▽6・2 有志連合・世界に呼びかける声
通信室に向かってから数十分後。
通信室にて。
「これで『ヘキサ』全域に通信いけます。ただし逆探知などで、我々の所在が敵にバレる可能性はかなり高いですよ」
通信士はそう言い、世界へ呼び掛ける準備は整う。
通信用のヘッドセットを付けたユリの方も準備は万端。
「敵にバレたら襲ってくるな。どうする、ユリ少尉?」
しかし呼び掛けるのはリスクがある。
「元よりこの基地の所在はバラすつもりです。この森空基地を有志連合として集まるための灯台にしようと思いますから」
「覚悟の上か。じゃあ、いつでも始めてくれ」
リスクは全て承知の上。
後は『ヘキサ』全体への呼び掛けを始めるのみ。
「ヨシノリ君、私の手を離さないでね」
「はい。ユリ少尉の手、絶対離しません」
繋いだ手は離さず『ヘキサ』全体へ呼び掛ける勇気欲しさにユリの指はヨシノリの指と絡み合い、恋人繋ぎへ変わっていく。
「ふぅ……始めましょう」
「了解。通信、開始します」
いよいよ呼び掛けが始まる。
ユリはヨシノリと顔を合わせ、勇気を出して声を通信に入れる。
「この通信をお聞きの方々、初めまして。私はライカゼ・ユリ。来風グループの創始者である来風家の娘、今は人類連合軍の兵士の一人です。私はこれからこの戦争の真実を語ります。戯言と思ってくれても構いません。ですが、どうか最後まで私の言葉に耳を傾けてください」
主戦場から辺境の地まで、届くところ全てにユリの声が届いていく。
「私たちはこの『ヘキサ』で、人類連合軍が二つに分裂した今この時をそれぞれの思想と所属で戦ってきました。それもお互いに血を吐きながらの熾烈な戦い。しかしこの熾烈な戦いは誰のためにあるのでしょうか? 仲間を失い、己の身を削り、辛い思いをしてまでの戦いはどこに行き着くのでしょうか?」
『ヘキサ』全土に届く声は全ての者に問う。
「その答えは、今まさに戦う者たちの大半が知りません。ですが、皆様の大半は答えへと近付く違和感を持っています。なぜ現体制の不正を正すと豪語した反乱軍が無抵抗な民間人も処刑する蛮行を行うのか、というものです」
この声を聞いて陰謀論だと言う者もいる。その反面、暴露されたと慌てる者もいる。
「争いに巻き込まれる側の大衆の目から見れば反乱軍は正義の旗を掲げながら悪行を働く一団に見えることでしょう。それもそのはず、この二つの勢力に分裂した戦争は一部の者たちによって仕組まれた計画なのです」
そして声は同じ真実を知っている者たち――〝計画〟を否定したい者たちにも届く。
「それも計画の発案者はプランヴェル軍。このまま我々が計画通りに戦えば、多くの命が失われ、いずれは一部の者たちやプランヴェル軍に支配される結果となるでしょう」
同調する者。無関心な者。危機感を抱く者。それぞれの反応で事態は動き始める。
「だから私は真実を知る者として言います。私たちはそれぞれの所属に囚われず、一緒に有志連合として、この不毛な戦争を終わらせましょう。既に地球本部の『ヘキサ』派遣も要請しています。私は良心ある皆様をこの森空基地で待っています」
勇気を出しての呼び掛けは終わった。
「信号を出してください。森空基地の所在を明かします」
仕上げにユリは秘密基地である森空基地の所在を明かすことを指示。
「了解……信号出します」
そうして森空基地から信号が発される。
これで後は呼び掛けた結果を待つのみ。
「ちゃんと出来ましたね、ユリ少尉」
「ヨシノリ君から勇気をたっぷり貰いましたから、そのおかげです」
ヨシノリの労いの言葉。握った手と言葉から伝える温もり。
温かい気持ちで二人は寄り添い合う。
「うわ、熱々……」
「ユリ少尉? 自分の部下と仲良くしているところ悪いけど、次にすることは?」
打って変わって周りは二人の様子に若干のイラつきを覚えて、そんな周りの感情を代弁するようにブラボー小隊の隊長は次の行動を聞いた。
「次は敵襲に備えます。私とノア軍曹が鹵獲した機体――『ハートシンク』の塗装も味方と認識出来るものに変えないといけませんね」
「じゃあ早く取り掛かってくれ。こっちからも人手を回すからさ」
羨望的に感情的で通信室から追い出すかのような言い方。
「フフフ……行きましょうか、ヨシノリ君」
「了解です、ユリ少尉!」
二人は追い出されるように通信室を出ていく。
呼び掛けは終わったが、やることはまだある。
鹵獲した機体『ハートシンク』の塗装、機体のチェック、休息などの自己管理。プランヴェルとの決着。
二人は自分たちの小隊へ戻っていく。
≪タキ一等兵、待っていろよ。次こそ貴様を……≫
赤い一つ目はヨシノリの現在地を見る。
他者と手を繋ぐ良心。他者の手を切り落としてでも全てを得ようとする野心。
ヨシノリとプランヴェル。二人の決着の時が来る。




