下見をしまして……
翌日、私は担当者と馬車に乗り込みその場所へと向かった。
朝早く出て着くのはお昼頃になるらしい。
「実際に見てみればわかると思いますが人が住むにはかなり厳しい場所なんです。 だからこそ今まで放置されてきたんです」
「でも、管理していた貴族がいるんですよね?」
「確かにいますが途中で投げ出したり最初から手つかずだったり……、所謂『負の遺産』という奴です」
「資料によると建物があるみたいなんですが」
「それもいつ建てられたかは不明です。 噂によれば『魔女が住んでいる』と言われてるそうです」
魔女、ねぇ……。
この国には魔女が住んでいて悩める人々を救済しているそうだ。
子供が生まれた時や結婚する時は魔女の祝福を受けると未来永劫幸せになれる、と言われている。
ただ魔女の機嫌を損ねたり蔑ろにしたりすると祝福は反転して呪いになってしまい不幸の連続となり最終的にろくでもない末路を追う事になる。
しかも呪いの威力は子々孫々にまで続くそうだ。
……もしかしたら我が家は魔女の怒りを買ってしまったのかもしれない。
そんな事を考えているといつの間にか風景は森の中になっていた。
木々が生い茂り太陽の光が刺さずどんよりとした空気が漂っている。
「もう領地内に入りました」
「あ、入ったんですか、資料通りに本当に自然の中なんですね」
「このまま奥に行くと例の家が見えてきます」
そして馬車が止まり私は外を出た。
「ここが例の家です」
「確かに魔女が住んでいる雰囲気はありますね……」
家の外見は何年も使われていないせいか所々朽ちている。
蔦が家の壁に這うように付いていて年季を感じる。
「まぁ、修繕していけば大丈夫でしょう」
「しかし、見ての通りの環境です。人が、しかもミーゼル様の様な若き令嬢が住めるかどうか……」
確かに普通の人だったら問題はあるだろう。
しかし、私には秘策があるのだ。
「ご心配なく、私『錬金術師』の資格を持っていますので」