引っ越し準備は着々とやってまして……
「そういえば次の王太子は誰にするつもりなんですか?」
「そこを迷っておるのだ……、今回の様な不始末は国の面子の為に二度と起こさせる訳にはいかん」
確かに国外の評価に影響を及ぼす可能性がありますからね。
「幸い次男のレールズと三男のコークスは優秀だし婚約者もいる。 兄の不祥事を見ているから大丈夫だと思うがな」
「レールズ様は頭脳明晰、コークス様は武芸百般、お二人が力を合わせれば安泰ですわね」
「そうなのだが、王太子となるとそうはいかん事情がある。 儂も王太子になってから随分と苦労した。妻がしっかりしていたから今がある」
国王夫妻はオシドリ夫婦として有名ですからね、私も憧れていました。
だから元王太子様との結婚を楽しみにしていたんですがねぇ……。
どうしてこうなったんだか……。
まぁ、過ぎた事ですから仕方がありません。
私は城を出て錬金術協会の本部にやって来ました。
錬金術師として本格的に活動する為には登録が必要です。
証明書を受付に提出して数分後、呼び出され軽く説明を受けて登録完了です。
「新人の方にはサポートを受ける権利がございます」
「サポートとはどんな事をしてくれるんですか?」
「主に道具の貸出です。 錬金釜とかは特に高いですし……」
あぁ〜、確かに。 錬金術に必要な道具って高級な物が多い。
それにはちゃんと理由があって錬金術師は儲かる。
薬や道具を生み出す訳だからそりゃあ重宝される、特に貴族お抱えの錬金術師になったら人生勝ち組である。
勿論、その分リスクはあるし、最悪命に関わる事もある。
まぁ私は自らの生活の為に使うんだからそんな物騒な事には巻き込まれない、と思うけど……、思いたい。
私は錬金釜とかその他諸々を家に送ってもらうように手配した。