だが威力不足だ! もう諦めて、私のところへ来い!≫

「なんなら次は格闘モードだ」


『魂解』の両腕部が変形、射撃モードから格闘モードへ移行。その両腕から高出力にエネルギー化したイズレット粒子を放出。格闘モード用の単純な機構となっている両腕部の放出口からバーナーの如く、イズレット粒子の炎刃を作り出す。


「もっと速く! 行くぞ!」

≪諦めずに来るか!≫


 そこから先は接近戦。

 リミッター解除をした『魂解』は接近のために異質な存在の如く超加速を繰り出し、音の壁どころか熱の壁さえも突破。火球となって極超音速にまで至る。


≪は、速い! 迎撃が間に合わん!≫


 そして繰り出されるのは人間を逸脱した者の機動。縦横無尽で、軌道予測や捕捉すらも困難なほどの機動をして『ハートサイス』の目の前に来る。


≪やられる!?≫

「死ぃねぇぇぇぇぇ!」


 プランヴェルは途端に防御姿勢へと転じて身を固める。

 次の一瞬には凄まじい速度で『魂解』が通り過ぎていった。この通り過ぎた一瞬、防御姿勢の『ハートサイス』は左腕部の実体シールドを溶断される。


≪なっに……!?≫


 プランヴェルが反応する一瞬の間に『ハートサイス』の防御手段が一つ消えた。


≪くっ、こんなところで私の夢を終われるか!≫


 このままでいればプランヴェルは全てを失う。そうなる前にと『ハートサイス』の背後の空間に大穴を開いて逃げ道を作り出す。


「単独での転移!?」


 その逃げ道は、電磁パルス発生器を落とした時にも見せたワープゲート。

『ハートサイス』は空間に開いた大穴へと姿を消し、単機で空間転移した。


「逃げたのか、プランヴェル!」

≪逃げる訳なかろうがぁぁぁっ!≫


 ヨシノリ機の背後に現れる大穴。出てくるのは『ハートサイス』だ。


「後ろ、そこか!」

≪私の方が速い! AFSS起動!≫


 四つの機械翼が『ハートサイス』から分離。機体の周りに漂い、右腕部のイズレット粒子砲の発射に連動して機械翼内部のイズレット粒子砲が放たれる。


≪ランダム射撃だ! 避けられまい!≫


 機械翼の砲台――自動火力支援システム(Automatic Fire Support System)で手数の増えた射撃。一気に雨のように降ってきたビームが『魂解』の左腕部を破壊する。


「なんのぉぉぉぉーっ!」


 まだ右腕部が残っている。すかさず回避しながらの反撃、イズレット粒子砲のビームを自動砲台の機械翼に当てる。


≪なに!? 私の翼を!≫

「こっちは破壊出来る、そうか!」


 羽の如く破片を散らせて、機械翼を破壊。

 そして両者は気付いた。この威力不足のイズレット粒子砲、その用途を。


「射撃で武装を奪い、格闘でぶっ殺す! 父さんが『ベウ・マサクレイ』に対抗しようとしたこと……俺にも分かったよ!」


 用途に気付けば、そのまま射撃モードで機械翼を立て続けに破壊していく。


≪苦し紛れな低出力調整だと、ただの技術の限界だけと思っていたが、粒子砲をこういう用途で絞ってくるとは!≫


 全ての翼が破壊された。


≪ただの模造品ではなかった、そういうことか!≫

「そうだ、父さんもお前を殺そうとしていた!」


 この瞬間に両者の理解は『魂解』のコンセプトにまで及ぶ。

『魂解』という存在は『ハートサイス』の単純な模造品ではなく『ハートサイス』に徹底して対抗するために作られた決戦兵器なのだと。

 それを理解した今、タキ親子のイズレット粒子砲がプランヴェルのイズレット粒子砲を破壊した。


「だから父さんの子供として俺がお前を殺す!」


 互いが互いを傷付けられる兵装はもう近接兵装しか残っていない。


≪だが、状況は変わらん!≫


 プランヴェルは『ハートサイス』の全武装を切り離し、両腕部側面からイズレット粒子を放出。速度を落とした『魂解』を目で追いながら最高出力の炎刃を見せる。


「そうだな。それで、時間切れの勝利でも掴む気か?」


 ヨシノリは残った右腕部を格闘モードへ変形。最高出力の炎を散らしながらイズレット粒子の炎刃を作る。


≪時間切れの勝利など無意味。私の望みは貴様を手に入れることだからな!≫


 プランヴェルは稼働限界時間による自壊を待たない。

 極超音速で『魂解』に一気に接近。容易く熱の壁を突破して、プランヴェルが目の前に来た。


≪貴様が死ぬ前に、その欠陥品から引きずり出してやる!≫


 振り下ろされる両腕部の炎刃。機体の四肢を一気に斬り落とし、無力化する意図が丸見えの攻撃。

 ヨシノリは攻撃の意図さえも見切って『ハートサイス』の背後へ回るように回避した。


≪嬉しく思えよ。貴様の力で私が神となった日には、貴様への贖罪(しょくざい)も兼ねて伴侶になってやるんだからな!≫


 プランヴェルの感情に応えるが如く炎刃は更に強みを増し、背後の『魂解』へと力任せに炎刃が振るわれる。


「贖罪なんて考えるぐらいなら、こんな戦争なんてやらなければ良かったのに!」


 しかしプランヴェルの炎刃は『魂解』を少しも焼くことなく、無闇にイズレット粒子の炎を散らすばかり。

 どう動いても隙だらけな姿。

 ヨシノリは隙を見逃さず『ハートサイス』の懐へと炎刃を進ませて、その堅牢な装甲を焼いた。


≪くっ……この戦争も全ては私が神となって家の名を継ぐためだ! これが脆くて意味のない夢だとしても、貴様という叶えられる希望が目の前にあるならば諦められん!≫


 だとしてもプランヴェルは止まらない。


「そのためなら誰かの夢や人生を潰しても構わないってのかよ!」


 ヨシノリも止まらない。


≪それが戦争というものだ! 相手の人生を自分の色で塗り潰し、自分の思い通りに支配することなど摂理(せつり)であり常識!≫


 力を手に入れようと振り回される両腕の炎刃。散るものは炎ばかり。


「その道理で物を話すなら、俺はお前の人生を真っ黒に塗り潰す!」


 そうやって炎刃から散らされる炎の中を研ぎ澄まされた一撃が走る。


≪なにっ!?≫

「他者を消耗するだけして意味も見出せない夢なら、尚更俺が終わらせてやるッ!」


 怒りの如く強くなる炎刃を走らせて『ハートサイス』の左腕部を斬り落とした。


≪終わらせる!? どうやってだ、私にはもう夢を辿るしか生きる理由がないのに!≫


 プランヴェルから吐き出される真意。


「お前の全てをぶっ壊す! それで夢も覚めて終われるだろう、俺もお前も!」


 吐き出された真意に対してのヨシノリの答え。


≪死と破壊で終わらせるなんて……! 私も貴様も、まだ人生の半分も生きていないのに終わるなんてバカだ!≫


 どれだけヨシノリを追って炎刃を振り回しても届かない。破壊者(デストロイヤー)の力に手が届かない。


「お前がこうさせたんだ! お前が父さんの人生と俺の人生を奪ったからぁ!」

≪私がっ!?≫


 追えば追うほど、プランヴェルは失う。更なる一撃が走って『ハートサイス』の右腕部が斬り落とされる。


「お前の生きる理由が描いた夢を辿るしか残っていないように、俺の生きる理由はお前を殺す以外にないんだよ!」

≪貴様はそれしか――いや、貴様も既に道は一つしかないのだな≫


 全てを失っていく今この瞬間、プランヴェルはヨシノリを理解していく。

 互いに自分の中にたった一つだけ残されたものに走り続けるしかない人生なのだと。

 互いに破滅の道しかないのだと。


≪貪欲は必ず身を食う。この結末も全部、私も姉と同じ道を辿ったのか……≫


『ハートサイス』に武装は既になく、夢にしがみつくために逃げる様子はない。描いた夢を辿った結末を受け入れたように動きを止めて、無防備な姿を晒している。


≪終わらせてくれ……私の全部を≫

「……っ!」


 そしてプランヴェルは希望を見失った末の願いを告げて、ヨシノリはそれに応える。

『魂解』の出力限界を超えて、激しく巨大になっていく炎刃。互いの願い、全てを終わらせるために両腕のない『ハートサイス』の動力を溶かし貫く。


「……これで終わったよ、プランヴェル、父さん」


 輝きを失うプランヴェルの機体。力を失って落ち行く。


 復讐の終わり。


 タキ・ヨシノリという一人の歪んだ子供は人生の終着点へと辿り着いた。

 稼働限界時間が0を表示する。

 もう虚しさもなければ喜びもない。ただ静かな空の中で自壊に身を委ね、コックピット内部が動力炉から漏れ出したイズレット粒子の輝きに包まれていく。


「僕の復讐も終わったよ」


 粒子の輝きの中で頭に響いてくる声。よく知っている声、懐かしい声。


「父さん」


 聞きたかった声をようやく聞けた。


「ヨシノリ、妻の仇を取ってくれてありがとう」


 次第に声だけでなく、機体の視界越しに父親の優しい顔と姿も見えてくる。


「父さんも俺と同じだったんだね。でも、もう終わった。これからは一緒だよね?」


 死に別れた家族と一緒になれる。後に残った望みはそれだけ。


「違う」


 首は横に振られる。


「お前は生きる。僕と妻が生きた時間以上に」

「え……?」


 望みは叶わない。


「だから幸せに生きてくれ」


 その言葉を最後に声はもう来ない。優しく懐かしい父親の姿は背を向けて消えていく。


「父さん――」


 一瞬の再会に別れの時が来た。

 爆発音が別れを惜しむ声を掻き消し、死に別れた家族を追いかけようと伸ばした手は自壊による爆発で吹き飛ぶ。

 誰かの望みに関係なく、タキ親子が復讐を遂げて『魂解』の役目は終わった。後に残るのは空に咲いた爆発の花だけ。

 先に散った黒い欲望の花を追うように血の恨みの花も蒼い成層圏の景色に散る。

 二つの魂は一つの運命の結末を迎えて空から去っていった。

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