第1話 婚約破棄は承知済み
高い天井にキラキラと光るシャンデリア。広い王宮の室内はきらびやかな装飾が施され、ご令嬢やご令息がダンスをしたり談笑したりとする王宮での事だった。
私クロエ・スティードは壁によりかかりながらいつも通り、つまらない舞踏会を伏し目がちな瞳で辺りを見渡していたところ、婚約者であるルイ・スチュワード殿下が隣に女性を連れ、カツカツと靴音を鳴らしながら私の元へ近づいてきた。
私はこの時を待ち望んでいたのを表情には出さず、片側の口角が上がるの抑えながら目の前にいる人に視線を向けた時……殿下は高らかと声を上げ私と周囲の人へと告げた。
「クロエ・スティード公爵令嬢。俺はお前との婚約をこの場をもって破棄する!そして、俺はメリー・バレット嬢を妃とする!!」
指をさしながら私にそう告げたのはこのスチュワード王国の第二王子、ルイ・スチュワード殿下。
淡い銀髪の長いボブヘアに淡いエメラルドの瞳。顔立ちがよく、大層女性に人気なのだが……、今は公の場。しかも学園卒業パーティーという記念の場で私に言い放った後、隣にいるメリー・バレット子爵令嬢の肩を抱いていた。
彼女は明るい桃色ロングに桃色の瞳。顔立ちは悪くないが、学園では"ぶりっ子"として裏で有名な小娘だった。だがその小娘の本性を知らずにいる能がないのがこの国のバカ王子。私はこうなると承知していたため、覚悟を持っていたのだが……
急な婚約破棄にあたりは騒然とし、失望・哀愁・混乱・驚愕……、数々な視線が私に注目するが気にせず淑女らしく微笑みを浮かべ殿下の瞳をまっすぐ見つめながら答える。
「よろしいですわ。お受けいたしましょう」
その瞬間──あたりはザワつき、声や視線が飛び交う。そんな私の心はこの後の出来事に今か今かと待ち遠しいのだが、それを悟られぬよう扇子で口元を隠しながらルイ殿下を見つめた。
ルイ殿下とメリー嬢も予想外だったのだろう。目を見開きながらもまるで"こいつはバカだ"と顔に書いてある。でもバカなのは今この場で婚約破棄した君たちなのですよ?私は婚約破棄してもらって心から感謝しているのです。でもまぁこれだけは"約束"していただきませんと……
私は扇子をパチン─と閉じ、目の前にいる二人に笑顔で"約束"を告げる。
「私への婚約破棄もお二人のご婚約も承知致しましたわ。ですがこれだけはお約束ください。私のことは何一つもって干渉しないでくださいませ、例えどんなことがあっても……」
私は目元を細めながら微笑みを浮かべ、含みのある言い方をし二人に告げた。だがその"意図"が分かってないバカ王子は眉をしかめながら私に言う。
「っ、お前ごときに干渉する暇など俺にはない!!メリーは俺の妃になったのだからな」
「ルイ様ぁ!あたくしも嬉しいですぅ〜」
……ある意味この二人はお似合いなのかもしれない。と思いながら気色の悪いやり取りをしている二人から私は解放されるという実感を得た結果、最後だと思い実力を隠すのを辞め、今まで地味な作法よりも優雅にふわりとドレスの舞わせ裾を持ちながら腰を落として礼をする。
「では、私はこれにて失礼しますわ。お二人のご婚約を心より祝福をいたします……」
私が彼らに言ったその瞬間──
何故かあたりの視線やルイ殿下たちは驚きで固まっていたが私は気にせず靴音を鳴らしながら王宮の広間からスティード公爵家の馬車へと向かった。
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