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魔術回路修行と襲撃の始まり

魔術訓練場にて


俺と茜は昨日一波乱があった魔術訓練場にやってきた。


本当なら俺は授業に出なければいけない立場なのだが、ジョーカーいわくお前には普通の授業は時間の無駄らしい。

もともと授業とは、自身のできることやできないことを探し、長所をのばすためにあるものだが、既に炎の契約者というチートの力と『炎』という明確な属性が判明している結城には、その膨大な力を引き出すことだけに時間をささげた方がいいのことだ。


「というか、もうきれいな状態になっているんだな。」


俺は、魔術訓練場にきて、真っ先に感じた感想がそれだった。

昨日、俺と茜が激突した時の建物の破損具合は控えめに言ってもひどかったと思う。

きっとこれも魔法の力なんだろう。


「ん? もう修繕されてるのかって、驚いている顔ね?」


俺の表情を見て、見抜いたといわんばかりに茜は言った。


「これも全部会長の力よ。 すごいでしょ。」


ああ、確かに何でもかんでも直してたな、あの人。

へぇー、人だけじゃなくて、ぶったいも直せるのか。


「茜、魔法にはいろんな属性があるけどさ、会長のはなんて言う系統なんだ。」


「ああ、会長の魔法の属性は光属性よ。 直すとき光ってたでしょ。」


ああ、確かに、傷を治すとき光に包まれてたな。


「光属性は回復なのか、てっきり光の速さで動いたり、光で目くらましするのかと。」


「うーん、光属性についてはまだわかっていることは少ないらしいわ、まあ、だからこその魔術研究都市ユートピアなんだけどね。」


そうすると、茜は魔術訓練場の倉庫の中にある籠をごそごそとあさり始めた。


「ん? 茜なにしてるんだ。」


「これを探していたのよこれを。」


そういいながら、茜が取り出してきたのは小さい電球。


「豆電球?」


「そう魔導豆電球よ。」


茜は、それを手渡してくる、見た感じただの豆電球にしか見えないのだが…。


「それはね、ただの豆電球じゃないわ、魔力で光る豆電球なの。 試しに光らしてみてよ。」


「お、おう」


俺は、言われた通り豆電球にそっと魔力を流しこんだ。


「あれ、光らないけど。 これ壊れてんじゃないの。」


「違うわよ、あなた刀を袋カバーに入れているでしょう、あなた自身には魔力がないんだから、刀を出しなさい。」


ええ、俺こいつがいないと豆電球でさえ光らせることができないのか。

なんかショック…。


俺は、袋カバーから刀を出すとカレンに語り掛けた。

「なあ、カレンこの豆電球に魔力を流しこんでくれるか。」


「んあ、いいぞお安い御用だ。 ほいっと。」

するとその豆電球は発光し始めた。

次の瞬間、


バンッッ‼


豆電球は見事に木っ端みじんとなり、ガラスの部分は消滅していた。


「んん、ま、なんというか嫌な意味で期待を裏切らないわね……。」

想像した通りといった感じで困り顔をする茜。


「いったいこれは…」


「強すぎんのよあんたの契約者の魔力が。 この豆電球をやさーしく光らせるのが特訓よ。」


そうか、カレンの魔力が強すぎるから、その魔力量に耐え切れずに爆発したのか。


「でもなんでだ、こいつの強い力に俺が慣れるってならわかるが、わざわざ弱く調整する特訓なんて。」


「はぁ、あなたね、握手するときに力加減を間違えて腕をもぎ取られたらどうおもうかしら。」


「恐ろしく思います。」


ていうかそれどんな状況だよ。

怖すぎだろ。


「その通り、あなたは、封印される予定だった力を持っているということを忘れないでほしいわ。 この訓練は、あなたという存在が魔術研究都市ユートピアに信用されるための訓練でもあるのよ。」


「はいぃ、わかりました。 なあ、おいカレンもっと優しく頼む。」


俺はカレンに、もっと優しく魔力を流しこんでくれと頼んだ。

しかし…


「それはできぬ相談だ、川の水の量を調整しろと言われるようなもんだ。」


「じゃあ、どうするんだぞ、俺はお前の魔力をコントロールできるところをアピールしなくちゃいけないんだぞ。」


「蛇口だよ、結城。 お前は自分の魔力回路をほとんど使用したことがないから、魔力回路の制御ができないんだ。」


カレンはそのまま話を続ける。


「私の魔力が現実世界に干渉するとき、一度、お前の魔力回路に通しているのだ。 だから、私が魔力を流しこんだ後お前が調整すればいいのだ。」


「なるほど、そういうことだったのか。」


「私が、私自身の魔力回路が使えればいいのだが、私はいわばエネルギー体だ。 そもそも魔力回路を持っていないのだよ。 だから、この豆電球を光らせるのは、お前次第だというわけだ。」


なるほど、そういうことか種がわかればこっちのもんだ。


「よし、なら任せろ、はぁっ‼」

俺は再度、豆電球に力を込めた。

豆電球がまた光始める。

しかし…


パァン‼


普通に割れてしまった。


「まあ、自分の魔力回路の感覚をつかむまで特訓だな。」


そう簡単に事が進むはずないだろうとカレンにたしなめられた。


そのあと、俺は茜の付き添いの元で永遠と魔力コントロールの修行に励んだ。


「ああ、それとだな結城、私にもっと思念を送るのだ。」


訓練の途中、カレンが急に話しかけてきた。


「思念?」


「ああ、私が魔力を流しこむとき、どれだけの魔力を流しこんでほしいのか私にはわからないからだ。 戦闘中にいちいち会話をしている余裕もあるとはおもえんしな。今は状況がわかっているからいいが。」


そうか、カレンが魔力を流しこんで、俺がそれをコントロールして現実に干渉する。

俺ら二人の息を合わせないとできることもできないってわけか。


「わかった。 もっと思念を送り込んでみる。」

~~夕方ごろ~~


「はぁ、はぁ、ついにできたぞ、見ろ‼ この優しい光を。」


俺はついに魔導豆電球を優しく光らせることができた。


「わー、すごーい」


茜も若干棒読みな気はするが、すごいと思ってくれている。


「うむ、初めて自分の魔力回路の制御に挑戦したことから見れば、これは非常に大きな進歩だぞ。 やったな。」


俺とカレンが成長をかみしめていた。


「よぉー、やってかー結城、何やら嬉しそうだった。」


声をかけられた方を振り向くと、奇妙な白いシルクハットに白いスーツ、赤いネクタイの男が魔術訓練場の入り口に立っていた。


「ジョーカー、いたんなら行ってくれよ、それよりこれを見ろ、この豆電球の優しい光を‼」


俺は、手のひらの優しく光る魔導豆電球をジョーカーに見せつけた。


「いや、それで喜ばれても……まあ、順調なようで何よりだ。 おっと、それなら…」


ジョーカーは何かを思いついたかのようににやりと笑って、手に持っていたレジ袋の中に手を突っ込んだ。


「おらよ‼」


びゅんっ‼

ジョーカーはレジ袋から取り出したリンゴを思いっきり結城の顔面に投げつけた。


「うあわっ‼」

「な、なにしてるのよ‼」


パシィッ‼

しかし、そのリンゴが結城の顔面にあたることはなかった。

キャッチしたのだ。


「あ、あなたよくキャッチで来たわね。」

茜も、あの高速スピードで飛んできた物体をキャッチした結城に驚いていた。


しかし、一番驚いていたのは、

「うおおおお、俺スゲーぇぇぇぇ。 見たかよ、茜。」

一番驚いていたのは結城自身だった。

しかし、一番驚いていない人が一人。

「お、ナイスキャッチー、ちゃんと魔力コントロールできるようになっているみたいだなー。」

ジョーカーだ。


「っていうか、ジョーカー‼ 危ないだろ、今の奇跡的なキャッチがなければ危うく大けがだぞ‼」

俺は、ジョーカーに怒る。

それはそうだ、今のはたまたま反射的にキャッチできたからよかったものを、もしかしたら大怪我していたかもしれないからだ。


「まあ、まあ、落ち着けって、俺はお前がキャッチしてくれることをちゃんと信じてたぜ。」


どうやらジョーカーは何やら、俺がキャッチできる確信があったらしい。

するとジョーカーはレジ袋の中からどんどんリンゴを取り出して、こっちに全力で投げてきた。


「おいおい、ちょちょちょちょ。  ってあれ……」


結城は投げられたそのすべて全部キャッチできた。

「あ、あなた。」


茜は開いた口がふさがらなかった。


「結城君、君がリンゴをキャッチできたのはたまたまじゃない。 把握の力だ。」


ジョーカーは、レジ袋の中に残ったリンゴをむしゃむしゃ食いながらこちらへと歩いてきた。


「結城、世の中のすべての物には魔力が宿っている。」


ジョーカーは手の中でリンゴをもてあそびながら話をつづけた。


「魔法の才能があるかないかはその魔法を感知して操作できるかによってくる。」


ジョーカーは人差し指を立てる、そしたらそこにとんでもない存在感が集約し始めた。

茜もうっすら冷や汗を浮かべた。

何故だろう、そこでは何も起こってないはずなのに、目に見えない何かが集まっているのがわかる。


「よし、二人とも才能ありっと、まあ、わかってたことだけどね、結城はまがいなりにも炎の賢者と契約してるしね。」


ジョーカーは、指先に集めた魔力にちゃんと反応している二人を見て、はにかみながら魔力の集約をすっとひそめた。


「魔力回路は、現実と自信の魔力を結びつけるための器官だ。 その魔力回路のコントロールのトレーニングは、現実世界の様々な物体の魔力を感じ取るための訓練でもある。」


ジョーカーは話しながら、結城の手からリンゴを回収していく。


「もともと炎の賢者の凄まじい力を持っていた結城は、短時間のトレーニングで物体の感知能力が格段に向上しているってわけだ。」


「なるほど。」


「あれ、もしかしてこの短時間で私かなり差をつけられたの…」


「仕方ないさ、それほどに炎の賢者の力はすごいんだよ。 茜は、優秀な方だよ。」


ジョーカーは、急に実力の差を見せつけらえてがっかりしている茜を励ました。


「な、なんかすまないな。」


「うっさいばか。」


茜はフンッと首を背ける。

結城は励ましたつもりだったが、どうやら逆効果だったみたいだ。


「んで、ジョーカー、アメジストっていう俺を狙っている連中の手掛かりはつかめたのか。」


「いや~、それがさっぱり、だってなんも悪い事してこないんだもん。 こうも動きがないもんだと、ある尻尾つかめないよ。 向こうから、近づいてきてくれればいいんだけど…。」


何やら物騒なことを言い始めるジョーカー。



ドッカーン‼


その時だった、ジョーカーが言い終わるのと同時に、大きな爆発音がとどろき、それに反応するかのように魔術訓練場がぐらぐらと揺れた。


「な、なんだっ。」


「おっとぉ、まさかの相手方からの襲撃だぞ。」


ジョーカーは、なんだかワキワキしている。


「ま、まさか、そのアメジストってやつらが現れたってのか⁉ ってか嬉しそうにするな‼」


俺は、なかなか見つけられなかった敵が自分からやってきたことに嬉しそうにするジョーカーを咎めた。

っていうか、感じるよ、人間じゃない奴がこの学園の敷地内に入ってきているってことが。

これも訓練のたまものだな。


「結城、狙いはお前だ。 他の生徒に被害が出る前にお前が行け。」


「お、おう。」


確かに狙われている俺が言ったほうが変に周りに被害が出ないかもしれない。


そういわれ俺は茜とともに急いで魔術訓練場を飛び出すと一年生がいる学生塔から多くの生徒が逃げてきていた。


感想よろしくお願いします。

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