第9話 ワイバーン討伐1
しばらく馬車に揺られているとステフが口を開いた。
「ここから500m程先、森の中にワイバーンがいるわ、そろそろ降りる準備をしなさい」
「ご、500m…………よくそんな遠い距離がわかるな」
「いずれ教えてあげるわ、ワイバーンの魔力を感じ取ったのよ」
へえ、そんなものがあるのか。便利そうだ。
そこから、更に数百メートルほど馬車を走らせた後、ステフは御者に声をかけて馬車を止めさせた。
「御者さん、ここまででいいわ。私たちは今から森に入ってワイバーンを狩ってくるから荷台に載せられるように準備しておいて」
そう言ってステフは馬車を降りたので俺も続いて降りた。
「このまま森の中を100m程進んだところにワイバーンがいるわ。多分ひらけた場所があるんでしょうね」
「なあ、ワイバーンは山脈の所に巣があって普段は山の麓辺りまでしか降りて来ないってニックさんが言ってたんだが、何で今回のワイバーンは巣を離れてこんな森の中にまでやって来たんだ?」
「さあね、より強い魔物との縄張り争いに敗れた、山脈周辺のエサが減った、他にも推測はできるけど考えてもどうにもならないからあんまり気にしない方がいいわよ。案外カイと一緒で世界中の景色を見たいって思って旅に出たのかもね?」
ステフはフフッと笑って冗談めかしてそう言った。
「うっ、なんだか親近感が湧いてきちゃったじゃねぇか!」
ステフ……なんて恐ろしい奴なんだ……。
俺と同じ大志を抱いているかもしれない魔物をこれから俺の目の前で殺そうってんだからな。
「そういえばステフ、聞いたところによるとテイマーという魔物を使役するのを生業とする者がいるらしいんだが……」
何とかまだ見ぬ同志かもしれないワイバーンを生き残らせるための提案をしてみたのだが……。
「確かにワイバーンを使役して人や物を運搬する商会もあるわ。でもそういった魔物は総じて雛から育てて人に従順に訓練された魔物なの。今回のはもう人間に危害を加えているし、人の味を覚えちゃったようだから討伐一択よ」
まぁそうだよなぁ……。
お前が悪いんだぞ、同志かもしれないワイバーンよ。どうか俺たちの糧となってくれ。
しばらく歩いていると湖があるひらけた場所に出た。
前方の方に何かがいる。
何かを食らっている鱗で全身が覆われている大きな鳥のような生き物の後ろ姿が見えた。
あれが恐らくワイバーンだろう。
話に聞いて想像していたよりもかなり大きい。
ワイバーンらしき魔物はこちらに気がつく様子も無く、夢中で何かを食らい続けている。
「あれが……ワイバーンか?」
「ええ、そうよ。食事中みたいね。さあ、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」
ステフはそう言うと何か魔法を使ったのかバンッと辺りに響く大きな音を響かせた。
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