<第3話> その名はエリザベス
「5年前のあいつだ。どうして、、、どうして、、、!!」
やつの鋭い牙を見て体を動かすことができなくなっていた。5年前にこいつに殺されて復讐を誓ったはずなのに、、、ずっと溜めてきた怒りも皮肉にも神々しいやつの体にひざまづくことしかできない。こいつに立ち向かうなんてまず無理だったんだ。
あおおおおおんんんんんん!!!!
白い化け物はこちらに不気味な笑みを浮かべて2,3回何かを訴えるように叫ぶ。その雄たけびはやつから離れるように砂ぼこりが波打ち小さなゴミは吹き飛ばされていく。僕の耳は完全にやつの悲鳴に壊されてしまい思わず耳を塞いでしまった。その瞬間こちらに大きく口を開く
口からあの青白い光がため込まれていく。ただそれをぼっと眺めているだけ
デュンー!!
左のほうから黄色い光線が僕の真横を通り化け物の水晶のように輝く眼球にねりこんだ。その威力は眼球を思いっきり潰されたようで化け物も崩壊した目から赤い血を垂れ流している。
「化け物から離れて!早くこっちに来なさい!!」
何が起こっているか全く理解できなかったが強い口調で僕に助言している女性の声が聞こえているのは確かだ。僕はあいつから離れるために声のする方向へひたすら走りだしたが下半身は恐怖のあまり震えていて思う存分に走ることなんてできなかった。化け物の目から血が勢いよく噴き出すあの一撃は化け物にとって相当痛いものだったろう。
足を小刻みに揺らしながら重心をグラグラ傾けながら一歩ずつ一歩ずつ前に進むと徐々に女性の声が大きくなっていきあの位置からやつの咆哮によって邪魔されていた細かい助言を聞けるようになった。さらに進んでいくと薄暗い曇りのなかに灰色を景色に鮮やかな水色のジャージ姿で腰に届きそうなくらい長い髪を持つ、少し目が吊り上がっていて人相が少し悪いがパーツ1つ1つはしっかりしててバランスのとれた美しい顔を持つ若い女性が3番街に置いてあったバイクくらう真っ黒な片手銃をあいつに向けて構えていた。
「なんでこんなところにガキが!バイクの後ろに乗りなさい急いで!!」
僕は彼女に言われるがままバイクの後部に乗った。そのバイクはやはり3番街に置いてあった漆黒のバイクその物だった。持ち主はこの女の人で間違いない。
ヴヴヴヴー!!!
化け物がこちらに振り向き片足を折り曲げ全速力で追いかけてくる。その速さは車なんて到底及ばない彼女はバイクに急いで乗って
「ごみの中の生き残りね!!命はそう長くはないはず!!」
ヴン!!ヴヴンーー!!!
もの凄い音のエンジン音が灰色世界に響き渡る
「いい!つかまりなさい!」
そう言って彼女はペダルを踏みこむと同時に後ろに振り返り片手銃のトリガーを引く。
ズンンンンー!!
わああああああおん!!!
化け物は再び口を開き青白い冷気を空の雲雲を吸い込むようにため込み始めた。それに逆らうように化け物の頭に光線が命中しやつの頭がドリルのようにねじ込んでいく。やつは雄たけびをあげながら血肉にまみれた体を露出させ光線を吐いた。
ズドドドドドドドンーーー!!!!!
「やつのビームはまっすぐ飛ぶ!!やつの軌道からずれたほうがいい!!」
僕は思わずこう言った。僕はあの化け物の放つ光線を初めて見たわけではない。あいつはああ見えて単純で一本線を成す青白い光線しか吐いてこない。非常にワンパターンなやつだ。僕はこのことを知っている。
「分かってるよ!!!!」
だが彼女も必死だ。少しでも生きるためには何もわからないガキの言うことなんか聞いてる場合ではない。
ヒュルヒュルーーー!!!
彼女は思いっきり右にハンドルを切る。その回転軌道に砂は円を描くように舞っってタイヤと地面の接触面はもの凄く熱くなっている。彼女は回転するバイクを左足で制御して勢いよくエンジンを回転させ化け物のビーム軌道から逸れようとする。
それに応じて化け物は首を逃げるバイクを追いながら向けていて青白いビームが円弧状に広がっていく。
1面は青白く輝き僕の目の前でたくさんのごみが光の中で形が無くなっていく。このビームに飲み込まれると残骸すら残さず破壊される。
左にいた化け物は自分自身が形を保てなくなっており全身から何かが溶け出すように煙を出している。血肉を露出させもがき苦しみながらビームを全て吐き捨てるとそのまま崩れ落ちた。
やつが命を落とすと空は気持ちよく青空になる。辺りはゴミ一つもない殺風景な茶色の大地が広がっていた。その残骸は白と赤の混ざり合った非常に見てて気持ち悪くなるような様子である。
「あんた、あの化け物の何を知っているの?初めてじゃないわよね」
「親が殺されたんだあの化け物に」
そう言い返すと、「ふーん」とその話に興味がなさそうに切り上げて
「ここで政府はあの化け物を封印していて5年前の被害者が多く住んでいる。あんたもなんとなく気づいてるでしょ?」
「どういうことだ?」
僕には全く分からない。ここに5年間暮らしていたが化け物を見たこともない。被害者なんてましてだ。過去にカドガウラ出身なんてやつは聞いたことないぞ。
「全く知らないのね、あんたのお友達どんどんいなくなっていったでしょ?」
「は?」
彼女の言ってる言葉が全く理解できない。友達って、、、ここで一緒に楽しいことも悲しいことも乗り越えてきた唯一の理解者。どうして知っている!!すると彼女はまたわけのわからない事を言う
「あんたを迎えに来た、あんたがあの化け物を退治する番だよ!」
「、、、友達は??」
「、、、私たちが預かっている」
「!!!!」
そして青白い光が消えたあと何もなくなった茶色の大地、青空の下つりあがった冷たい目でこう言う。
「私立ミカサ中学校教員名前はエリザベス。あんたは?」
「、、、、!!」
エリザベスの言葉に圧倒され僕は返す言葉が思い浮かばなくなった。