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人間スキー

俺と茜は街の中を疾走していた。


「んで、どこだって? その敵の本拠地ってやつは?」


俺は、茜に尋ねる。

全ての連絡や情報は、茜のスマートフォンによって行われているため、茜に聞くしかないのだ。


「ユートピアに入るための港なんだけど、うーん、この場所って、ユートピアのはぼ端の方なんだよね。 ユートピアは、出入りに厳しいから、もしかしたら相手は逃げようとしているのかも。」


魔術研究都市ユートピアはその高度な発展により技術の流失を何よりも避けようとしている都市だ。

なので、入るのも出るのも難しく、ちゃんとした理由があっても、なかなか入ることはできないし出ることもできない。

もし、敵がユートピアの外に逃げたらそれより厄介なことはないということだ。

俺と茜の間に、もう急がないと敵は尻尾を切って逃げようとしているという、共通認識が生まれ、お互いに顔を見合わせてうなづいた。


「急ぐわよ‼」


茜は、体から電気を発してそのスピードを加速させていく。


「っておい、待てよ‼」

俺の制止も届かず、茜はどんどん加速し、その後ろ姿は離れていった。


「大丈夫、先にいって様子見とくからー。」


そういって、気づいた時には茜の姿は、見えなくなった。


「くっそー、カレン、足の速さってどうにかなんねーのかよこれ‼」


俺は、懐で黙りこくっているカレンに対して不満をぶつけた。

っていうか結構重いんだけど刀って……


「ああ、できんわけでもないが、周りに多大な影響を及ぼすぞ……」


「ああ、なんとなく予想できたわ、やめよう。」


キッと爆風でぶっ飛ぶ的な感じだろ。

そんなことしたら、今、人ごみの隙間を走り抜けている俺は、テロリストになっちまう。


「魔力回路。」


「ああ、なんか言ったか?」


「魔力回路だ、力はただあるものではない、その使い方が重要なのだ。」


つまりなんだ、その魔力回路の使い方次第で茜に追いつけるってわけか。

俺は、俺は足が速くなるのをイメージする、すると、魔力回路にカレンから濃密な魔力が流れ込んでくるのがわかる。

少しでも意識をそらせばその濃密な魔力は行き先を失い大爆発を起こす。

現在俺は、人ごみの中を走っている、教室みたいに何でもかんでも吹き飛ばすわけにはいかない。

俺は、魔力回路に意識をそそぎ、下半身にじんとした熱いものを感じ始めた。


いけるっ‼


「ハァッ‼」


うおっと、

急に周りの世界が急速に流れ始める。

そして勇気が十て後には、その足跡をあらわすように炎の線ができていた。


「おいおい、まるでジェット機じゃねーか。 うぉっと、うぉっと⁉」


俺は、あまりにも周りにみえる世界が高速で流れすぎて、人をよけるのに精いっぱいだった。


「カレンさーん、ちょっと出力落としてくれませんか?」


俺は、あまりの速さにカレンにヘルプを求めた。

しかし、カレンの反応は鈍い。


「残念だが、これが最低出力だ。 そもそもこのスピードで障害物をよけるなんて曲芸師じゃあるまいし、空を飛べばいいだろう。」


「そもそも普通の人間には空を飛ぶっていう発想がねーよ‼」


ああ、きっと炎の賢者さんは空を飛んでたんだろうな。

このスピードで地上を移動なんて、ジェット機が住宅街を超低空飛行するようなもんだ。


すると、一人の見慣れた姿が見えてきた。

そして、俺はその後ろ姿にどんどんと近づいていき並走をする。


「よ、よう茜。」


「ひぇ、あんたよく追いついてきたわね。」


「うん、でさ、頼みがあるんだけど俺の体、引っ張ってくれない?」


「あんたさぁ、もしかして止まれないの?」

茜は恐る恐る聞いてくる。

茜もスピードアップしているから何とか会話が成り立っている。


「いやあ、止まれないことはないんだけど、最低スピードでこれだから、いきなり止まると大事故、挙句の果てには人間スクランブルエッグになるんだ。」


「そう、さよなら、ってちょっと体に縄括り付けないでよ。 いやだ、私もスクランブルエッグいやだ‼。」


「いいから、話を聞け、このままじゃ二人ともいつか何かに激突するのは確実だ。 運命共同体だぜ。」


運命共同体にしたのはお前だろ、という茜は心の声を飲み込んだ。


「いいか、この絶望的な状況には必勝法がある。」


結城は、真剣な表情で話す。

茜はその真剣な表情を見てはっとする。


もしかしてちゃんとした作戦があるのかも知れない、一回でいいから聞いてみよう。


「いいか、俺と茜をつないでいるこのロープがあるだろ、このロープでソリをするんだ。 俺はトナカイ、お前はサンタさん、オーケー?」


そう、作戦とは、俺が茜を引きずる形で茜がブレーキの役割をするんだ、そしてだんだんスピードをおとす。

誰が見ても完ぺきな作戦だ。


「ええ、最高にきもい作戦であることはわかったわ。」


「しかたないだろ、スクランブルエッグかサンタさんか選べ‼」


「う、うう、もおー‼」


茜が迷った挙句の果てに選んだのは……


「ねえー、みてママー、変な人がいるー。」


「こら、見ちゃいけません!」


俺と茜はサンタさんとトナカイになっていた。


「ねえ、生きる意味って何だと思う……」


「おう、どうした。 人生に迷いでも生じたか、なんかあったんか…」


「ああ、現在進行形でな。」


「というか、スピードのヘリが遅いぞ電気も使って速度を落としてくれ‼」


「こ、こいつ……ふんっっ‼」


「あぎゃあ、首が、首がしまってる。 優しくして、乱暴しちゃらめぇーーーー」


俺たちは、町中に地帯をさらしつつも港につくまでには、何とかストップすることができた。


「なあ、カレン、俺に今度空の飛び方教えてくれるか……。」


「ああ、さすがに今回は早めに行っておけばよかったと思っている。 だが、よかったじゃないか、今後のお前の課題ができて、日常をすごすという点において、私の膨大な魔力の調整は大事なエッセンスなようだ。 頑張れよ。」


確かに、今回はカレンの魔力の最低値というものを知れた機会というだけでも良かった。

ていうか、最低値凄すぎだろう、俺の魔力回路のコントロールにもまだまだ練習の余地がありって感じかな。


「はあ、はあ、でもあっという間についたわね。」


茜の言う通り俺たちは、普通の感覚で見れば早すぎるというぐらいで、現場である港に到着していた。


「おや、お前ら、早かったな。」


港に連なってるコンテナの中から鑑さんがひょこッと出てきた。


「な、なにしてるんすか。」


俺は、コンテナの間の隙間に隠れているような鑑先輩にけげんな顔をする。


「いいから、こっちにこい。」

鑑先輩は、こっちへ来いと手招きをした。

俺たちは、そのコンテナの隙間に入ると、さっそく情報交換を始めた。


よし、ここからが本番だ。


感想よろしくお願いします。

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